マクロ経済政策の効果により中国経済はすでに回復に向かっているとの見方があるが、この点につき、国家発展改革委員会経済研究所経済情勢研究室の樊彩躍副室長は次のような見方を示した。 当面の問題で突出しているのは需要不足と生産能力過剰だ。外需の好転が難しく、公共投資から民間投資へのバトンタッチは未だ不可能。こうした時期に、デフレ防止からインフレ防止へと性急に政策を変更すれば、経済回復は頭打ちになる、 当面の情勢では、マクロ調整政策を緩めてはならず、政策の連続性と安定性を維持すべきだ。外需の短期的な好転が難しく民間投資の始動が極めて困難な状況では、第4次中央投資対策を配置すべきである。 有効需要の不足と生産能力過剰のギャップは短期的に解決することが難しい。投資と工業には回復傾向が出ているが、両者のバランスが取れていない。1〜5月の都市固定資産投資は前年同期比32.9%増になったが、工業付加価値額の伸び率はわずか6.3%に止まった。特に国有経済部門ではその落差が非常に大きい。1〜5月の国有企業及び国有持ち株企業の投資の伸び率は40.6%に上ったが、工業付加価値額の伸びはわずか0.6%で、株式制企業の8.7%を大きく下回った。つまり、国有企業投資の高い伸び率は公共事業投資と技術改造投資によるものであり、一方、工業生産の低迷は生産能力過剰に起因する稼働率不足によるものと分析される。 このような投資の急拡大と工業生産の回復の遅れは、有効需要の不足と生産能力過剰のギャップが依然突出していることを示している。また、こうした傾向は発電量、輸入や価格の動向からも明らかだ。5月期の発電量は前年同期比3.5%のマイナスになり、4月期に比べ顕著な好転は見られない。1〜5月の輸入は前年同期比28%のマイナスになり、減少率は輸出を6.2ポイント上回っている。特に5月は25.2%のマイナスで、減少率は4月に比べ2.9ポイント大きくなった。 輸入の減少率が大きくなっている理由は、1つは輸出低減の影響であり、もう1つは内需不足の影響だ。消費者物価指数(CPI)と工業品出荷価格指数(PPI)は4ヶ月連続でともにマイナスになり、5月のCPIは前年同期比1.4%、前月比0.3%のマイナスになった。また、PPIの下落も続いており、5月の下落率は4月よりも0.6ポイント高い7.2%になった。価格水準の下落が続いているのは、市場の供給が需要を上回っており、そのギャップが極めて突出しているということの現われであり、デフレ圧力は拡大している。中国経済が回復軌道に乗ろうとしても、有効需要の不足と生産能力過剰が主要な制約要因になっている。現在、生産能力過剰は世界でも普遍的であり、中国が目下直面しているのは依然としてデフレ圧力であって、インフレ圧力ではない。 固定資産投資の力強い成長により、今後一定の間、マクロ経済には回復的な成長が続くと見込まれる。しかし、回復傾向に楽観し過ぎてはならない。中国経済が底入れして新たな上昇軌道に乗るには、世界経済の好転と、経済成長のネックになる深層レベルのキャップの緩和を待つしかない。 (経済参考報 6月22日)
マクロ経済政策の効果により中国経済はすでに回復に向かっているとの見方があるが、この点につき、国家発展改革委員会経済研究所経済情勢研究室の樊彩躍副室長は次のような見方を示した。
当面の問題で突出しているのは需要不足と生産能力過剰だ。外需の好転が難しく、公共投資から民間投資へのバトンタッチは未だ不可能。こうした時期に、デフレ防止からインフレ防止へと性急に政策を変更すれば、経済回復は頭打ちになる、
当面の情勢では、マクロ調整政策を緩めてはならず、政策の連続性と安定性を維持すべきだ。外需の短期的な好転が難しく民間投資の始動が極めて困難な状況では、第4次中央投資対策を配置すべきである。
有効需要の不足と生産能力過剰のギャップは短期的に解決することが難しい。投資と工業には回復傾向が出ているが、両者のバランスが取れていない。1〜5月の都市固定資産投資は前年同期比32.9%増になったが、工業付加価値額の伸び率はわずか6.3%に止まった。特に国有経済部門ではその落差が非常に大きい。1〜5月の国有企業及び国有持ち株企業の投資の伸び率は40.6%に上ったが、工業付加価値額の伸びはわずか0.6%で、株式制企業の8.7%を大きく下回った。つまり、国有企業投資の高い伸び率は公共事業投資と技術改造投資によるものであり、一方、工業生産の低迷は生産能力過剰に起因する稼働率不足によるものと分析される。
このような投資の急拡大と工業生産の回復の遅れは、有効需要の不足と生産能力過剰のギャップが依然突出していることを示している。また、こうした傾向は発電量、輸入や価格の動向からも明らかだ。5月期の発電量は前年同期比3.5%のマイナスになり、4月期に比べ顕著な好転は見られない。1〜5月の輸入は前年同期比28%のマイナスになり、減少率は輸出を6.2ポイント上回っている。特に5月は25.2%のマイナスで、減少率は4月に比べ2.9ポイント大きくなった。
輸入の減少率が大きくなっている理由は、1つは輸出低減の影響であり、もう1つは内需不足の影響だ。消費者物価指数(CPI)と工業品出荷価格指数(PPI)は4ヶ月連続でともにマイナスになり、5月のCPIは前年同期比1.4%、前月比0.3%のマイナスになった。また、PPIの下落も続いており、5月の下落率は4月よりも0.6ポイント高い7.2%になった。価格水準の下落が続いているのは、市場の供給が需要を上回っており、そのギャップが極めて突出しているということの現われであり、デフレ圧力は拡大している。中国経済が回復軌道に乗ろうとしても、有効需要の不足と生産能力過剰が主要な制約要因になっている。現在、生産能力過剰は世界でも普遍的であり、中国が目下直面しているのは依然としてデフレ圧力であって、インフレ圧力ではない。
固定資産投資の力強い成長により、今後一定の間、マクロ経済には回復的な成長が続くと見込まれる。しかし、回復傾向に楽観し過ぎてはならない。中国経済が底入れして新たな上昇軌道に乗るには、世界経済の好転と、経済成長のネックになる深層レベルのキャップの緩和を待つしかない。
(経済参考報 6月22日)