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【論説】EUとトルクメニスタンの提携はロシアの独占的地位への挑戦 (08/04/22)
2008/4/23
その他地域のエネルギー

 EUとトルクメニスタンは、トルクメニスタンが2009年からEUに年間100億m3の天然ガスを輸出することで合意した。契約量は大きなものとは言えないが、中央アジアの天然ガスがロシアを迂回して欧州に輸出される先駆けになる見込みであり、カスピ海のエネルギー構造に劇的な変化をもたらす可能性もある。EUはすでにロシアに対して、中央アジアのエネルギーをめぐる争奪戦を仕掛けているのである。

 4月9日から10日にかけて、クシュネル仏外相やフェレーロ・ヴァルトナー欧州委員(対外関係・欧州隣国政策担当)等EU高官はトルクメニスタンの首都アシガバートでEUとトルクメニスタンとの提携で双方の合意が成ったことを明らかにしたが、ロシアを刺激することを避けたのか、出来る限り低調な姿勢を示し、成果を誇示することはなかった。しかし、ヴァルトナー欧州委員は、トルクメニスタンが2009年から年間100億m3の天然ガスをEUに輸出することを明らかにし、さらにEUがトルクメニスタンにおけるガス田開発の公開入札に参加する可能性があることにも言及した。EUはこれにより、トルクメニスタンの天然ガスパイプラインの建設やエネルギー探査分野への投資を増加させることになる。クシュネル仏外相も、トルクメニスタン大統領ベルディムハメドフがEUへの天然ガス輸出を決定したことを認め、双方の作業チームが速やかに協定案の起草作業を開始すると述べた。

 今回の契約による天然ガス輸出量は大きなものとは言えないが、欧州は、この契約が中央アジアエネルギー争奪戦における大きな成果と見ている。EUが現在必要とする天然ガスが年間3,000億m3に上ることから見れば、トルクメニスタンとの契約量は極めて小さなものでしかないが、ロシアのエネルギーに対する依存度を引き下げる上で極めて大きな一歩を踏み出すことが出来たと、ヴァルトナー欧州委員は指摘した。

 EUは、ウズベキスタン並びにカザフスタンとの間でも同様の契約を結ぶことで、ロシアのエネルギーに対する依存度をさらに引き下げようとしている。EUはロシアを迂回して、エネルギー分野で中央アジアとの直接の提携を展開するよう決心しているのである。

 しかしながら、EUとトルクメニスタンの今回の合意には小さからぬ問題がある。

 第1に、トルクメニスタンのガス供給能力の問題である。トルクメニスタンは今年、800億m3の天然ガス採掘を計画しているが、ロシアとの既存の契約は600億m3規模になる。しかも、トルクメニスタンが今年に入ってから採掘した天然ガスはわずか150億m3に過ぎない。その上、トルクメニスタンは2009年から中国に300億m3の天然ガスを輸出することになっている。一体トルクメニスタンは欧州に輸出する天然ガスをどこから持って来ようとしているのだろうか。

 第2に、トルクメニスタンと欧州を結ぶパイプラインは未だ存在していない。100億m3とはいえ、ロシアを迂回して欧州に輸送する方法があるのだろうか。露ガスプロムのクプリヤノフ報道官は14日、ロシアは通過輸送サービスを提供しないと表明した。中央アジアの天然ガス輸送能力は、ロシア側の2010年までの天然ガス売買契約によって限定されているのである。

 このような深刻な問題があるにも関わらず、EUはロシアを迂回して中央アジアと直接提携することにこだわっている。専門家の指摘によると、2030年には、EUは天然ガス需要の85%を輸入によって賄うことが必要になる。しかし、現在EUが輸入する天然ガスの大部分はロシアを経由しなければならない。しかし、ロシアはEUにとって油断ならないパートナーであり、ロシアを避けるため、EUは中央アジアのエネルギーに照準を当て、ロシアとの争奪戦を決意している。特にフランスは今年7月からEU議長国になり、クシュネル外相は、エネルギー問題こそが任期中の最も重要な課題になると表明している。EUは、最近の声明の中でも、カスピ海「エネルギー回廊」計画の可能性を強調するようになっている。

 今回のEUとトルクメニスタンの提携は序幕に過ぎないが、EUと中央アジアの今後のエネルギー分野における幅広い協力の礎になるものである。EUが今後、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン等との直接の協力を拡大していくことは間違いない。また、今回の提携を契機として、カスピ海横断天然ガスパイプラインやナブコパイプラインなどロシアを迂回する石油・天然ガスパイプライン計画を実行に移す公算が大きい。ヴァルトナー欧州委員はすでに、中央アジアから欧州への天然ガス輸送問題を解決するために、トルクメニスタンからアゼルバイジャンまでのカスピ海海底パイプラインや欧州からアゼルバイジャンへの陸上天然ガスパイプライン等を建設することも考慮に入れていると表明している。こうした動きによって、必然的に、中央アジアの天然ガス輸送を独占していたロシアの地位が打破され、中央アジアのエネルギー輸送構造は一変するだろう。

 一方、ロシアは今回の提携に対して沈黙を守っている。ロシアは欧米が事態を引っくり返すことが出来るとは思っていないものの、新たな動きには疑心を抱いているようである。1年前にロシア、トルクメニスタン、カザフスタンが合意した「カスピ海沿海天然ガスパイプライン」が遅々として着工出来ていないことは決定的な問題であるとも言える。中央アジア諸国は依然としてエネルギー輸出の多元化を追求している。これに対し、欧米が手を拱いているはずもない。機先を制すべく、様々な手段に打って出るだろう。

 (文匯報 4月22日)