数年にわたる論争を経て、2011年12月26日、国家発展改革委員会は広東省と広西自治区において天然ガス価格形成の仕組みについて改革実験を展開することにした。実験開始後のトレンドと影響はどうなっているのだろうか。ここでは以下のようにいくつかの見方を提示する。 第1に、今回の改革実験は、異なるエネルギーの間の競争の見地から天然ガス価格形成の仕組みを改革する突破口を開くものである。天然ガス価格形成の仕組みの改革は大きく2つの面から着手することが出来る。すなわち、天然ガス産業チェーンの競争的構造への変化と、天然ガスとその他の代替可能エネルギーの合理的な価格比較関係の形成を促進することである。中国の改革は国情に応じて後者を選択することになった。 中国の天然ガス産業チェーンは2004年から高速発展段階に進んだ。パイプライン建設資金を調達し、産業チェーンリスクを解決するため、政府は独占構造によって短期間で基幹パイプライン網を建設するという方針を取り、それに成功した。天然ガス産業チェーンの高速発展は今もなお10年以上にわたって持続しており、こうした独占構造を短期間で変える可能性は低い。 近年、天然ガスに代替するエネルギー価格の大幅な上昇が続いているが、天然ガス価格は政府の厳重な統制を受けており、代替エネルギーに比べると余りにも低い。そのことは中国の天然ガス市場の需要が爆発的に拡大した主要な動因になっている。同時にそれと並行して、特に2003年以降、中国の経済発展水準と都市化水準が新たな段階に邁進したことが、巨大な都市ガス需要を形成する主要な動因になった。 急増する需要に対応するため、中国は2006年からLNGの輸入を開始し、2009年末にはパイプライン天然ガスの輸入を開始した。天然ガスの輸入比率は急速に上昇し、2011年の国内消費総量の中で輸入資源が占める比率は24%を突破した。国産ガスに比べると輸入ガスは余りにも価格が高すぎるため、合理的な価格の仕組みを確立することが必要である。長期的には国外のガスを輸入して販売するには、国際範囲で天然ガス資源を獲得し、もって中国の長期的なガス使用の安全を確保しなければならない。 異なるエネルギー間の競争の見地から天然ガス価格形成の仕組みを改革する突破口を開くことが現実の選択肢になったが、それはこうした深層の原因によるものである。改革実験案の価格形成方法は一種の流れになり、中国の高ガス価格時代の到来を告げるものになるだろう。 第2に、改革実験案の改善や普及過程において地方が重要な役割を発揮することになる。中国における天然ガスの大規模な開発と利用は近年の出来事であり、他の代替エネルギーから天然ガスに転換する過程において、代替されるエネルギー価格が天然ガス価格の上限を制約することになった。天然ガス産業チェーン下流の利用における巨額の投資という点から見ると、天然ガス価格は代替されるエネルギー価格と比べて著しい優越性を備えることが必要であり、そうであってこそ天然ガスの市場需要がようやく形成されるのである。中国国内、とりわけ西部地区では、その他の代替エネルギー価格と比べて顕著な天然ガス末端価格の優越性を保持することが依然として長期的な戦略選択肢である。そのことは地域の協調的な発展に役立ち、天然ガス産業チェーンの急速な発展に持続的なエンジンを与えるものになる。地方はパイプライン支線網の建設と運営に対する支配権を強化することで価格決定に対する能力を高める。西部地区が産地における資源の低価格の利用の訴えを強めることは地方経済の発展水準の影響によるものである。これら地区はガス価格の急上昇に対する主要な抵抗力になり、そのため、改革実験案の推進に当たってこれら地区が割引係数の面で大きな譲歩を行うには長い時間がかかり、改革実験を西部地区で推進することは当面難しいと予想される。一方、天然ガス価格形成の改革を推進する上で極めて可能性が高いのは東部の経済発達地区であるが、しかし、依然として重点は制度整備であり、価格水準の引き上げを漸進的に進める必要がある。それと同時に、地区のエネルギー消費構造や将来の天然ガス価格決定権の争奪を考慮して、代替エネルギー製品の選択、課金基準などについてもさらなる改善が必要である。その他にも、資源税率の引き上げ等を改革実験案の推進と相互に協調させることは、西部地区における改革実験案推進の難題を部分的に解決する上で役立つ。 第3に、政府が天然ガス出荷価格に対する統制から手を引こうとしても依然として時間がかかる。すでに全国をカバーする天然ガスパイプラインネットワークは基本的に形成されており、ガス供給方式は、単一ガス源、単一パイプラインから複数のガス源、複数のルート、ネットワーク化供給へと転換しており、供給方式は複雑化し、価格に対する監督と管理もますます難しくなっている。政府が天然ガス出荷価格に対する統制を簡略化し、転換し、徐々に手を引くことは改革が追求すべき目標であり、改革実験案もその面で大きな一歩を踏み出した。政府は価格決定方法、価格管理形式や具体的な価格水準確定の面ではパイプラインの監督管理を適正に進め、天然ガスパイプラインの守護者となることを図っているが、一方で石油企業が天然ガス価格に対するバンドリングプライシングを実現し、天然ガス産業チェーンに対する独占を固定化していることは長期的な潜在障害になっている。政府は《天然ガスインフラ建設並びに運営管理条例》の策定に努めているが、現在の産業チェーンの発展段階と既存の構造の下では、各方面の妥協を経た結果、条例は社会の期待を大きく下回るものになり、市場競争を推進する上での意義は小さくなる。このような産業チェーンの独占構造の下では、生産者はパイプライン独占を利用して価格決定面で利益を図るため、政府が天然ガス出荷価格を自由化して市場競争を形成しようとしても困難であり、長い時間がかかる。 最後に、三大石油公司が中心になって天然ガス市場争奪の戦国時代に進むと、産業チェーン全体の構造改革が課題になる。第2西気東輸パイプラインの逐次稼動により、PetroChinaは全国7大地区のすべてにおいて、主要サプライヤーとして基幹パイプラインの絶大な部分を支配することになった。現在PetroChinaは第2西気東輸パイプラインの価格形成方式や価格水準等を背景に広東や広西等の東南沿海市場への進出を順調に果たし、しかもパイプライン網の優越性を利用して、国産の低価格ガスと輸入ガスを総合的に、バランスを取って配置することで資源的優越性を補強し、価格競争を通して市場を争奪し、競争相手を排除することが出来る。市場には量の競争から、量と価格の競争への転換が生じ、市場の短期的な特徴が高まる。価格形成方式は安定に向かう。このことは、テイク・オア・ペイの契約条項の拘束の面では有利であり、需給双方に対する長期契約の拘束力は高まるだろう。石油公司は資源とパイプラインの優越性を利用して、ますます能動的に産業チェーン下流の販売プロセスに参入し、資本市場など様々な方式によって、既存の寡占構造を揺るがし、新たな争奪戦を展開して、産業チェーン全体の支配を謀るとともに、より複雑な株式構造によって天然ガス市場の末端販売を制御する範囲と能力を達成する。そのため、政府は監督管理の重心を産業チェーンの競争性の確保に転向することになる。政府は個別の利益集団にパイプラインを支配させるわけには行かず、原則的にはパイプライン建設の投資主体の多元化を実現するとともに、政府規制を通して市場主体がパイプライン独占市場を利用することを回避すべきである。政府はパイプラインの計画、建設の許認可において、産業チェーンの競争性に意を用いこれを強化しなければならない。産業チェーン全体の見地から、産業チェーンの各プロセスにおいて新たな参入のルールを導入する。 筆者:中国石油大学中国石油ガス産業発展研究センター副主任・劉毅軍 (中国経済網 2月13日)
数年にわたる論争を経て、2011年12月26日、国家発展改革委員会は広東省と広西自治区において天然ガス価格形成の仕組みについて改革実験を展開することにした。実験開始後のトレンドと影響はどうなっているのだろうか。ここでは以下のようにいくつかの見方を提示する。
第1に、今回の改革実験は、異なるエネルギーの間の競争の見地から天然ガス価格形成の仕組みを改革する突破口を開くものである。天然ガス価格形成の仕組みの改革は大きく2つの面から着手することが出来る。すなわち、天然ガス産業チェーンの競争的構造への変化と、天然ガスとその他の代替可能エネルギーの合理的な価格比較関係の形成を促進することである。中国の改革は国情に応じて後者を選択することになった。
中国の天然ガス産業チェーンは2004年から高速発展段階に進んだ。パイプライン建設資金を調達し、産業チェーンリスクを解決するため、政府は独占構造によって短期間で基幹パイプライン網を建設するという方針を取り、それに成功した。天然ガス産業チェーンの高速発展は今もなお10年以上にわたって持続しており、こうした独占構造を短期間で変える可能性は低い。
近年、天然ガスに代替するエネルギー価格の大幅な上昇が続いているが、天然ガス価格は政府の厳重な統制を受けており、代替エネルギーに比べると余りにも低い。そのことは中国の天然ガス市場の需要が爆発的に拡大した主要な動因になっている。同時にそれと並行して、特に2003年以降、中国の経済発展水準と都市化水準が新たな段階に邁進したことが、巨大な都市ガス需要を形成する主要な動因になった。
急増する需要に対応するため、中国は2006年からLNGの輸入を開始し、2009年末にはパイプライン天然ガスの輸入を開始した。天然ガスの輸入比率は急速に上昇し、2011年の国内消費総量の中で輸入資源が占める比率は24%を突破した。国産ガスに比べると輸入ガスは余りにも価格が高すぎるため、合理的な価格の仕組みを確立することが必要である。長期的には国外のガスを輸入して販売するには、国際範囲で天然ガス資源を獲得し、もって中国の長期的なガス使用の安全を確保しなければならない。
異なるエネルギー間の競争の見地から天然ガス価格形成の仕組みを改革する突破口を開くことが現実の選択肢になったが、それはこうした深層の原因によるものである。改革実験案の価格形成方法は一種の流れになり、中国の高ガス価格時代の到来を告げるものになるだろう。
第2に、改革実験案の改善や普及過程において地方が重要な役割を発揮することになる。中国における天然ガスの大規模な開発と利用は近年の出来事であり、他の代替エネルギーから天然ガスに転換する過程において、代替されるエネルギー価格が天然ガス価格の上限を制約することになった。天然ガス産業チェーン下流の利用における巨額の投資という点から見ると、天然ガス価格は代替されるエネルギー価格と比べて著しい優越性を備えることが必要であり、そうであってこそ天然ガスの市場需要がようやく形成されるのである。中国国内、とりわけ西部地区では、その他の代替エネルギー価格と比べて顕著な天然ガス末端価格の優越性を保持することが依然として長期的な戦略選択肢である。そのことは地域の協調的な発展に役立ち、天然ガス産業チェーンの急速な発展に持続的なエンジンを与えるものになる。地方はパイプライン支線網の建設と運営に対する支配権を強化することで価格決定に対する能力を高める。西部地区が産地における資源の低価格の利用の訴えを強めることは地方経済の発展水準の影響によるものである。これら地区はガス価格の急上昇に対する主要な抵抗力になり、そのため、改革実験案の推進に当たってこれら地区が割引係数の面で大きな譲歩を行うには長い時間がかかり、改革実験を西部地区で推進することは当面難しいと予想される。一方、天然ガス価格形成の改革を推進する上で極めて可能性が高いのは東部の経済発達地区であるが、しかし、依然として重点は制度整備であり、価格水準の引き上げを漸進的に進める必要がある。それと同時に、地区のエネルギー消費構造や将来の天然ガス価格決定権の争奪を考慮して、代替エネルギー製品の選択、課金基準などについてもさらなる改善が必要である。その他にも、資源税率の引き上げ等を改革実験案の推進と相互に協調させることは、西部地区における改革実験案推進の難題を部分的に解決する上で役立つ。
第3に、政府が天然ガス出荷価格に対する統制から手を引こうとしても依然として時間がかかる。すでに全国をカバーする天然ガスパイプラインネットワークは基本的に形成されており、ガス供給方式は、単一ガス源、単一パイプラインから複数のガス源、複数のルート、ネットワーク化供給へと転換しており、供給方式は複雑化し、価格に対する監督と管理もますます難しくなっている。政府が天然ガス出荷価格に対する統制を簡略化し、転換し、徐々に手を引くことは改革が追求すべき目標であり、改革実験案もその面で大きな一歩を踏み出した。政府は価格決定方法、価格管理形式や具体的な価格水準確定の面ではパイプラインの監督管理を適正に進め、天然ガスパイプラインの守護者となることを図っているが、一方で石油企業が天然ガス価格に対するバンドリングプライシングを実現し、天然ガス産業チェーンに対する独占を固定化していることは長期的な潜在障害になっている。政府は《天然ガスインフラ建設並びに運営管理条例》の策定に努めているが、現在の産業チェーンの発展段階と既存の構造の下では、各方面の妥協を経た結果、条例は社会の期待を大きく下回るものになり、市場競争を推進する上での意義は小さくなる。このような産業チェーンの独占構造の下では、生産者はパイプライン独占を利用して価格決定面で利益を図るため、政府が天然ガス出荷価格を自由化して市場競争を形成しようとしても困難であり、長い時間がかかる。
最後に、三大石油公司が中心になって天然ガス市場争奪の戦国時代に進むと、産業チェーン全体の構造改革が課題になる。第2西気東輸パイプラインの逐次稼動により、PetroChinaは全国7大地区のすべてにおいて、主要サプライヤーとして基幹パイプラインの絶大な部分を支配することになった。現在PetroChinaは第2西気東輸パイプラインの価格形成方式や価格水準等を背景に広東や広西等の東南沿海市場への進出を順調に果たし、しかもパイプライン網の優越性を利用して、国産の低価格ガスと輸入ガスを総合的に、バランスを取って配置することで資源的優越性を補強し、価格競争を通して市場を争奪し、競争相手を排除することが出来る。市場には量の競争から、量と価格の競争への転換が生じ、市場の短期的な特徴が高まる。価格形成方式は安定に向かう。このことは、テイク・オア・ペイの契約条項の拘束の面では有利であり、需給双方に対する長期契約の拘束力は高まるだろう。石油公司は資源とパイプラインの優越性を利用して、ますます能動的に産業チェーン下流の販売プロセスに参入し、資本市場など様々な方式によって、既存の寡占構造を揺るがし、新たな争奪戦を展開して、産業チェーン全体の支配を謀るとともに、より複雑な株式構造によって天然ガス市場の末端販売を制御する範囲と能力を達成する。そのため、政府は監督管理の重心を産業チェーンの競争性の確保に転向することになる。政府は個別の利益集団にパイプラインを支配させるわけには行かず、原則的にはパイプライン建設の投資主体の多元化を実現するとともに、政府規制を通して市場主体がパイプライン独占市場を利用することを回避すべきである。政府はパイプラインの計画、建設の許認可において、産業チェーンの競争性に意を用いこれを強化しなければならない。産業チェーン全体の見地から、産業チェーンの各プロセスにおいて新たな参入のルールを導入する。
筆者:中国石油大学中国石油ガス産業発展研究センター副主任・劉毅軍
(中国経済網 2月13日)