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【石油・天然ガス】

中国の天然ガス対外依存度が大幅上昇 CNPC経済技術研究院のレポート (19/01/18)
2019/1/18
中国【石油・天然ガス】

 2018年の環境保護政策により、中国の天然ガス市場の加速が続いた。中国石油天然ガス集団(CNPC)傘下の研究機関の推定によると、2018年の天然ガス消費量は2,766億m3であり、390億m3、16.6%増えた。一次エネルギー消費総量に占める天然ガスの比率は8%近くになった。

 CNPC経済技術研究院が1月16日に発表した『2018年国内外石油ガス産業発展報告』によると、天然ガス消費需要の大幅な増加を受けて、中国の天然ガス対外依存度は大幅に上昇した。2018年の中国の天然ガス輸入量はほぼ300億m3増加して1,254億m3に達し、天然ガス対外依存度は前の年に比べ6.2ポイント上昇して45.3%になったと見られる。

 2018年は全体を通して「オフシーズンに天然ガス需要が下がらない」ことが特徴として際立っていた。第2四半期の天然ガス消費量は618億m3で115億m3の増加になった。CNPC経済技術研究院の孫文宇研究員によると、その主要原因として、第1四半期の暖房シーズンにおける「圧非保民」(非民生用ガスを圧縮して民生用ガスを保障すること)後に、工業、発電、化学工業など非民生用ガス需要が増えたこと、そして前年末に完了していた「煤改気」(石炭焚き設備のガス化)設備が稼動したことが挙げられる。

 『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の予想によると、2019年も国内天然ガス需要は依然比較的速い増加を示すものの、伸び率はやや下がる。天然ガス輸入量は依然比較的高い伸びを維持する。

 環渤海の「煤改気」が天然ガス需要を大幅に押し上げ

 孫文宇研究員の説明によると、地区によって天然ガス消費の伸びは一様でなく、中でも環渤海地区の伸び率は23%近くになった。主に「2+26」都市の民生、暖房、工業、商業、公共サービスの「煤改気」によって天然ガス消費が促され、通年の消費量は590億m3に達していると見られる。例えば、河北省の天然ガス消費は30億m3以上増えた。また、長江デルタ地区の消費量は主に天然ガス発電が牽引したことで、480億m3に達したと見られる。全体的に見て、中部と東部は消費の伸びが相対的に高く、一方、西部、特に西北地区の伸びはやや鈍かった。

 天然ガスの用途別に見ると、対前年比の伸びが最も高かったのは発電用であった。『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の推定によると、2018年の発電用天然ガス消費量は615億m3(シェアは22%)、伸び率は23.4%に達した。工業用は911億m3(シェア33%)で伸び率20%、都市ガス用は990億m3(シェア35.8%)で伸び率16.2%になった。唯一消費量が下がったのは化学工業用で、資源量の制約とピーク調整の影響を受けて、5.1%減の250億m3に止まった。

 『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の予想によると、2019年の国内天然ガス消費量は3,000億m3を超え、前年比11.3%の増加になるだろう。政府は「藍天防衛戦」行動計画を引き続き進め、各地方は民生用石炭分散燃焼に対する管理を強化する。環境要因が依然として短期的に国内天然ガス需要を牽引する主要な原動力であり続ける。また、中小企業への支援政策や環境保護の厳正化等が総合的に作用して、建材、冶金、化学工業など主要天然ガス消費産業のグレードアップ推進によってもガス需要は増える。但し、伸び率は2018年に比べ5.2ポイント下がるだろう。

 持続的に上昇する天然ガス対外依存度

 天然ガス対外依存度は2018年により一層上昇し、前の年を6.2ポイント上回る45.3%に達した。『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の推定によると、2018年の天然ガス輸入は1,254億m3に達し、ほぼ300億m3の増加になった。パイプラインガス輸入量は520億m3に達し、21%近くの増加になった。LNG輸入の伸び率はさらに高く、通年のLNG輸入量は5,400万トン(約734億m3)、前年比41.1%の増加になる。

 一方、『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の推定によると、2018年の国内天然ガス生産量は1,573億m3、増加量は100億m3足らず、伸び率は7%足らずであり、消費の伸びをはるかに下回った。

 『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の予想では、石油企業が国の要請に応えて探査開発投資と作業量を増やしているため、2019年の国内天然ガス生産量は1,700億m3を超え、前年比8.6%増になる見込みである。一方、新たなLNGターミナルの稼動や中露ガスパイプライン東線が近く稼動することから、2019年の天然ガス輸入量は1,430億m3、前年比14%増加し、天然ガス対外依存度の上昇が続くだろう。

 輸入コストの面では、需要上昇の要因以外にも、通年の油価上昇の影響も及んだ。2018年1〜11月のLNG国内CIF価格の上昇幅は19%を超え、2.19元/m3になった。パイプラインガスのCIF価格の上昇幅は10%近くになり、約1.49元/m3。

 国際市場を見ると、2018年のアジア太平洋市場のLNG価格は著しく上昇した。東北アジア地区のLNG平均輸入価格は主に需要が牽引する形で、前年比23.3%上昇し、9.41ドル/MMBTUになった。2018年の東北アジアLNGスポット平均価格は9.87ドル/MMBTU、前年比43.3%の上昇になった。特に10月には輸入国が冬季の在庫補充を前倒しで行ったため、月間平均価格が11.6ドル/MMBTUにまで上昇したこともあった。第4四半期になると、温暖な天候、在庫の充足やターミナルの受入能力の制約のため、スポットLNG需要は軟化し、平均価格は市場の予想を下回る11ドル/MMBTUで推移した。

 米中貿易摩擦の影響

 天然ガス需要の伸びが最も急速な国の1つである中国は米国産天然ガスの主要な潜在的買主になる。米国は中国へ石油や天然ガスなどエネルギーの輸出を増やして貿易赤字を転換するよう図っているが、貿易摩擦が比較的大きな不確実性をもたらしている。2018年以降、米中貿易摩擦のエスカレートが続き、米国は中国からの輸入品に追加関税を課し、中国も対抗措置を取っている。対抗措置には2018年9月24日から米国から輸入するLNGに10%の追加関税を課したことも含まれる。

 北米は世界で天然ガス生産の伸びが最も高い地域であり、2018年の天然ガス生産量は約1.1兆m3、伸び率は9.1%に上った。うち米国の生産量は9,000億m3超、伸び率は11%になる。

 米国のLNG輸出規模は持続的に拡大している。2018年の米国のLNG輸出量は2,105万トンに達し、前年比63.2%もの大幅な増加になった。

 『2018年国内外石油ガス産業発展報告』の集計によると、中国が2018年に米国から輸入したLNGは226万トン、中国のLNG輸入に占めるシェアはわずか4%、米国のLNG輸出量に占めるシェアは12%であった。中国は米国産LNGの輸出先第3位である。米国のLNG輸出能力は今後もっと拡大することになり、2020年には6,620万トン/年に達すると予想される。米中貿易摩擦のため、米国は中国以外の市場を模索することになるが、欧州市場はガス源が多く競争が激化しており、また、再生可能エネルギーの発展も天然ガス需要の増加にチャレンジをもたらす。アジアの他の諸国も増加量が限られており、米国が短期間で中国以外の市場を拡大することは難しく、事業の資金調達もチャレンジに直面する。

 中国と米国の天然ガス産業関係者は米中政府間の90日交渉の結果を待つしかない。もっとも2019年に増加する天然ガスの最大の供給源は米国とロシアであり、中国と米露との間で相互補完と同時に駆け引きも続く。CNPC経済技術研究院の見方によると、貿易摩擦のため中国の企業はカタール、オーストラリア、ロシア及びアフリカのLNG資源に目を向けざるを得ない。米中企業は長期契約を結ぶチャンスを逸することになりかねず、そうなれば両国の共同利益を損なうことになろう。『2018年国内外石油ガス産業発展報告』が引用した第三者機関のデータによると、米国では今後複数のLNG輸出事業が稼動し、輸出能力は160%増加する見込みである。一方、ロシアはNord Stream 2、Turkish Stream及び中露東線の3本のガスパイプラインを稼動させ、天然ガス輸出能力は合計1,560億m3/年に達し、パイプラインガス輸出能力は60%上昇する。さらに将来的にはヤマルLNG事業の増産によって輸出はもっと増加する。米露の輸出量の増加がグローバル天然ガス貿易構造に対して重大な影響を及ぼすと予想される。

 (中国能源網 1月18日)