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【論説】天然ガス版OPECの樹立に動くロシア (08/12/25)
2008/12/26
その他地域のエネルギー

 天然ガス輸出国フォーラム第7回閣僚級会議が23日、モスクワで開かれた。同会議では規約の制定と執行委員会並びに事務局の設置が決議され、事務局本部をカタールの首都ドーハに置くことが決められた。

 今回の措置は、天然ガス輸出国フォーラムをOPEC(石油輸出国機構)の天然ガス版に転換する動きであると見られているが、世界金融危機の影響で国際石油価格が大幅に下落する中、こうした動きを進める主要な仕掛け人はロシアである。

 天然ガス輸出国フォーラムは2001年に発足した。メンバーにはロシア、イラン、カタール、リビア、ナイジェリア、ベネズエラ等の主要天然ガス輸出国が名を連ね、これら諸国の天然ガス埋蔵量は世界の70%を占めている。今回のモスクワでの会議では、赤道ギニアがメンバーになり、カザフスタンがオブザーバーになったため、天然ガス輸出国フォーラムのメンバーは5ヵ国、オブザーバーは2ヵ国になった。

 天然ガス輸出国フォーラムが変容する過程において、主導的な役割を発揮しているのは世界最大の天然ガス生産国ロシアである。今回の会議に出席したプーチン首相は、天然ガス輸出国フォーラムを常設機関とし、独自の規約と本部を設けるよう提案した。プーチンは、既存の天然ガス資源が徐々に枯渇し、しかも開発の見通しの大きいガス田は消費のセンターから遠く離れているため、天然ガスの探査、採掘、輸送コストが上昇することは明らかであり、コストの上昇に伴って価格も上昇するのは必然であると述べ、天然ガス価格と石油価格が連動しているため、世界金融危機は石油価格の下落もたらしただけでなく天然ガス市場にも深刻な影響を与えたと指摘した上で、天然ガスが安価な時代は間もなく終わりを告げるとした。

 近年、ロシアはOPECのような天然ガス輸出国の組織を設けることに関心を注いできた。2007年1月、イラン最高指導者アリー・ハーメネイーが初めてOPECの天然ガス版の構想を打ち出し、プーチンも直ちに賛同した。今年10月にロシア、イラン、カタールがテヘランで会議を開いたことは、大きな注目を集めた。

 ロシアのこうした動きには2つの背景があると考えられる。第1に、エネルギーはロシア経済の重要な柱の1つであるが、当面の世界金融危機と石油価格の大幅続落の中、ロシアは今後の天然ガス価格の下落を防ぐことで、国内経済の安定を確保することを欲している。第2に、ロシアはEUに対する最大の天然ガス供給国であり、ロシアの天然ガスの70%は欧州に輸出され、欧州で消費される天然ガスも約40%がロシア産である。つまり、ロシアは欧州のエネルギーの命脈を相当程度掌握しているのであり、ロシアが天然ガス輸出国を結集しエネルギーを盾に米欧に対抗する可能性も排除できない。

 しかし、天然ガスは石油とは異なり、パイプラインによる輸送と即時消費を要し、備蓄によって価格を操作することは難しい。そのため、天然ガス取引の多くは、売り手と買い手が固定価格を決定して長期契約を結ぶ形になる。天然ガス版OPECのメンバー国は、天然ガスの開発や液化の分野で幅広い協力を行うことは可能であるが、石油のOPECのような「価格カルテル」になる可能性は決して大きくはない。天然ガス版OPECが今後どうなるかは未だ即断できない。今後の動きが注目される。

 (国際在線 12月26日)