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【新エネルギー】

発展改革委員会、トウモロコシの高度加工を事実上禁止 今後は石炭液化が石油代替エネルギーの重点に (07/09/22)
2007/11/22
中国【新エネルギー】

9月20日、国家発展改革委員会は「トウモロコシ高度加工産業の健全な発展に関する指導意見」と題する緊急文書を発し、トウモロコシを主要原料とする新規エタノール燃料プロジェクトを今後建設せず、トウモロコシの高度加工プロジェクトも原則として認可しないことにした。

 同「意見」は、トウモロコシ生産地区に対し、食糧安全保障の全体的見地から、トウモロコシの生産業、飼料の加工業、高度加工業の発展を総合的に配置計画して、トウモロコシの高度加工の産業規模を盲目的に拡張しないよう求めた。

なお、この前日、国務院常務会議もまた、アブラナからバイオディーゼルへの転換を厳格に規制することを打ち出していた。

 「意見」によると、トウモロコシの高度加工を拡大することは、食糧の需給関係や食糧価格に変動をもたらす危険を伴う。少し前にはOECDも各国政府に対しバイオ燃料への補助金交付を停止するよう警告を発していた。なぜなら、この種の代替エネルギーを支援することによって、食品価格の大幅な高騰や自然環境の破壊を招くからである。

 エタノール燃料とバイオディーゼルを積極的に展開することは、これまで中国の石油代替エネルギー戦略の重要な一部であった。国際原油価格が1バレル80ドルを突破し最高値を更新しているという微妙な時期に、トウモロコシやアブラナの加工プロジェクトを禁止するということは、代替エネルギー戦略の方向性に新たな変化が生じたことを意味している。

 清華大学の倪維闘教授によると、トウモロコシ由来のエタノール燃料生産が禁止されたことは、石炭液化が中国の次の石油代替エネルギーの重点になったことを意味している。

 国家発展改革委員会がトウモロコシ由来のエタノール燃料プロジェクトの認可を停止したのは、今回が初めてではない。昨年12月、発展改革委員会と財政部は「バイオ系エタノール燃料プロジェクト建設管理の強化に関する通達」を発し、各地方政府に対して、トウモロコシによるエタノール精製プロジェクトの認可と申請受理を一時停止し、建設中及び計画中のプロジェクトについても全面的に整理するよう求めていた。

 トウモロコシ加工業に対する全面的整理

 昨年の認可一時停止に続く今回の停止措置は、適用範囲を拡大して、トウモロコシ高度加工産業全体の調整を図ったものである。「意見」は、トウモロコシ高度加工の参入基準を大幅に引き上げ、あらゆる新規プロジェクトと拡張プロジェクトの認可権を国務院の投資主管部門に移管するとした。また、トウモロコシ高度加工を外国企業投資産業制限類リストに入れた。トウモロコシ高度加工企業は一定の経済力を有していることが必須となり、資源の利用、クリーン・プロダクション、環境保護等の面でも国内先進レベルに到達している必要がある。建設中のプロジェクトや計画中のプロジェクトも全面的に整理を進め、申請済みであっても未着工のプロジェクトについては、建設を中止することになる。

 但し、すべてのトウモロコシ高度加工が制限されるわけではない。トウモロコシ加工は、食品加工、飼料加工、工業加工の3種類に区分され、食品加工業と飼料加工業は発展推奨項目に入れられている。トウモロコシ及びその加工品の輸出入についても適度に調整を施して、国内の需給バランスを確保することになる。

 石炭液化が代替エネルギー戦略の重点に

 2003年、政府は石油代替エネルギーの検討を開始し、トウモロコシ、アブラナなどバイオ燃料の実用化が政策に盛り込まれた。バイオエタノール燃料については、第10次5ヵ年計画期における試験的実施を経て、バイオエタノール試験生産プロジェクトの建設が認可され、年間102万トンの生産能力が形成された。バイオエタノール産業は優遇政策が適用されたこともあって、急速に発展した。

 しかし、この2年、世界的にエネルギー供給が逼迫、トウモロコシデンプン、エタノール及びその副産物に代表されるトウモロコシ加工業が急速に発展し、一部生産地区では加工能力があまりにも急速に拡大したため、原料逼迫傾向が生じた。

 国内のエタノール燃料事業によるトウモロコシ消費量は総消費量のごく一部でしかないが、国家発展改革委員会は、すぐにでもトウモロコシ高度加工を規制しなければ、国内のトウモロコシ需給のバランスを崩し、さらには食肉、牛乳等の生活必需品の供給にも影響するのみならず、国際食糧価格にも大幅な変動をもたらすことになると懸念した。

 こうしたことを考慮すると、将来の中国の石油代替エネルギーは石炭液化が重点になると、倪維闘教授は指摘する。中国には豊かな石炭資源があることと、関連技術が成熟していることがその理由である。

 国家発展改革委員会は目下石炭化学工業計画を立案中である。国家エネルギー弁公室の徐錠明副主任は9月15日、代替エネルギーとしての石炭液化は今後の石炭産業と炭鉱が発展する上で新たな方向性になると表明した。

 国は今後、石油代替エネルギーとして、ソーラー、風力、水力発電、地熱等の再生可能エネルギーとともに、石炭系原料では石炭液化、石炭由来メタノール、DME、ハイドロカーボンや石炭由来の複合生産技術の発展に重点を置いて、石油に対する依存を引き下げ、汚染物の排出を減らすことになろう。

 倪維闘教授によると、2020年には石炭液化によって1億トンの石油を生産し、石油総消費量5億トンのうち20%を占めることだろう。

 (21世紀経済報道 9月22日)