具体的な価格をめぐって未だ妥結することが出来ず、ロシア天然ガス企業Gazpromと中国石油天然ガス集団(CNPC)はすでに中露天然ガス西線の契約調印を無期延期したとの報道がされている。 この点について、CNPC内部の天然ガス担当者は、価格交渉は依然継続中であるが、西線についていつ契約が調印され、いつ着工されるのかは未だ確定していないとし、無期延期という言い方は正確ではないと述べた。しかし、別のCNPC内部のアナリストは次のように述べた。中国の天然ガス需要の伸びが鈍化して、CNPCと中国石油化工(SINOPEC)の供給確保の圧力も軽減し、同時に低価格のLNGによって天然ガス源の多元化がさらに進んだことで、ロシア天然ガスのコストパーフォーマンスが大きく下がっている。価格が原因で事業が一次凍結されたとしても意外なことではない。 中露交渉は依然継続も価格の妥結が困難に 中露天然ガスパイプライン西線事業の無期延期については、CNPC側は未だ回答せず、取材したCNPC関係者の多くもコメントを避けている。 中露天然ガスパイプライン西線からの天然ガス供給については2014年11月9日に枠組合意文書が調印されていた。合意によると、ロシア側はシベリア西部からアルタイパイプラインによって中国へ毎年300億m3の天然ガスを追加供給することになる。期間は30年である。但し、枠組合意には価格に関する内容は盛り込まれていない。 なお、その半年前の2014年5月、ロシアと中国は4,000億ドルに上る天然ガス協力で合意し、シベリアパイプライン(中露天然ガスパイプライン東線)を開通させ、2018年以降ロシアから中国へ毎年380億m3の天然ガスを輸出することになった。 金銀島のアナリスト江波氏によると、中露天然ガスパイプライン西線は、価格決定の仕組みと決済方式が確定次第、着工が可能になるが、現在のロシアの提示価格はCNPCにとって受け入れることが難しく、そのため作業は一時中断している。 ICISの李莉エネルギー研究総監によると、中露天然ガスパイプライン西線の枠組合意文書が調印された当時、価格パラメータについては以前の価格決定の仕組みを参考にすることになったが、現在石油価格と石炭価格の低迷など天然ガス消費に対する衝撃や、経済成長率の低下による天然ガス需要の鈍化といった側面から見て、中露双方が価格面で妥結することが難しくなった。 ロシア天然ガスのコスパが低下 ロシアは現在エネルギーの輸出先を中国などアジア太平洋地区に転換するよう努めているが、中国経済の発展が「新常態」(ニューノーマル)に入り、中国の天然ガス需要の減速もますます顕著になっている。 発展改革委員会の発表した統計によると、2014年4月の中国の天然ガス消費量が月間消費量としては初めてマイナスになった。同月の天然ガス消費量は前年同月比5.9%減、天然ガス生産量は2%減、輸入量は20.3%減になった。 2014年の中国の天然ガス見掛け消費量は1,786億m3、わずか5.6%の増加に止まり、過去10年連続の二桁台の伸び率は終わった。「以前は国家レベルにおいて2020年の天然ガス需要は4,000億m3近くになると予想されていた。当時は中国の天然ガス需要が極めて充足し、そのため中露天然ガスパイプライン東線と西線をめぐって協力が合意された。しかし、今は経済の下振れに加え、エネルギー価格が下落し、工業用ガスと天然ガス発電の需要がいずれも大きく下がっている。こうして見てくると、2020年の中国の天然ガス需要は3,000億m3にも届かない可能性すらある」と江波氏は言う。 また、江波氏は、東線のロシア天然ガス価格も中国にとっては決して安くはなく、CNPCがそれを受け入れたのは供給確保を考慮した上であると指摘する。「我々の試算によると、東線のロシアガスの黒河到着以降の価格は2.2元/m3になり、供給確保の考慮がなければ、このような天然ガス価格を受け入れることは極めて難しい」。 CNPC内部筋によると、中国国内の天然ガス供給確保の圧力が軽減されると、ロシア天然ガスのコストパーフォーマンスも大幅に下がることになる。CNPCとSINOPECも経済収益を重視する必要があり、そのためCNPC側が最終的に価格問題のために事業を一時凍結することになっても意外には当たらない。CNPCの2014年の年報によると、昨年の同社の天然ガス及びパイプライン部門で輸入ガスの販売による赤字は350.20億元に上っており、うち中央アジア天然ガスの輸入販売の赤字は176.83億元、LNG輸入販売の赤字は204.50億元、ミャンマー天然ガスの赤字は34.65億元であった。「東線のロシア天然ガスは比較的市場に近いので、相対的に収益性は良いが、西線から入るロシア天然ガスにパイプライン輸送費用を加算すると、収益は期し難い。中国の天然ガス需要の伸び率が下がっているだけでなく、安価な輸入LNGなどもロシア天然ガスにとっては極めて大きな衝撃になる。そのため、CNPCとSINOPECが考慮すべき問題は供給確保だけというわけではなくなった。 (中国能源網 8月4日)
具体的な価格をめぐって未だ妥結することが出来ず、ロシア天然ガス企業Gazpromと中国石油天然ガス集団(CNPC)はすでに中露天然ガス西線の契約調印を無期延期したとの報道がされている。
この点について、CNPC内部の天然ガス担当者は、価格交渉は依然継続中であるが、西線についていつ契約が調印され、いつ着工されるのかは未だ確定していないとし、無期延期という言い方は正確ではないと述べた。しかし、別のCNPC内部のアナリストは次のように述べた。中国の天然ガス需要の伸びが鈍化して、CNPCと中国石油化工(SINOPEC)の供給確保の圧力も軽減し、同時に低価格のLNGによって天然ガス源の多元化がさらに進んだことで、ロシア天然ガスのコストパーフォーマンスが大きく下がっている。価格が原因で事業が一次凍結されたとしても意外なことではない。
中露交渉は依然継続も価格の妥結が困難に
中露天然ガスパイプライン西線事業の無期延期については、CNPC側は未だ回答せず、取材したCNPC関係者の多くもコメントを避けている。
中露天然ガスパイプライン西線からの天然ガス供給については2014年11月9日に枠組合意文書が調印されていた。合意によると、ロシア側はシベリア西部からアルタイパイプラインによって中国へ毎年300億m3の天然ガスを追加供給することになる。期間は30年である。但し、枠組合意には価格に関する内容は盛り込まれていない。
なお、その半年前の2014年5月、ロシアと中国は4,000億ドルに上る天然ガス協力で合意し、シベリアパイプライン(中露天然ガスパイプライン東線)を開通させ、2018年以降ロシアから中国へ毎年380億m3の天然ガスを輸出することになった。
金銀島のアナリスト江波氏によると、中露天然ガスパイプライン西線は、価格決定の仕組みと決済方式が確定次第、着工が可能になるが、現在のロシアの提示価格はCNPCにとって受け入れることが難しく、そのため作業は一時中断している。
ICISの李莉エネルギー研究総監によると、中露天然ガスパイプライン西線の枠組合意文書が調印された当時、価格パラメータについては以前の価格決定の仕組みを参考にすることになったが、現在石油価格と石炭価格の低迷など天然ガス消費に対する衝撃や、経済成長率の低下による天然ガス需要の鈍化といった側面から見て、中露双方が価格面で妥結することが難しくなった。
ロシア天然ガスのコスパが低下
ロシアは現在エネルギーの輸出先を中国などアジア太平洋地区に転換するよう努めているが、中国経済の発展が「新常態」(ニューノーマル)に入り、中国の天然ガス需要の減速もますます顕著になっている。
発展改革委員会の発表した統計によると、2014年4月の中国の天然ガス消費量が月間消費量としては初めてマイナスになった。同月の天然ガス消費量は前年同月比5.9%減、天然ガス生産量は2%減、輸入量は20.3%減になった。
2014年の中国の天然ガス見掛け消費量は1,786億m3、わずか5.6%の増加に止まり、過去10年連続の二桁台の伸び率は終わった。「以前は国家レベルにおいて2020年の天然ガス需要は4,000億m3近くになると予想されていた。当時は中国の天然ガス需要が極めて充足し、そのため中露天然ガスパイプライン東線と西線をめぐって協力が合意された。しかし、今は経済の下振れに加え、エネルギー価格が下落し、工業用ガスと天然ガス発電の需要がいずれも大きく下がっている。こうして見てくると、2020年の中国の天然ガス需要は3,000億m3にも届かない可能性すらある」と江波氏は言う。
また、江波氏は、東線のロシア天然ガス価格も中国にとっては決して安くはなく、CNPCがそれを受け入れたのは供給確保を考慮した上であると指摘する。「我々の試算によると、東線のロシアガスの黒河到着以降の価格は2.2元/m3になり、供給確保の考慮がなければ、このような天然ガス価格を受け入れることは極めて難しい」。
CNPC内部筋によると、中国国内の天然ガス供給確保の圧力が軽減されると、ロシア天然ガスのコストパーフォーマンスも大幅に下がることになる。CNPCとSINOPECも経済収益を重視する必要があり、そのためCNPC側が最終的に価格問題のために事業を一時凍結することになっても意外には当たらない。CNPCの2014年の年報によると、昨年の同社の天然ガス及びパイプライン部門で輸入ガスの販売による赤字は350.20億元に上っており、うち中央アジア天然ガスの輸入販売の赤字は176.83億元、LNG輸入販売の赤字は204.50億元、ミャンマー天然ガスの赤字は34.65億元であった。「東線のロシア天然ガスは比較的市場に近いので、相対的に収益性は良いが、西線から入るロシア天然ガスにパイプライン輸送費用を加算すると、収益は期し難い。中国の天然ガス需要の伸び率が下がっているだけでなく、安価な輸入LNGなどもロシア天然ガスにとっては極めて大きな衝撃になる。そのため、CNPCとSINOPECが考慮すべき問題は供給確保だけというわけではなくなった。
(中国能源網 8月4日)