10年余りにわたって交渉を続けながら未だ結果が出ていない中露天然ガス協力が最近ようやく一定の進展を見た。 2月26日、外交部の華春宝報道官は定例記者会見において、中露エネルギー協力委員会中国側議長の王岐山副首相が2月25日、ロシア側議長のドボルコビッチ副首相と会談し、具体的な成果を上げたことを明らかにした。 「中露エネルギー協力にとって天然ガス協力は極めて大きな発展の見通しが広がっている」と、黒龍江現代中露地域経済研究院の宋魁院長は強調する。ロシアがエネルギー戦略の調整を進める中で、天然ガス産業を発展させること、特に天然ガスの対外貿易を発展させることが一つの趨勢になっている。一方、天然ガスはクリーン・エネルギーであり、中国の産業構造とエネルギー構造調整のニーズにも適っており、中国の天然ガス需要も大きい。 華春宝報道官によると、中露両国政府は東ルートパイプラインによるガス供給についての企業間交渉を支援し、東ルートパイプラインによって年間380億m3の天然ガスを中国に供給するとともに東ルートの液化天然ガス事業及び西ルートからのガス供給をめぐる協力についても引き続き研究と論証を進めることを確認した。 供給量については言及されたものの、双方は未だ価格については全く言及していない。価格問題は十数年に及ぶ中露天然ガス交渉において未解決の懸案事項である。 10年前にロシア側が中国側に350ドル/千m3のパイプラインガス価格を提示したことがあるが、この価格では中国国内の末端市場価格をはるかに上回る。中国石油天然ガス集団(CNPC)がこの価格で輸入契約に調印した場合、毎年少なくとも数百億元の赤字になり、到底受け入れらない。宋魁院長によると、価格交渉にも一種の駆け引きがあり、ロシアにとっては、欧州市場、ロシア国内市場やアジア太平洋市場など多方面のエネルギー輸出市場に影響が及ぶ。加えて、中露両国の価格決定システムにも違いがある。しかしながら、ロシアはWTO加盟に際して、速やかに天然ガス価格を調整し、国際市場価格にリンクさせることを承諾している。一方、中国の価格決定システムも調整中であり、徐々に国際連動を進めることになる。 「国際ルールの下で双方は世界市場とWTOの規定に従って価格を調整しており、彼我双方が受け入れられる価格を見出すことが期待される」と宋魁院長は指摘する。 アモイ大学中国エネルギー経済研究センターの林伯強主任も今回の価格交渉には楽観的であり、「価格で合意に達するのは間違いない、なぜなら原則面でコンセンサスが出来ているからだ」と指摘する。 中国は世界で最も成長が速いエネルギー消費国であり、欧州市場はすでに委縮している。ロシアは中国の市場を必要としており、中国とロシアは相互補完関係になる。 一方、米国のシェールガス革命により、伝統的な欧州市場におけるロシアのシェアは北米の安価な資源からの脅威にさらされている。西欧各国が従来の天然ガス価格フォーミュラの変更を要求することになれば、ロシア側の受ける圧力は倍増する。そのため、ロシアはより一層積極的に中国との疎通を図り、可及的速やかに天然ガス供給で合意に達することを希望している。 もっとも、この点について、林伯強氏は、米国のシェールガス革命が今回の交渉に対して及ぼす促進的な影響は大きくないとの見方を示す。欧州市場ではロシアのエネルギーは確かに一定の影響を受けるが、今のところ未だ目立った形では現れていない。一方、宋魁氏は、天然ガス交渉が今回進展を遂げたのには、ロシアエネルギー戦略のアジア太平洋へのシフトが原因の一つであるとの考えを示している。ロシアのエネルギー戦略は全方位的であり、これまでは欧州がロシアにとって最大のエネルギー市場であったが、ロシアはすでにアジア太平洋地区を極めて重視するようになっており、中国だけでなく、日本や韓国等の諸国もまた天然ガスも含むロシアのエネルギーを必要としている。 林伯強氏は、総合的に見てロシア側がこの問題を長期的に見なければならないと提言する。「なぜなら、中国は現在発展途上国であり、受入能力が絶えず拡大しているからだ。エネルギー協力は通常、数十年にわたる協力になり、より長期的に見るべきだ。価格面で一歩譲ることが今後ロシアにとって大きなメリットになる」「中露双方は新たな協力モデルを見出すよう試みて良い。例えば共同出資によって開発して収入を平等に分けることだ。そうすれば価格交渉は問題ではなくなる」と林伯強氏は指摘した。 また、宋魁氏は「今は次のような協力のチャンスもある」と述べた、すなわち、ロシアはエネルギー輸出を主とするものの、すでに、エネルギーの採掘から加工に到る協力や下流の協力など全産業チェーンの協力を強調し始め、そのため、中露間のエネルギー協力は複数の分野に及ぶ全産業チェーンの協力でなければならない。 (中国産経新聞報 3月4日)
10年余りにわたって交渉を続けながら未だ結果が出ていない中露天然ガス協力が最近ようやく一定の進展を見た。
2月26日、外交部の華春宝報道官は定例記者会見において、中露エネルギー協力委員会中国側議長の王岐山副首相が2月25日、ロシア側議長のドボルコビッチ副首相と会談し、具体的な成果を上げたことを明らかにした。
「中露エネルギー協力にとって天然ガス協力は極めて大きな発展の見通しが広がっている」と、黒龍江現代中露地域経済研究院の宋魁院長は強調する。ロシアがエネルギー戦略の調整を進める中で、天然ガス産業を発展させること、特に天然ガスの対外貿易を発展させることが一つの趨勢になっている。一方、天然ガスはクリーン・エネルギーであり、中国の産業構造とエネルギー構造調整のニーズにも適っており、中国の天然ガス需要も大きい。
華春宝報道官によると、中露両国政府は東ルートパイプラインによるガス供給についての企業間交渉を支援し、東ルートパイプラインによって年間380億m3の天然ガスを中国に供給するとともに東ルートの液化天然ガス事業及び西ルートからのガス供給をめぐる協力についても引き続き研究と論証を進めることを確認した。
供給量については言及されたものの、双方は未だ価格については全く言及していない。価格問題は十数年に及ぶ中露天然ガス交渉において未解決の懸案事項である。
10年前にロシア側が中国側に350ドル/千m3のパイプラインガス価格を提示したことがあるが、この価格では中国国内の末端市場価格をはるかに上回る。中国石油天然ガス集団(CNPC)がこの価格で輸入契約に調印した場合、毎年少なくとも数百億元の赤字になり、到底受け入れらない。宋魁院長によると、価格交渉にも一種の駆け引きがあり、ロシアにとっては、欧州市場、ロシア国内市場やアジア太平洋市場など多方面のエネルギー輸出市場に影響が及ぶ。加えて、中露両国の価格決定システムにも違いがある。しかしながら、ロシアはWTO加盟に際して、速やかに天然ガス価格を調整し、国際市場価格にリンクさせることを承諾している。一方、中国の価格決定システムも調整中であり、徐々に国際連動を進めることになる。
「国際ルールの下で双方は世界市場とWTOの規定に従って価格を調整しており、彼我双方が受け入れられる価格を見出すことが期待される」と宋魁院長は指摘する。
アモイ大学中国エネルギー経済研究センターの林伯強主任も今回の価格交渉には楽観的であり、「価格で合意に達するのは間違いない、なぜなら原則面でコンセンサスが出来ているからだ」と指摘する。
中国は世界で最も成長が速いエネルギー消費国であり、欧州市場はすでに委縮している。ロシアは中国の市場を必要としており、中国とロシアは相互補完関係になる。
一方、米国のシェールガス革命により、伝統的な欧州市場におけるロシアのシェアは北米の安価な資源からの脅威にさらされている。西欧各国が従来の天然ガス価格フォーミュラの変更を要求することになれば、ロシア側の受ける圧力は倍増する。そのため、ロシアはより一層積極的に中国との疎通を図り、可及的速やかに天然ガス供給で合意に達することを希望している。
もっとも、この点について、林伯強氏は、米国のシェールガス革命が今回の交渉に対して及ぼす促進的な影響は大きくないとの見方を示す。欧州市場ではロシアのエネルギーは確かに一定の影響を受けるが、今のところ未だ目立った形では現れていない。一方、宋魁氏は、天然ガス交渉が今回進展を遂げたのには、ロシアエネルギー戦略のアジア太平洋へのシフトが原因の一つであるとの考えを示している。ロシアのエネルギー戦略は全方位的であり、これまでは欧州がロシアにとって最大のエネルギー市場であったが、ロシアはすでにアジア太平洋地区を極めて重視するようになっており、中国だけでなく、日本や韓国等の諸国もまた天然ガスも含むロシアのエネルギーを必要としている。
林伯強氏は、総合的に見てロシア側がこの問題を長期的に見なければならないと提言する。「なぜなら、中国は現在発展途上国であり、受入能力が絶えず拡大しているからだ。エネルギー協力は通常、数十年にわたる協力になり、より長期的に見るべきだ。価格面で一歩譲ることが今後ロシアにとって大きなメリットになる」「中露双方は新たな協力モデルを見出すよう試みて良い。例えば共同出資によって開発して収入を平等に分けることだ。そうすれば価格交渉は問題ではなくなる」と林伯強氏は指摘した。
また、宋魁氏は「今は次のような協力のチャンスもある」と述べた、すなわち、ロシアはエネルギー輸出を主とするものの、すでに、エネルギーの採掘から加工に到る協力や下流の協力など全産業チェーンの協力を強調し始め、そのため、中露間のエネルギー協力は複数の分野に及ぶ全産業チェーンの協力でなければならない。
(中国産経新聞報 3月4日)