「中国の石油製品価格統制は世界の輸出先への助成に等しい」 理財週報 記者 王虎 石油製品価格が統制されているため、中国石油(CNPC)と中国石化 (SINOPEC)の製油部門は今年第1四半期にいずれも巨額の赤字を出した。統計によると、第1四半期の中国の製油事業全体で587億元もの赤字となった。 前回の石油製品価格引き上げ時(2007年11月1日)の価格で計算すると、CNPCとSINOPECの製油部門の損益分岐点は原油1バレル80ドル前後になる。しかし、今年第1四半期の国際原油価格は100ドル以上で推移した。SINOPECの蘇樹林董事長(会長)は、同社が3月期に生産したガソリン1トンにつき2,162元の損失が生じ、軽油1トンにつき3,000元以上の損失になったと公表している。 IEAのレポートによると、国際原油価格の現在の水準が続く場合、SINOPECの今年の製油部門の赤字は140億ドルになる。もっとも、SINOPECはこうした見方を否定している。 昨年、国際原油価格は80%以上もの上昇となり、下半期に中国国内では輸入原油価格と石油製品価格の逆さやが発生した。だが、今年はインフレ抑制を中心とする経済政策の中で、石油製品価格の改革に打開が生まれる可能性は極めて低い。 中国の廉価な石油製品の最大の受益者は誰だろうか。これは、石油製品の最終消費者を見れば分かる。表面的には交通運輸業が石油製品の最大の需要家のように思われる。しかし、国家発展改革委員会(NDRC)能源研究所の前所長であり、エネルギー問題の大家である周大地氏の試算によると、中国では工業部門の末端エネルギー消費が全国の末端エネルギー総消費量の7割を占めている。中国の石油製品の最大の需要家は、実際は製造業なのである。 中国の膨大な製造業は、中国を「世界の工場」としている。業界内の専門家の見るところでは、毎年急成長を続ける対外輸出は、安価なエネルギーと安価な資源によるコスト上の優位によって推進されている。「つまり、石油製品価格の統制が安価な石油製品価格の原因となっているが、このことは『中国が世界に助成している』のも同然である」と国家情報センター・マクロ研究部副主任の牛犁氏は言う。 中国政府もこうした問題にはすでに留意している。政府は先頃、石油製品の輸入にかかる付加価値税の還付措置を打ち出すとともに、製油部門の赤字に対して補助金を交付する等の政策を打ち出した。しかし、SINOPECの第1四半期の業績から見て、この種の助成措置によってすべての赤字を補填することは不可能である。牛犁氏は、「中国のこれまでの政策では、エネルギーと環境保護コストは低いままであるが、短期的には改めることが難しい」と指摘する。 結局、捻じ曲げられた石油製品価格決定システムでは、原油価格の上昇による巨額の輸入コストを石油製品価格に転嫁することが出来ず、下流の需要家に巨額の助成を行なう結果になる。一方、メイドインチャイナが次々と海外に輸出されているが、これでは、巨額の補助金を世界にばら撒いているのも同然なのである。 石油製品価格制度の改革をめぐっては長年にわたり喧々諤々の議論が続いているが、当面の国際原油価格の高止まりの下で、改革に対する抵抗はますます大きくなっている。「このことは世界の分業システムの中における中国の地位によって運命付けられているとも言える。このような運命を変えるには、成長モデルを改めるしか方法がない」と牛犁氏は言う。 (中国能源網 5月6日)
「中国の石油製品価格統制は世界の輸出先への助成に等しい」
理財週報 記者 王虎
石油製品価格が統制されているため、中国石油(CNPC)と中国石化 (SINOPEC)の製油部門は今年第1四半期にいずれも巨額の赤字を出した。統計によると、第1四半期の中国の製油事業全体で587億元もの赤字となった。
前回の石油製品価格引き上げ時(2007年11月1日)の価格で計算すると、CNPCとSINOPECの製油部門の損益分岐点は原油1バレル80ドル前後になる。しかし、今年第1四半期の国際原油価格は100ドル以上で推移した。SINOPECの蘇樹林董事長(会長)は、同社が3月期に生産したガソリン1トンにつき2,162元の損失が生じ、軽油1トンにつき3,000元以上の損失になったと公表している。
IEAのレポートによると、国際原油価格の現在の水準が続く場合、SINOPECの今年の製油部門の赤字は140億ドルになる。もっとも、SINOPECはこうした見方を否定している。
昨年、国際原油価格は80%以上もの上昇となり、下半期に中国国内では輸入原油価格と石油製品価格の逆さやが発生した。だが、今年はインフレ抑制を中心とする経済政策の中で、石油製品価格の改革に打開が生まれる可能性は極めて低い。
中国の廉価な石油製品の最大の受益者は誰だろうか。これは、石油製品の最終消費者を見れば分かる。表面的には交通運輸業が石油製品の最大の需要家のように思われる。しかし、国家発展改革委員会(NDRC)能源研究所の前所長であり、エネルギー問題の大家である周大地氏の試算によると、中国では工業部門の末端エネルギー消費が全国の末端エネルギー総消費量の7割を占めている。中国の石油製品の最大の需要家は、実際は製造業なのである。
中国の膨大な製造業は、中国を「世界の工場」としている。業界内の専門家の見るところでは、毎年急成長を続ける対外輸出は、安価なエネルギーと安価な資源によるコスト上の優位によって推進されている。「つまり、石油製品価格の統制が安価な石油製品価格の原因となっているが、このことは『中国が世界に助成している』のも同然である」と国家情報センター・マクロ研究部副主任の牛犁氏は言う。
中国政府もこうした問題にはすでに留意している。政府は先頃、石油製品の輸入にかかる付加価値税の還付措置を打ち出すとともに、製油部門の赤字に対して補助金を交付する等の政策を打ち出した。しかし、SINOPECの第1四半期の業績から見て、この種の助成措置によってすべての赤字を補填することは不可能である。牛犁氏は、「中国のこれまでの政策では、エネルギーと環境保護コストは低いままであるが、短期的には改めることが難しい」と指摘する。
結局、捻じ曲げられた石油製品価格決定システムでは、原油価格の上昇による巨額の輸入コストを石油製品価格に転嫁することが出来ず、下流の需要家に巨額の助成を行なう結果になる。一方、メイドインチャイナが次々と海外に輸出されているが、これでは、巨額の補助金を世界にばら撒いているのも同然なのである。
石油製品価格制度の改革をめぐっては長年にわたり喧々諤々の議論が続いているが、当面の国際原油価格の高止まりの下で、改革に対する抵抗はますます大きくなっている。「このことは世界の分業システムの中における中国の地位によって運命付けられているとも言える。このような運命を変えるには、成長モデルを改めるしか方法がない」と牛犁氏は言う。
(中国能源網 5月6日)