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【論説】中国の原子力発電は「大躍進」の中で根本的に安全性を顧慮せず (11/06/09)
2011/6/9
中国【原子力】

中国科学院院士が政府系専門家を批判 中国の原子力発電は「大躍進」の中で根本的に安全性を顧慮せず

 先日、発展改革委員会エネルギー研究所元所長の周大地は、福島原発事故後に西側諸国で生じた反原発の風潮に対する評論を発表し、「中国が単純に西側の原子力発電放棄に追随するのは馬鹿馬鹿しい」と指摘した。

 しかし、エネルギーの専門家が原発事故の破壊力を深刻に理解していないのなら、それこそが本当に「馬鹿馬鹿しい」。

 周大地は炭鉱事故を引き合いに出して、中国の最も多い年の鉱夫死亡者数1万人余りとチェルノブイリ事故の死者4,000人を比較してみせたが、その意図は自明であろう。

 周大地はさらに、「中国の原子力発電は短期的に年間1,200万kW増え、中期的には年間2,000万kW増える。2020年の原子力発電設備容量は7,000〜8,000万kWに達し、2030年には2億kWに、2050年には4億kW以上に達する見込みだ。その時には中国の一次エネルギーの15%以上を供給していることだろう」と述べた。中国の現在の原子力発電規模は900万kW余りに過ぎないので、周大地の言うペースで発展すれば、「大躍進」になるに違いない。

 しかし、我々の準備は整っているのだろうか。私には深刻な準備不足に思われる。特に安全面の準備が不足している。

 周大地が参加したエネルギー中長期発展規画の研究において、原子力発電の発展に言及した際に、安全問題にはほとんど触れられなかったことに私は注目している。

 理論的には高速増殖炉によってウラン資源の利用率を1%足らずから60%に高めることが出来るが、高速増殖炉にも問題がある。第1に、現有の技術の安全性は未だ十分でなく、資金投入を拡大すべきだが、そうなると必然的にコストが高くなる。第2に、高速増殖炉の持続的運転は、核燃料の事後処理や再利用と切り離すことが出来ない。これも巨額の投資が必要であり、発電コストを大幅に(20〜30%に止まらない)増やすことになる。第3に、中国が目下研究を進めている高速増殖炉の増殖率は1.2に過ぎないが、一方、国際間で合理的と認められている増殖率は1.6である。このことは、中国の開発している高速増殖炉の発電コストが大幅にアップすることを意味している。

 私の知る限り、中国の高速増殖炉の研究者は、中国が「大躍進」を実現する高速中性子炉原子力発電所の真実の発電コストについて未だ試算していない。

 福島事故の後、中国の原子力専門家は、中国の原子力発電所は福島よりも安全であると次々に表明している。しかし、日本人が安全を重視していないとでも言うのか。中国の原子力発電所はすべて安全型だと言えるのか。第三世代原子力発電所の研究者は第二世代よりも安全だと言うが、第二世代を研究する専門家は決してそうだとは認めない。

 日本人の耐震建設のノウハウは極めて豊かであるが、震度9は想定していない。中国の原子力発電所の耐震基準で設定されているのはどの震度なのか。事故発生の確率はいったいどのくらいなのか。中国の原子力発電の専門家は、こうした「数字」については誤魔化している。私は答えを知りたい。中国のどの原子力発電所が福島クラスの地震に耐えられるのか。将来、震度9の地震が発生することはあり得ないとは言い難いのである。一般大衆は知らないだろうが、その世界の人なら皆知っているはすだ。耐震レベルを8か9クラスにしようとするなら、コストは天文学的なものになり、そうなれば、原子力発電の市場競争力は大きく下がる。福島原発事故を徹底的に考察して、中国の原子力発電開発計画にも然るべき調整を施すべきである。大幅な調整も排除してはならない。

● 筆者は中国科学院院士・理論物理研究所研究員 何祚●(「床」の「木」を「休」に)

 (新快報 6月9日)