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中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】中国経済はエネルギーコストの上昇に耐えられるのか?(2007/08/24)
2007/11/22
中国【エネルギー全般・政治経済】

 中国経済の将来の見通しについて、国外の経済学者は早くから、中国の総合力は2030年に日本を超えると予想している。しかし、こうした予測について、当面の厳しいエネルギー状況から見て余りにも楽観的過ぎると考える専門家もいる。2030年までの23年間、資源コストの上昇とそこから波及する連鎖反応は中国にとって過酷な試練となるという見方である。

 2030年に日本を超えるか?

 米国コロンビア大学教授・ロバート・マンデルは、中国の総合力は2030年に日本を追い越し、2060年に中国のGDPは欧州を追い越すと予言した。マンデル教授の分析によると、この4年間、中国経済が2ケタ台の成長を実現しているのは、安定した政治構造と金利政策、高い利息率、豊かな人的資源、新技術の応用や世界経済の繁栄がもたらした輸出需要の急増の賜物である。

 また、北京大学経済研究センター主任の林毅夫教授は、中国は2030年に世界最大の経済体になると予想している。林教授によると、2030年に中国の1人当たり収入は米国の20%に達するが、人口は米国の5倍であるため、中国全体の経済規模は米国と同じ規模になり、さらに、貨幣価値の上昇も考慮に入れると、1.5倍になる可能性が高い。林教授は、マクロ的に見てもミクロ的に見ても、中国は経済強国のトップに躍進する実力を備えており、今後20年、30年、あるいはもっと長期にわたって、7〜10%の経済成長を続ける可能性が高いと見なしている。

 エネルギーコストの上昇が経済発展の障害に

 経済学者の楽観的な予測に対して、ある石油企業の幹部は、これらの予測はエネルギーコストが変化しないことを前提にしているとして、批判する。

 例えば、日本と比較してみると、3回にわたる石油危機を経験した日本はエネルギー転換戦略を実施して大きな成果を上げた。日本のソーラー発電設備容量は約64万kWに上り、世界全体の50%を占め、さらに、2010年には482万kWに増やすよう計画している。また、風力発電は世界第3位であり、2010年には200万kWに達すると見られる。一方、中国の太陽エネルギーや風力発電は、政策が不十分であるため、産業として確立されるには到っていない。技術力やエネルギー使用効率でも中国は日本にはるかに及ばない。

中国の原油輸入は現在1日当たり300万バレルであるが、IEAの報告によると、2030年には1,200万バレルに達し、対外依存度は80%になると見られる。

 国家情報センターの牛犁氏は、このような大きな格差があることから、もし今後数年間石油価格の上昇が続けば、中国が日本を追い越す時期は先延ばしになるとしている。

 国有資産監督管理委員会のデータが示しているように、今年上半期、423社の国有重点企業の生産は急成長し、利益も拡大を続け、景気指数は83.11%に達した。しかし、こうした優れた業績は、上半期の原油価格下落が一因であると専門家は見ている。逆に原油価格がいったん上昇すれば、国有重点企業の増益にもマイナス影響が出るということである。

 資源不足のため食料品価格が高騰

 一方、民営企業と外資企業のこの30年間の業績は低廉な労働力の賜物である。しかし、この優勢も2030年かあるいはそれより早い時期にはなくなる。北京大学の夏業良によると、食料品価格や原料価格の高騰に伴い、すでに労働力コストも全面的に上昇しつつある。

 また、最近の穀物価格の高騰は、石油資源の不足と密接な関係がある。世界的にトウモロコシを大量生産してバイオエタノールを生産する動きが拡大しており、従来大豆や小麦を栽培していた土地でもトウモロコシへの転作が進んでいる。そのため、必然的に大豆、小麦や、トウモロコシを主原料とする飼料価格が高騰し、食肉価格の高騰も招いている。その他にも、原油価格の上昇によって化学肥料、尿素など農業コストも上昇し、ますます穀物価格を押し上げることになる。

 ロシア科学院シベリア分院石油・天然ガス地質・地球物理研究所の最新の予測によると、国際原油価格が高水準で推移する状況は2012年まで持続する。そうなると、石油価格、穀物価格の上昇に伴い労働力コストが上昇するという流れはまだ始まったばかりだということになる。

 (石油商報 8月24日)