世界の石油資源の枯渇、国内の穀物生産の段階的な過剰、日増しに深刻化する環境汚染を背景に、中国のバイオ液体燃料産業は急速に発展してきたが、近年、国内の穀物生産販売状況に変化が生じ、バイオマス燃料産業は原料の転換、技術の進歩、価格システムの完備など一連の課題に直面している。 急成長したバイオ液体産業 バイオ液体燃料は生産、流通、消費いずれの面でも技術が成熟し、使用や普及の面でも優越性を備えている。すでに米国、ブラジル、EU等で大きな発展を遂げたが、今後、バイオ液体燃料は中国でも再生可能エネルギーの開発利用戦略において重要な指針となる。 中国では90年代に入ってから、エタノール燃料を中心とするバイオ液体燃料産業がスタートし、10数年を経て、成熟したエタノール生産技術と大規模な生産能力を有するようになった。河南、安徽、吉林、黒龍江には4ヵ所のエタノール工場が建設されており、また、全国9ヵ省でエタノールガソリンが販売されている。2006年末の時点で、エタノール燃料メーカー4社の生産販売量は243万トン、また、2006年のエタノールガソリン販売量は1,300万トンに上り、全国ガソリン消費量の23.3%を占めた。中国はいまや世界第3位のエタノール燃料生産国となっている。 政府はエタノール燃料だけでなく、バイオディーゼルの開発にも力を入れている。バイオディーゼルの生産を行っているのは現在20社余り、生産能力は約30万トンになる。 その他にも、政府はセルロース系エタノールの開発と産業化も支援しており、河南天冠集団による国内初、年産3,000トンのセルロース系エタノール産業化中間試験生産ラインが今年完成する。 解決すべき4つの難題 バイオ液体燃料産業はこの数年急速に発展したものの、まだスタート段階にあり、解決を要する多くの問題に直面している。 (1) 非穀物系原料への速やかな転換が必要 人口大国である中国では何よりも穀物の供給が優先課題である。増大するエタノール燃料生産の需要を、増産の余地が限られる穀物によって賄うことは難しい。国内の巨大な飼料用穀物資源を活用して飼料エタノールとの複合生産を進めるとともに、非穀物系原料への転換を速やかに推進する必要がある。 (2) 産業技術をもっと向上させることが必要 省エネ・排出削減の面で技術の導入や更新を進め、産業全体の技術水準を高めなければならない。 (3) エタノール燃料価格システムの完備が必要 エタノール燃料の試験的実施期間は、ガソリン出荷価格より低い価格決定方法を適用していたが、これでは製品本来の価値を低めるだけでなく、エタノール燃料産業の発展を制約してしまう。長期的な産業発展の見地から、エタノール燃料の価格システムをより一層完備して、国際価格と連動させるようにしなければならない。 (4) バイオ液体燃料技術の研究開発と産業化に対する支援強化が必要 バイオディーゼル、セルロース系エタノールの開発と産業化は重要な段階に入っている。業界や企業が努力するだけでは十分でない。バイオマスエネルギーへの大規模な転換を進めるには、政府が中心となって、業種の境を超えた産学研共同研究開発を推進するとともに、専門資金を設けて産業化プロセスを支援しなければならない。 産業の潜在力と大きな将来性 絶え間なく減少する世界の化石燃料…… 日増しに深刻化する環境問題…… 今後、再生可能エネルギーを中心に新エネルギー産業が急速に発展し、再生可能エネルギーの主要分野であるバイオ液体燃料はますます重要視されるに違いない。 中国の計画では、今後エタノールガソリンの普及拡大をより一層進め、既存のバイオ液体燃料メーカーを中心に地域的なバイオ液体燃料生産グループ3〜5社を形成することになる。 河南天冠集団の張暁陽会長の予測によると、第11次5ヵ年規画期に全国のバイオ液体燃料生産能力は500万トンに達し、うちエタノール燃料の生産能力は400万トン以上となる。また、2020年にバイオ液体燃料は1,500〜2,300万トンに達し、全国の液体燃料総量の20%を占めるだろう。 今後は自然界で最も豊かな再生可能資源である植物繊維質を原料とすることで、エタノール製品は無尽蔵の資源を活用できることになる。毎年全国で生じる農業廃棄物の半分をエタノール燃料に転換するだけでも、その生産量は全国ガソリン消費量の1.2倍を上回ることになる。また、遺伝子技術など現代的科学技術がエタノールの研究分野にも適用されるようになり、セルロース系エタノールの生産技術は、今後ますます改善され、産業化の条件が次第に整うだろう。 国際協力によって相互補完を実現 日増しに枯渇する石油資源の代わりにバイオ液体燃料を発展させることは世界各国が共同で負うべき責任である。多くのエネルギー需要国はそれぞれの研究領域で一定の成果を上げている。中国は国際間の交流と協力を強化し、相互補完と共同開発を進め、特に以下に述べる分野で協力を強化して、産業の発展を加速させなければならない。 (1) エネルギー作物分野での協力 中国は甘コーリャン、脱毒甘薯、高デンプントウモロコシなどの栽培ではノウハウと技術を蓄積しているが、今後は高生産エネルギー作物に関する技術協力パートナーを見つけて、単位面積当たりの生産量を高めなければならない。 (2) セルロース系エタノール産業化技術の協力 セルロース系エタノールは今後、バイオ液体燃料の主流になる。国外の多くの研究機関や企業はセルロース系エタノールの産業化に力を入れている。中国は国際間における相互補完を強化し、繊維質の含有量の多い植物の遺伝子改良、高効率・低コストの繊維質、半繊維質抽出技術などの分野で協力を展開して、セルロース系エタノールの産業化を速やかに実現しなければならない。 (3) デンプン質によるエタノールの直接生産、エタノール膜法脱水、酵母利用等の面での研究協力 これらの分野では日本が急速な進展を遂げている。技術協力の方式によって、エタノール生産におけるエネルギー消費を引き下げるよう力を合わせなければならない。 (4) バイオエネルギー産業から派生するバイオ化学分野の技術協力 エタノールによる酸素製造、エタノールを燃料とする燃料電池、微生物を利用した油脂、バイオマス合成液体燃料など様々な分野でバイオエネルギー産業の連鎖を広げていく。 技術以外でも、資本、マネジメントなどの分野で幅広く国際協力を展開する。 (中国食品産業網 8月28日)
世界の石油資源の枯渇、国内の穀物生産の段階的な過剰、日増しに深刻化する環境汚染を背景に、中国のバイオ液体燃料産業は急速に発展してきたが、近年、国内の穀物生産販売状況に変化が生じ、バイオマス燃料産業は原料の転換、技術の進歩、価格システムの完備など一連の課題に直面している。
急成長したバイオ液体産業
バイオ液体燃料は生産、流通、消費いずれの面でも技術が成熟し、使用や普及の面でも優越性を備えている。すでに米国、ブラジル、EU等で大きな発展を遂げたが、今後、バイオ液体燃料は中国でも再生可能エネルギーの開発利用戦略において重要な指針となる。
中国では90年代に入ってから、エタノール燃料を中心とするバイオ液体燃料産業がスタートし、10数年を経て、成熟したエタノール生産技術と大規模な生産能力を有するようになった。河南、安徽、吉林、黒龍江には4ヵ所のエタノール工場が建設されており、また、全国9ヵ省でエタノールガソリンが販売されている。2006年末の時点で、エタノール燃料メーカー4社の生産販売量は243万トン、また、2006年のエタノールガソリン販売量は1,300万トンに上り、全国ガソリン消費量の23.3%を占めた。中国はいまや世界第3位のエタノール燃料生産国となっている。
政府はエタノール燃料だけでなく、バイオディーゼルの開発にも力を入れている。バイオディーゼルの生産を行っているのは現在20社余り、生産能力は約30万トンになる。
その他にも、政府はセルロース系エタノールの開発と産業化も支援しており、河南天冠集団による国内初、年産3,000トンのセルロース系エタノール産業化中間試験生産ラインが今年完成する。
解決すべき4つの難題
バイオ液体燃料産業はこの数年急速に発展したものの、まだスタート段階にあり、解決を要する多くの問題に直面している。
(1) 非穀物系原料への速やかな転換が必要
人口大国である中国では何よりも穀物の供給が優先課題である。増大するエタノール燃料生産の需要を、増産の余地が限られる穀物によって賄うことは難しい。国内の巨大な飼料用穀物資源を活用して飼料エタノールとの複合生産を進めるとともに、非穀物系原料への転換を速やかに推進する必要がある。
(2) 産業技術をもっと向上させることが必要
省エネ・排出削減の面で技術の導入や更新を進め、産業全体の技術水準を高めなければならない。
(3) エタノール燃料価格システムの完備が必要
エタノール燃料の試験的実施期間は、ガソリン出荷価格より低い価格決定方法を適用していたが、これでは製品本来の価値を低めるだけでなく、エタノール燃料産業の発展を制約してしまう。長期的な産業発展の見地から、エタノール燃料の価格システムをより一層完備して、国際価格と連動させるようにしなければならない。
(4) バイオ液体燃料技術の研究開発と産業化に対する支援強化が必要
バイオディーゼル、セルロース系エタノールの開発と産業化は重要な段階に入っている。業界や企業が努力するだけでは十分でない。バイオマスエネルギーへの大規模な転換を進めるには、政府が中心となって、業種の境を超えた産学研共同研究開発を推進するとともに、専門資金を設けて産業化プロセスを支援しなければならない。
産業の潜在力と大きな将来性
絶え間なく減少する世界の化石燃料……
日増しに深刻化する環境問題……
今後、再生可能エネルギーを中心に新エネルギー産業が急速に発展し、再生可能エネルギーの主要分野であるバイオ液体燃料はますます重要視されるに違いない。
中国の計画では、今後エタノールガソリンの普及拡大をより一層進め、既存のバイオ液体燃料メーカーを中心に地域的なバイオ液体燃料生産グループ3〜5社を形成することになる。
河南天冠集団の張暁陽会長の予測によると、第11次5ヵ年規画期に全国のバイオ液体燃料生産能力は500万トンに達し、うちエタノール燃料の生産能力は400万トン以上となる。また、2020年にバイオ液体燃料は1,500〜2,300万トンに達し、全国の液体燃料総量の20%を占めるだろう。
今後は自然界で最も豊かな再生可能資源である植物繊維質を原料とすることで、エタノール製品は無尽蔵の資源を活用できることになる。毎年全国で生じる農業廃棄物の半分をエタノール燃料に転換するだけでも、その生産量は全国ガソリン消費量の1.2倍を上回ることになる。また、遺伝子技術など現代的科学技術がエタノールの研究分野にも適用されるようになり、セルロース系エタノールの生産技術は、今後ますます改善され、産業化の条件が次第に整うだろう。
国際協力によって相互補完を実現
日増しに枯渇する石油資源の代わりにバイオ液体燃料を発展させることは世界各国が共同で負うべき責任である。多くのエネルギー需要国はそれぞれの研究領域で一定の成果を上げている。中国は国際間の交流と協力を強化し、相互補完と共同開発を進め、特に以下に述べる分野で協力を強化して、産業の発展を加速させなければならない。
(1) エネルギー作物分野での協力
中国は甘コーリャン、脱毒甘薯、高デンプントウモロコシなどの栽培ではノウハウと技術を蓄積しているが、今後は高生産エネルギー作物に関する技術協力パートナーを見つけて、単位面積当たりの生産量を高めなければならない。
(2) セルロース系エタノール産業化技術の協力
セルロース系エタノールは今後、バイオ液体燃料の主流になる。国外の多くの研究機関や企業はセルロース系エタノールの産業化に力を入れている。中国は国際間における相互補完を強化し、繊維質の含有量の多い植物の遺伝子改良、高効率・低コストの繊維質、半繊維質抽出技術などの分野で協力を展開して、セルロース系エタノールの産業化を速やかに実現しなければならない。
(3) デンプン質によるエタノールの直接生産、エタノール膜法脱水、酵母利用等の面での研究協力
これらの分野では日本が急速な進展を遂げている。技術協力の方式によって、エタノール生産におけるエネルギー消費を引き下げるよう力を合わせなければならない。
(4) バイオエネルギー産業から派生するバイオ化学分野の技術協力
エタノールによる酸素製造、エタノールを燃料とする燃料電池、微生物を利用した油脂、バイオマス合成液体燃料など様々な分野でバイオエネルギー産業の連鎖を広げていく。
技術以外でも、資本、マネジメントなどの分野で幅広く国際協力を展開する。
(中国食品産業網 8月28日)