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中国
【石油・天然ガス】

天然ガス需要の低下にいかにして対応すべきか (15/08/19)
2015/8/26
中国【石油・天然ガス】

 国家発展改革委員会が発表した統計によると、今年上半期の中国の天然ガス消費量は906億m3、前年同期比2.1%増になった。一方、2014年の天然ガス消費量の対前年比の伸び率は8.9%、2013年は13.1%であった。天然ガス消費は伸びが鈍化する段階に進んでいる。当然ながら、その原因には中国の天然ガス消費量の基数の拡大が増加率の低下を招いたこともあるが、より重要な原因には天然ガス需要の軟調と天然ガスの供給過剰がある。

 その長期的な要因を見ると、天然ガスの上流投資の過剰と下流の市場の付帯施設の不足や不健全な仕組みとのギャップがある。第12次5ヵ年規画期に中国の天然ガス供給量は急速に増加し、国内の天然ガス生産量の年平均伸び率は8%以上になった。また、中央アジア、ミャンマーからの輸入パイプラインガスや輸入LNGが大幅に増加し、天然ガス供給能力は大きく高まった。しかし、天然ガスの下流市場はパイプライン網に依存するところが大きく、中国の天然ガス下流市場の発展スピードは上流の急速に増加する供給量にはるかに及ばなかった。また、中国の天然ガス価格決定の仕組みが完全に市場化されておらず、市場の需給に応じて即時調整するこが出来ないことも挙げられる。国家発展改革委員会が何度か天然ガス価格を引き上げて、天然ガス生産企業の積極性を引き出そうとしたが、天然ガスの下流の需要家に対してはネガティブな影響を生み、結局は天然ガスの供給過剰を後押しすることになった。さらに、天然ガスのピーク調整の仕組みが整っていないこともある。ピーク調整用のガス貯蔵庫が不健全であり、季節的なピーク調整、日間のピーク調整や緊急ピーク調整のニーズを満たすことが出来ない。

 一方、短期的な要因を見ると、中国の天然ガスの需要鈍化は国内経済の成長率の低下と密接不可分である。中国は全体的に生産能力過剰と市場需要のエンジン不足状況にあり、そのためエネルギー産業全体の不振を招き、原油、石炭、電力市場や天然ガス市場にはいずれも下振れ傾向が存在している。第2に、国際油価の急落や国内石炭価格の大幅な下落によって、天然ガスの経済的優位が喪失し、天然ガスの代替性が阻害され、需要増加のエンジンが著しく不足することになった。

 このような天然ガス市場の需給情勢に対しては、政府と企業が一致して様々な措置を講じ、特に次のいくつかの側面から前向きに対応しなければならない。

 第1に、現行の天然ガス価格決定の仕組みを調整する。政府は天然ガスの価格調整サイクルを短縮し、価格制限を適度に撤廃すべきである。上海石油天然ガス取引センターの価格に基づいて調整を進めることで、天然ガス価格の上下変動を可能にし、価格の市場需給調節機能を発揮させることが望ましい。同時に天然ガスの季節的差別価格、オフピーク価格、供給中断可能価格といった差別価格政策を策定して、価格の梃子としての作用を発揮させるべきである。また、民生用ガス価格とシティゲート価格の逆さや問題を解決し、民生用ガスと工業用・熱供給用ガスの補助金のねじれを解消しなければならない。

 第2に、ピーク調整用の天然ガス貯蔵庫の建設とピーク調整の仕組みの整備を急ぐ必要がある。多様な投資家がガス貯蔵庫やLNGターミナルへの投資、建設、経営に参加するよう誘導し、ピーク調整関連施設の整備を加速して、緊急備蓄とピーク調整能力を向上させる。

 第3に、天然ガス下流市場の育成を強化する。都市ガス網、LNGサービスステーション、LNGターミナル、LNGガス化施設の建設を速やかに推進する。優遇助成措置を策定して、LNG自動車、LNG船舶や「煤改気」プロジェクト(工業用石炭焚き設備の天然ガスへの改修)をサポートし、もって天然ガスの上流産業と下流産業の円滑な疎通を図る。

 第4に、天然ガス生産量と輸入量を適正に調整する。天然ガスの供給過剰に直面した場合は生産計画を適切に調整して生産量と輸入量を減らす。国内市場において短期間で消化できない天然ガスについては、天然ガス戦略備蓄に転換するか、もしくは周辺諸国と短期契約を結んで輸出を図る。

 第5に、生産効率を高め、市場の販促を強化する。天然ガス企業は管理をスリム化し技術革新を進めて生産コストを引き下げ、生産効率を高め、それによって利益率を高め、もって天然ガス市場の下振れ圧力に前向きに対応する。天然ガス企業の販売担当者は多様な営業手法を活用し、値下げや固定価格による長期供給契約といった方式によって大口需要家により多くの優遇措置を提供するようにし、もって天然ガスの販路を広げ、販売量を増やす。

 (新浪財経 8月19日)