先日、中国国家能源局、米国連邦エネルギー規制委員会、米国貿易開発局の主催による米中スマートグリッド対話が深圳で開催された。今回の会議は第4回米中エネルギー戦略経済対話において調印された《中国国家能源局と米国連邦エネルギー規制委員会の了解覚書》を実施に移すことが目的である。席上、国家能源局は中国のスマートグリッドの定義、特徴、現段階における開発の重点などの問題について、初めて明確に答えを出した。 一様ではない定義 「我々はスマートグリッドについて次のように理解している。すなわち、新エネルギー、新素材、新設備及び先進的な情報技術、制御技術、蓄エネルギー技術を統合することによって、電力の発電・送電・使用・貯蔵の過程において数値化管理、スマート化意思決定、相互化取引を実現し、資源配置を最適化し、ユーザーの多様な電力需要を賄い、電力供給の安全性、信頼性並びに経済性を確保し、環境保護の条件を満たし、電力の市場化発展の必要に適応することだ」と、国家能源局電力司総合処の趙一農処長は会議において明確に表明した。 趙一農処長の指摘によると、スマートグリッドは次の5つの特徴を具備しなければならない。 開放:電源及びユーザーの系統連系にスマート化管理を提供し、大型電源の系統連系に適応するだけでなく、分散型電源、特に再生可能エネルギーの系統連系にも適応し、プラグアンドプレイ、バリアフリーアクセス、オーダリーエクジットを実現する。 安全:人為的または自然的に発生する妨害に対してより適切に識別と応答を行い、自然災害や外力による破壊、サーバー攻撃など様々な状況の下で人身、設備、電力グリッドの安全を確保する。 高効率:先進的なリアルタイムモニタリング技術、オンライン制御技術及び需要サイドに対する誘導によって、電力グリッド運行の最適化、電力施設検査保守のスマート化管理並びにピークシフトを実現し、電力グリッドの送電能力を増強し、設備の耐用年数を延ばし、エネルギー利用効率を高める。 クリーン:風力、太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの大規模応用をサポートして、より一層豊かなクリーン・エネルギーをユーザーに提供する。 自己回復:電力グリッドのリアルタイムモニタリング、オンライン分析予測及び自動制御によって速やかに故障の予兆を発見し、高速診断、隔離、故障の除去を行い、自己回復を進め、広範囲の停電を回避し、電力グリッド運行の信頼性を高める。 これより先、米国電力研究所が提唱したスマートグリッドの定義は、電力グリッドの信頼性を強調しており、ロスを低減し投資を減らすことを要求している。また、米国スマートグリッド産業連盟の打ち出した定義は、多様なエネルギーの系統連系を強調している。中国に関しては、国家電網公司が、特高圧送電と合わせてストロングスマートグリッドを提唱し、発電、指令、送変電、配電並びにユーザーの各プロセスをカバーするとしている。 「国家能源局の提唱する定義は、これまで提唱されていたいくつかの種類の定義とは異なる。短期的に見た場合、中国のスマートグリッドは2つの問題の解決に力を入れることになる。第1に、新エネルギー及び分散型エネルギーの系統連系の要請に適応することだ。風力発電、ソーラー発電、マイクログリッド、マイクロハウス発電、電気自動車、新型蓄エネルギー設備などが包摂される。第2に、情報技術を電力グリッドに応用して、電力グリッド産業のアップグレードを推進することだ」と、国家電力規画研究センターの呉雲常務副主任は、《中国能源報》の記者に対して指摘する。 標準制定作業がスタート 現段階における電力グリッドの実際の状況と結びつけるなら、中国のスマートグリッドの開発は、主に配電と電力使用のプロセスに集中させるべきだ」と、趙一農処長は言う。「主として次の6つの側面に焦点を当てて技術開発を進める。再生可能エネルギーの集中型並びに分散型系統連系、スマート配電、スマート電力使用、電気自動車の充電施設、マイクログリッドシステム、電力系統の蓄エネルギーだ」。 これより先、中国のスマートグリッド建設には2種類のプランがあった。一つは、長距離・大容量送電を主な特徴とするストロングスマートグリッドであり、もう一つは、クリーン・高効率・分散型を主な特徴とするスマートグリッドである。しかしながら、今回の国家能源局の態度表明によって、開発路線について送電を強調するのか、それとも配電を強調するのかをめぐる業界の争論には終止符が打たれるに違いない。 本紙記者の得た情報では、スマートグリッド開発路線の明確化に伴って、スマートグリッド標準の制定作業もすでにスタートしている。「標準制定作業は今のところ未だ初級段階に止まっている。しかし、国家電網公司はこれまで少なからぬ技術標準体系を策定して公にしているが、その中には採用すべきものもある」と、標準制定に参加している専門家は本紙記者に告げた。 スマートグリッドが全面的に推進されると、マーケットに対して大きな影響を及ぼすことになると見られる。ある専門家によると、中国がスマートグリッド改修を実施することによって、変圧器、スマート端末、ネットワーク管理技術などの産業に巨大な波及効果を生み、国民経済を毎年少なくとも1〜2ポイント押し上げることになる。また、科陸電子、GE、中国普天といった企業の関係者は本紙記者の取材に対して、いずれもそのマーケットポテンシャルを有望と見ている。 スマートグリッド推進の明確なタイムスケジュールは未定 今回、政府側は様々な問題について明確に答えを出した。しかし、スマートグリッド開発の具体的なタイムスケジュールは今のところ未知数である。 「『知易行難(知るは易しく行い難し)』と言われるように、当面のスマートグリッド開発には依然として少なからぬチャレンジが存在している」と、呉雲氏は本紙記者に表明した。「技術水準について言うなら、中国の蓄エネルギー技術や複雑情報処理技術は依然として向上が待たれる」。 呉雲氏の説明によると、蓄エネルギーの経済性が劣るのは突き詰めれば技術の成熟度が十分でないことに帰結する。例えば、揚水式蓄エネルギー発電所のキロワット当たりの建設費は4,000〜5,000元に上り、開発には地理的な条件による制約もある。蓄エネルギー用のリチウム電池の容量コストは1ワットアワー当たり5元前後である。日間調節性の揚水式蓄エネルギー発電所に蓄電ステーションを機能配置する場合、建設費は3万元を超えることになる。さらに使用寿命が比較的短いという問題や汚染問題もある。複雑情報処理をめぐっても、電力系統オンラインシミュレーション技術を運用しようとする場合、一定のチャレンジがつきまとう。 匿名希望のその道の大家も本紙記者に対し、技術問題のみならず、スマートグリッドの当面の開発にとって最大の障害は依然として体制問題であると指摘する。「例えば、スマートグリッドにおいて電力の相互取引とデマンドサイドレスポンスのプロセスはいずれも電力価格に関係するが、中国の電力価格は目下発展改革委員会価格司が握っており、簡単に変えることは出来ない」。 国家能源局がスマートグリッド開発構想をめぐって「開発メカニズムを合理化し、多くのサイドが共同で推進する」ことを重点的に提唱しているのも、正にそのことが背景にある。 本紙記者の得た情報では、国家能源局は第12次5ヵ年規画期に第1期スマートグリッド実験を展開することになる。具体的には、スマートグリッド実験プロジェクト情報データベースの確立、21のスマートグリッド実験地点の確定、スマートグリッド技術の適用範囲と標準体系の研究、有効な経済補償モデル並びに投資回収メカニズムの探究の、4つの内容が含まれる。 「当面は石橋を叩きながら渡り、一歩ずつ歩んでいく。電力体制改革であれ、市場化であれ、スマートグリッドの開発はそれ自体が漸進的なプロセスになる。政府はすでに態度を表明しており、各種政策も打ち出されるだろう。我々はこの点については積極的、楽観的な態度を持すべきだ」と、前出の大家は述べた。 (中国能源報 7月4日)
先日、中国国家能源局、米国連邦エネルギー規制委員会、米国貿易開発局の主催による米中スマートグリッド対話が深圳で開催された。今回の会議は第4回米中エネルギー戦略経済対話において調印された《中国国家能源局と米国連邦エネルギー規制委員会の了解覚書》を実施に移すことが目的である。席上、国家能源局は中国のスマートグリッドの定義、特徴、現段階における開発の重点などの問題について、初めて明確に答えを出した。
一様ではない定義
「我々はスマートグリッドについて次のように理解している。すなわち、新エネルギー、新素材、新設備及び先進的な情報技術、制御技術、蓄エネルギー技術を統合することによって、電力の発電・送電・使用・貯蔵の過程において数値化管理、スマート化意思決定、相互化取引を実現し、資源配置を最適化し、ユーザーの多様な電力需要を賄い、電力供給の安全性、信頼性並びに経済性を確保し、環境保護の条件を満たし、電力の市場化発展の必要に適応することだ」と、国家能源局電力司総合処の趙一農処長は会議において明確に表明した。
趙一農処長の指摘によると、スマートグリッドは次の5つの特徴を具備しなければならない。
開放:電源及びユーザーの系統連系にスマート化管理を提供し、大型電源の系統連系に適応するだけでなく、分散型電源、特に再生可能エネルギーの系統連系にも適応し、プラグアンドプレイ、バリアフリーアクセス、オーダリーエクジットを実現する。
安全:人為的または自然的に発生する妨害に対してより適切に識別と応答を行い、自然災害や外力による破壊、サーバー攻撃など様々な状況の下で人身、設備、電力グリッドの安全を確保する。
高効率:先進的なリアルタイムモニタリング技術、オンライン制御技術及び需要サイドに対する誘導によって、電力グリッド運行の最適化、電力施設検査保守のスマート化管理並びにピークシフトを実現し、電力グリッドの送電能力を増強し、設備の耐用年数を延ばし、エネルギー利用効率を高める。
クリーン:風力、太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの大規模応用をサポートして、より一層豊かなクリーン・エネルギーをユーザーに提供する。
自己回復:電力グリッドのリアルタイムモニタリング、オンライン分析予測及び自動制御によって速やかに故障の予兆を発見し、高速診断、隔離、故障の除去を行い、自己回復を進め、広範囲の停電を回避し、電力グリッド運行の信頼性を高める。
これより先、米国電力研究所が提唱したスマートグリッドの定義は、電力グリッドの信頼性を強調しており、ロスを低減し投資を減らすことを要求している。また、米国スマートグリッド産業連盟の打ち出した定義は、多様なエネルギーの系統連系を強調している。中国に関しては、国家電網公司が、特高圧送電と合わせてストロングスマートグリッドを提唱し、発電、指令、送変電、配電並びにユーザーの各プロセスをカバーするとしている。
「国家能源局の提唱する定義は、これまで提唱されていたいくつかの種類の定義とは異なる。短期的に見た場合、中国のスマートグリッドは2つの問題の解決に力を入れることになる。第1に、新エネルギー及び分散型エネルギーの系統連系の要請に適応することだ。風力発電、ソーラー発電、マイクログリッド、マイクロハウス発電、電気自動車、新型蓄エネルギー設備などが包摂される。第2に、情報技術を電力グリッドに応用して、電力グリッド産業のアップグレードを推進することだ」と、国家電力規画研究センターの呉雲常務副主任は、《中国能源報》の記者に対して指摘する。
標準制定作業がスタート
現段階における電力グリッドの実際の状況と結びつけるなら、中国のスマートグリッドの開発は、主に配電と電力使用のプロセスに集中させるべきだ」と、趙一農処長は言う。「主として次の6つの側面に焦点を当てて技術開発を進める。再生可能エネルギーの集中型並びに分散型系統連系、スマート配電、スマート電力使用、電気自動車の充電施設、マイクログリッドシステム、電力系統の蓄エネルギーだ」。
これより先、中国のスマートグリッド建設には2種類のプランがあった。一つは、長距離・大容量送電を主な特徴とするストロングスマートグリッドであり、もう一つは、クリーン・高効率・分散型を主な特徴とするスマートグリッドである。しかしながら、今回の国家能源局の態度表明によって、開発路線について送電を強調するのか、それとも配電を強調するのかをめぐる業界の争論には終止符が打たれるに違いない。
本紙記者の得た情報では、スマートグリッド開発路線の明確化に伴って、スマートグリッド標準の制定作業もすでにスタートしている。「標準制定作業は今のところ未だ初級段階に止まっている。しかし、国家電網公司はこれまで少なからぬ技術標準体系を策定して公にしているが、その中には採用すべきものもある」と、標準制定に参加している専門家は本紙記者に告げた。
スマートグリッドが全面的に推進されると、マーケットに対して大きな影響を及ぼすことになると見られる。ある専門家によると、中国がスマートグリッド改修を実施することによって、変圧器、スマート端末、ネットワーク管理技術などの産業に巨大な波及効果を生み、国民経済を毎年少なくとも1〜2ポイント押し上げることになる。また、科陸電子、GE、中国普天といった企業の関係者は本紙記者の取材に対して、いずれもそのマーケットポテンシャルを有望と見ている。
スマートグリッド推進の明確なタイムスケジュールは未定
今回、政府側は様々な問題について明確に答えを出した。しかし、スマートグリッド開発の具体的なタイムスケジュールは今のところ未知数である。
「『知易行難(知るは易しく行い難し)』と言われるように、当面のスマートグリッド開発には依然として少なからぬチャレンジが存在している」と、呉雲氏は本紙記者に表明した。「技術水準について言うなら、中国の蓄エネルギー技術や複雑情報処理技術は依然として向上が待たれる」。
呉雲氏の説明によると、蓄エネルギーの経済性が劣るのは突き詰めれば技術の成熟度が十分でないことに帰結する。例えば、揚水式蓄エネルギー発電所のキロワット当たりの建設費は4,000〜5,000元に上り、開発には地理的な条件による制約もある。蓄エネルギー用のリチウム電池の容量コストは1ワットアワー当たり5元前後である。日間調節性の揚水式蓄エネルギー発電所に蓄電ステーションを機能配置する場合、建設費は3万元を超えることになる。さらに使用寿命が比較的短いという問題や汚染問題もある。複雑情報処理をめぐっても、電力系統オンラインシミュレーション技術を運用しようとする場合、一定のチャレンジがつきまとう。
匿名希望のその道の大家も本紙記者に対し、技術問題のみならず、スマートグリッドの当面の開発にとって最大の障害は依然として体制問題であると指摘する。「例えば、スマートグリッドにおいて電力の相互取引とデマンドサイドレスポンスのプロセスはいずれも電力価格に関係するが、中国の電力価格は目下発展改革委員会価格司が握っており、簡単に変えることは出来ない」。
国家能源局がスマートグリッド開発構想をめぐって「開発メカニズムを合理化し、多くのサイドが共同で推進する」ことを重点的に提唱しているのも、正にそのことが背景にある。
本紙記者の得た情報では、国家能源局は第12次5ヵ年規画期に第1期スマートグリッド実験を展開することになる。具体的には、スマートグリッド実験プロジェクト情報データベースの確立、21のスマートグリッド実験地点の確定、スマートグリッド技術の適用範囲と標準体系の研究、有効な経済補償モデル並びに投資回収メカニズムの探究の、4つの内容が含まれる。
「当面は石橋を叩きながら渡り、一歩ずつ歩んでいく。電力体制改革であれ、市場化であれ、スマートグリッドの開発はそれ自体が漸進的なプロセスになる。政府はすでに態度を表明しており、各種政策も打ち出されるだろう。我々はこの点については積極的、楽観的な態度を持すべきだ」と、前出の大家は述べた。
(中国能源報 7月4日)