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中国
【新エネルギー】

風力・太陽エネルギー開発に対する黒龍江省の制限は民と利益を争うもの (12/06/19)
2012/6/27
中国【新エネルギー】

 黒龍江省は全国に先駆けて《黒龍江省気候資源探査並びに保護条例》を公布し、企業の風力及び太陽エネルギー資源の探査に当たっては気象部門の承認を要すると規定した。しかも、探査した資源は国の所有に帰属すると規定している。黒龍江省の条例は、企業の風力と太陽エネルギーの開発と探査に対して規範化を進める初めての地方法規になる。

 周知のごとく、風力と太陽エネルギーはクリーン・エネルギーの典型例であり、大自然から人類への賜物である。風力や太陽エネルギーなどのクリーン・エネルギーはすでに世界各国が共同で努力する方向性になっており、中国も例外ではない。最近、累進電気料金制の実施は「形を変えた値上げ」ではないかと世論からの疑問が絶えない。しかし、業界の専門家は、累進制による電気料金の調整に対して住民には受入能力があり、意に介するには及ばないと公然と吹聴している。「値上げすべき場合は値上げしなければならない」という主張は、石炭価格高騰によって発電企業の赤字が過大になっていることを理由にしている。確かに火力発電企業が苦境にあるのは事実であろうが、しかし、中間商の電力グリッド企業がわが世の春を謳歌しているのも否定できない奇怪な現状である。にもかかわらず、電力グリッドの暴利を削減できず、民生用電気料金を値上げするしかないとはどういうことだろうか。このことはさて置くとしても、もし我々が廉価でクリーンなエネルギーへの投資をもっと支持すれば、電気料金は値上げせずにすむのだろうか。風力と太陽エネルギーの利用率が極めて低いことについては、各種の技術上の原因は排除しないものの、最も重要なのは政府部門の決心と態度である。

 黒龍江省の今回の条例は典型例になる。この条例はまず企業が任意に風力と太陽エネルギーの探査を行う場合、政府の承認を得なければならないと規定している。これは政府の許可権を新設するに等しい。《行政許可法》は、「法律、行政法規が未だ制定されていない場合、地方法規によって行政許可を設定することを得る」としているが、但し、「行政許可を設定するに当たっては、経済と社会の発展の規律を遵守し、公民、法人もしくはその他組織の積極性と能動性を発揮させ、公共の利益と社会秩序を守り、経済、社会並びに生態環境の協調的な発展を促進する上で有利なものでなければならない」とも規定している。風力と太陽エネルギーが大量に浪費される現状では、今回のような行政許可を設定することが合理的なのかどうかについてはよくよく検討しなければならない。さらに重要なことは、政府の承認を経て探査した風力と太陽エネルギー資源も国の所有、より直接的に言えば地方政府の所有に帰属するということである。これでは、資金を出して探査を行った企業に対して「雷峰」(のように自己を犠牲にして人民に奉仕する存在)になれと言っているのも同然であり、市場経済の基本規律に完全に悖っていることは明らかである。つまり、ある意味でこの条例は、民間資本が自主的に風力と太陽エネルギー資源を探査することを禁止するのに等しい。かくして風力と太陽エネルギー資源は無期限に浪費される一方で、民間資本は任意に探査を行うことが出来ず、さらに探査の成果を享受する権利もないことになる。

 中国の体制においては、「風力と太陽エネルギーは全て国に帰属する」いう規定も荒唐無稽には当たらない。地方政府が望みさえすれば、空気すらも政府のものになる。しかい、クリーン・エネルギーの開発と利用にとっては、このことが明確な障害になることは間違いない。地方政府が性急に風力と太陽エネルギーを自分のものだと宣言するのは、これを一種の潜在的な財源にして、金を掠め取ろうとするのが理由である。これでは、政府が「企業と利を争う」だけでなく、「民と利を争う」に他ならない。クリーン・エネルギーは、多重に利益を掠め取られた結果、最終的には高いものにつく恐れがある。翻って外国を見ると、クリーン・エネルギーが急速に発展したのは政府部門の強力なサポートと切り離すことが出来ない。例えばドイツはクリーン・エネルギー発電事業者に補助金を与え、その結果、IPP事業者が台頭、発展するとともに、家庭等の風力発電機やソーラー発電機も大きな流れになりつつある。実際、企業にとってクリーン・エネルギー開発のリスクは極めて大きい。しかし、クリーン・エネルギーの探査と利用を図ろうとする企業に対して、中国の地方政府がまず思いつくのは支援ではなく、形を変えた制止である。地方政府の近視眼においては、クリーン・エネルギーも財源の一種に過ぎないことは間違いない。

 (深セン商報 6月19日)