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中国
【石油・天然ガス】

中国 米国産LNGに対する追加関税が国内天然ガス供給に著しい影響を及ぼすことはない (18/08/04)
2018/8/4
中国【石油・天然ガス】

 8月3日、国務院税則委員会は米国からの一部輸入品に対する2回目の追加関税を公告した。25%の追加関税品目リストにはLNGも含まれている。

 米国が一方的に対中貿易戦争を発動して以来、中国が対米報復の手段としてLNGに追加関税を課すか否かはメディアや学界から注目されていた。その問題に対する中国の回答は、米国からのLNG輸入は中国の天然ガス供給の保障や天然ガス価格に対する発言権の強化に対して一定の意義を有するものの、その種の意義は誇張してはならないというものである。米国が中国原産の商品に対する課税範囲を拡大したり、税率を高めるなら、中国は米国の石油・天然ガスに対する追加関税の可能性を排除しない。
 
 中国が米国から輸入するLNGはもともと経済性が高いものではなく、もし中国が米国産LNGに25%の追加関税を課した場合、その経済性はさらに失われる。LNGは沸点である-161.5℃に圧縮冷却する必要があり、そのため、運輸と貯蔵過程において大量のエネルギーを消費しなければならない。米国から中国へのLNGの長距離輸送はもともと経済性が低く、追加関税に起因するコスト変動により、米国からの輸入LNGの経済性は大幅に下がる。

 中国は昨年冬から今年春にかけて大規模な天然ガス不足を経験したが、米国から輸入するLNGがさらに減少したとしても、今年の天然ガス不足がより一層深刻化することはない。近年米国からの石油・天然ガス輸入は比較的急速に増えているものの、依存度は決して高くはない。

 中国のLNG輸入先を見ると、カタールとオーストラリアが主であり、両国で全体の3分の2を占める。中国の原油とLNGの輸入総量の中で米国からの輸入が占める比率はわずか3.6%に過ぎない。中国が2017年に世界から輸入した原油とLNGの総額は1,758億ドル、うちLNG輸入総量は3,829万トン(520億m3)、輸入総額は約141億ドルであった。2017年に中国が米国から輸入した石油・天然ガスの総額は約62.54億ドル、うちLNGは153万トン(21億m3)、金額は約6.44億ドルであった。中国のLNG輸入量の中で米国産LNGが占める比率は約3.9%、中国の天然ガス輸入量に占める比率は約2.3%に止まる。

 米国産LNGに対して追加関税が適用されても、中国の輸入業者はLNG輸入先を他の諸国に差し替えることになる。世界の天然ガス供給が全体的に緩和している中で、代わりの輸入先を見つけることは容易である。オーストラリアやカタール、マレーシア等からのLNG輸入を拡大する他にも、中露天然ガスパイプライン東線の2019年の開通により、天然ガス輸入量は大幅に増えることになる。中露天然ガスパイプライン東線はガス供給量を年々増やして380億m3/年にする計画である。また、2017年末には中露間の重大エネルギー協力事業になるヤマルLNGの1本目の生産ラインが稼動した。北極圏に所在する同事業は現時点で世界最大のLNG事業である。2019年に全て竣工すると、同事業の合計3本の生産ラインから中国へ年間400万トンのLNGを安定的に供給することになる。同事業は新たな天然ガス供給源を開くだけでなく、中国のLNG輸入の新しい航路も開いた。

 同時に中国は天然ガス輸入に関連する課税政策の完備や国内天然ガス価格メカニズムの改革も進めており、このことは天然ガス輸入の拡大にとって有効である。2017年末、財政部と税関総署は《天然ガス輸入税優遇課税政策調整関連問題に関する通達》を示達し、2017年10月1日からLNG小売価格を26.64元/GJに調整し、パイプラインガスの小売価格を0.94元/m3に調整した。また、同通達は2011年1月1日〜2020年12月31日の期間中に、国が認可した天然ガス輸入事業の天然ガス(LNGも含む)輸入価格が天然ガス小売価格を上回る場合、当該事業が輸入する天然ガス価格と国定の天然ガス小売価格の逆さやの割合に応じて、関連事業の天然ガス(LNGも含む)輸入プロセスに課す増値税(付加価値税)を還付することも打ち出した。こうした政策は、天然ガス輸入の税負担を引き下げ、輸入価格と国内小売価格の逆さや問題を緩和する上で有効であり、延いては企業の天然ガス輸入拡大に対する積極性を高めることになる。

 2018年は中国の天然ガス消費の伸び率が2017年に比べやや鈍化する見通しである。また、中国国内の天然ガス生産量は近年、比較的高い伸びを維持しており、中国の天然ガス供給不足問題の緩和にとっては助けになる。国家発展改革委員会の情報によると、2017年の中国の天然ガス生産量は1,487億m3、前年比8.5%の増加になった。2023年には中国は米国、ロシア、カタールに次ぐ世界第4位の天然ガス生産国になるとの予測もある。

 総じて言えば、中露天然ガスパイプライン東線の開通によって、中国には西北の中国−中央アジア、西南の中緬、東北の中露の3つの天然ガス供給ルートが形成される。同時に東南沿海部へのLNG供給も大幅に増加することになる。これら4大ルートの形成により、中国の天然ガス輸入の多元化が促進され、一方、国内天然ガス生産量の増加も天然ガス供給の重要な支えになる。中国はトランプの対中関税制裁のエスカレーションに対する対抗措置として、米国から輸入するLNGに25%の追加関税を課すことを余儀なくされた。中国は、両国の利益をともに損なうことは本意ではないが、こうした措置を本当に実施したとしても、上述のように、中国国内の天然ガス供給に大きな変動をもたらすことはなく、まして中国のエネルギーセキュリティに影響を及ぼすことはあり得ない。

 中国社会科学院研究生院院長・国際エネルギー安全研究センター主任:黄暁勇
 中誠信国際信用評級有限責任公司研究院副院長:劉先雲

 (環球網 8月4日)