7月9日、中国・カザフスタン天然ガスパイプラインがカザフスタン国内で正式に着工され、「中国−中央アジア天然ガスパイプライン」の建設が全面的にスタートした。これより先、6月下旬にはトルクメニスタンブロック、カザフスタンブロックでも天然ガスパイプラインが着工された。 このパイプラインはトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンの3国を横断し、中国の華中、華南まで総延長1万キロになる。トルクメニスタンは中国に年間300億m3の天然ガスを供給する。2009年には単線が完成し、2010年には複線化を実現する。 この中国−中央アジア天然ガスパイプラインに対してロシアは危機感を抱いている。 ロシアの天然ガス会社ガスプロムにとっては、価格をめぐって難航している中国石油天然ガス集団(CNPC)との間の天然ガス輸出交渉がひっくり返る危険もある。中国はロシアとの交渉を進める一方でエネルギー輸入の多元化を進めており、中国−中央アジアパイプラインによってロシアが中国の天然ガス市場から締め出されるかもしれないとの予想をロシアの専門家は示している。 また、ロシアが中国の市場から締め出されないまでも、中国−中央アジア天然ガスパイプラインはガスプロムと利害が衝突するものである。ロシアと中央アジアは中国へのエネルギー供給で協力を展開することも出来るが、中国という大市場をめぐってロシアと中央アジアが熾烈な競争が展開されれば、それも不可能になる。 7月4日、ガスプロムのミレル社長はトルクメニスタンからの天然ガス調達量を拡大するとともに市場価格で購入すると表明したが、このこともまたロシアの焦りを示している。 また、天然ガスのみならず石油分野における中国と中央アジアの協力に対してもロシアは懸念を示している。中国がロシア以外のCIS諸国と協力を進めているため、ロシアは中国の石油製品市場をめぐる戦略的機会を失うことになりかねない。なぜなら、2008年は中国にとって最も石油が必要な年になるからである。 もっとも、表面的にはロシアと中央アジアが中国市場の争奪戦を展開しているように見えるが、実際にはそこまでのレベルにはまだ至っていない。なぜなら、ロシアはこれまで生産、輸出のプロセスにおいて中央アジア諸国の石油・天然ガス資源をコントロールしており、中央アジア諸国がエネルギーを輸出するためのインフラは基本的にロシアへ通じているからである。中央アジアは中国との協力を契機にロシアのコントロールを打破しようとしているものの、ロシアから完全に離脱しようとは考えていない。カザフスタン以外の中央アジア諸国の対露貿易はそれぞれの貿易総額の70%以上を占めているのが現実である。中央アジア諸国がロシアに対する依存を変えることは難しい。 一方、ロシアは中央アジアから中国への石油・天然ガス輸出に苛立ちを示しているが、深層レベルでの懸念は中央アジアに対するコントロールの喪失である。これは中国とロシアのエネルギー協力に対する見方の違いによるものである。中国がロシアや中央アジアエネルギー協力を進めるのはエネルギー輸入ルートの多元化を進めるためであり、エネルギー協力を経済問題と見なしているが、ロシアはエネルギー協力を経済問題に止まらず、地政学上の安全保障問題と見なしている。そのため、中国、ロシア、中央アジアのゲームは複雑なものになる。 (中国油気管道網 7月16日)
7月9日、中国・カザフスタン天然ガスパイプラインがカザフスタン国内で正式に着工され、「中国−中央アジア天然ガスパイプライン」の建設が全面的にスタートした。これより先、6月下旬にはトルクメニスタンブロック、カザフスタンブロックでも天然ガスパイプラインが着工された。
このパイプラインはトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンの3国を横断し、中国の華中、華南まで総延長1万キロになる。トルクメニスタンは中国に年間300億m3の天然ガスを供給する。2009年には単線が完成し、2010年には複線化を実現する。
この中国−中央アジア天然ガスパイプラインに対してロシアは危機感を抱いている。
ロシアの天然ガス会社ガスプロムにとっては、価格をめぐって難航している中国石油天然ガス集団(CNPC)との間の天然ガス輸出交渉がひっくり返る危険もある。中国はロシアとの交渉を進める一方でエネルギー輸入の多元化を進めており、中国−中央アジアパイプラインによってロシアが中国の天然ガス市場から締め出されるかもしれないとの予想をロシアの専門家は示している。
また、ロシアが中国の市場から締め出されないまでも、中国−中央アジア天然ガスパイプラインはガスプロムと利害が衝突するものである。ロシアと中央アジアは中国へのエネルギー供給で協力を展開することも出来るが、中国という大市場をめぐってロシアと中央アジアが熾烈な競争が展開されれば、それも不可能になる。
7月4日、ガスプロムのミレル社長はトルクメニスタンからの天然ガス調達量を拡大するとともに市場価格で購入すると表明したが、このこともまたロシアの焦りを示している。
また、天然ガスのみならず石油分野における中国と中央アジアの協力に対してもロシアは懸念を示している。中国がロシア以外のCIS諸国と協力を進めているため、ロシアは中国の石油製品市場をめぐる戦略的機会を失うことになりかねない。なぜなら、2008年は中国にとって最も石油が必要な年になるからである。
もっとも、表面的にはロシアと中央アジアが中国市場の争奪戦を展開しているように見えるが、実際にはそこまでのレベルにはまだ至っていない。なぜなら、ロシアはこれまで生産、輸出のプロセスにおいて中央アジア諸国の石油・天然ガス資源をコントロールしており、中央アジア諸国がエネルギーを輸出するためのインフラは基本的にロシアへ通じているからである。中央アジアは中国との協力を契機にロシアのコントロールを打破しようとしているものの、ロシアから完全に離脱しようとは考えていない。カザフスタン以外の中央アジア諸国の対露貿易はそれぞれの貿易総額の70%以上を占めているのが現実である。中央アジア諸国がロシアに対する依存を変えることは難しい。
一方、ロシアは中央アジアから中国への石油・天然ガス輸出に苛立ちを示しているが、深層レベルでの懸念は中央アジアに対するコントロールの喪失である。これは中国とロシアのエネルギー協力に対する見方の違いによるものである。中国がロシアや中央アジアエネルギー協力を進めるのはエネルギー輸入ルートの多元化を進めるためであり、エネルギー協力を経済問題と見なしているが、ロシアはエネルギー協力を経済問題に止まらず、地政学上の安全保障問題と見なしている。そのため、中国、ロシア、中央アジアのゲームは複雑なものになる。
(中国油気管道網 7月16日)