困難に直面する広東のLNG発電 問題と対策 新華網 彭勇 趙旭 中国各地でLNG発電所の建設がブームとなる一方で、国際天然ガス価格の高騰や中国国内への供給不足の問題が深刻化している。 燃料不足に直面する広東のLNG発電所 中国で初めてLNGを導入した広東省のLNG発電所はいずれも燃料不足に直面している。広東LNG事業を手がける広東大鵬公司は長期契約に基づきオーストラリアの西北大陸棚(NWS)事業から年間370万トンの天然ガスを輸入し、うち65%はLNG発電所、35%は都市ガスで利用されている。 広東大鵬公司は都市ガス用に優先して天然ガスを供給しており、しかも都市ガス向けの卸売価格は発電所向けよりも1kWh当たり0.04元高いため、資源が逼迫すると、発電所への天然ガス供給を保証することは難しくなる。 深セン市初の天然ガス発電所である深セン能源集団・東部発電所の計画容量は9基×35万kW、2期に分けて建設が進められ、うち第1期は3基のガスコンバインドサイクルユニットになる。設計上の年間発電量は42億kWh。郭志東総経理(社長)によると、東部発電所のLNGはすべて広東大鵬LNG事業から供給される。いわゆる「計画内」供給であり、年間契約量は50.5万トン、設計上の年間有効利用時間数は4,500〜5,000時間になる。しかし、広東大鵬からのLNG供給が十分でないため、年間利用時間は3,000時間程度に止まり、稼働率は60%余りに過ぎない。同発電所は、国際市場から3.7万トンのスポットLNGを調達して、発電の需要を賄うしかない状況である。 広州市内の天然ガス発電所である広州華潤熱電有限公司はすでに運転を停止した。同発電所は大鵬公司との契約がなく、スポットLNGに依存するしかないが、スポットLNGは価格があまりにも高くなった上、今や入手することすら出来ない。 広東大鵬もまたスポットLNGを調達して天然ガス発電所への供給を増やそうとしており、昨年は合計7隻、約73万トンのスポットLNGを輸入し、主に発電所に供給して当時の深刻な電力不足の緩和に一役買った。今年も発電所用と都市ガス用の拡大する需要を賄うため、スポットLNGの調達に努めている。 ガス価格高騰がLNG発電所困窮の主因 しかし、こうした努力にも関わらず、今年の中国国内のLNG供給不足はどうにもならない。広東省電力行政部門の関係者によると、広東省の天然ガス発電ユニットは現在およそ300万kWに上るが、天然ガスの不足や価格高騰のため、その半分が運転を停止している。 主な原因には国際市場におけるLNG価格に大きな変動が生じたことがある。エネルギー消費大国はますますLNGの導入を重視するようになり、国際石油メジャーもLNG業務を新たな収益材料と見なすようになった。こうした様々な原因により、本来安価だったLNG価格の暴騰が生じることになったのである。 広東大鵬公司が供給する契約価格は1.6元/m3、一方、国際平均価格はその6倍以上に当たる10元/m3以上に上っている。また、新規LNG生産事業の延期やインドネシア、エジプト等のLNG輸出抑制策等のため、アジアの今年のLNG価格は80%上昇して、25$/MMBTUになる公算が大きい。 中国では政府の規定に基づきCNPC、SINOPEC、CNOOCの3大石油メジャーが新たなLNG長期契約を模索して対外交渉に当たっているが、国際天然ガス価格が高騰する中で、契約を成立させることは難しく、中国国内のLNG発電所の燃料「飢餓」症にはなかなか即効薬が見当たらない。 もう1つ問題がある。LNG発電所は一般的に規模が小さいため、主にピーク調整の任務を担っている。しかし、ピーク調整任務は設備の老朽化を早め、発電所の経済収益にも影響が及ぶ。前述の深セン東部発電所の郭志東総経理によると、同発電所は毎日ピーク調整発電を行い、発電ユニットは毎日、運転と停止を繰り返して、電力系統の安全に貢献している。しかし、そのため設備が犠牲になり、維持修理コストが増えているのである。国の関連政策においてもピーク調整電力価格に対する助成は未だ具体化されておらず、売電価格も一般の電源と同じである。LNG発電所は自身の経済利益を犠牲にして、電力系統全体の収益を維持することに奉仕せざるを得ないのであり、これでは、LNG発電所の生存と発展を期することが出来ない。 対策建議 環境保護の面から言えば、LNG発電所の建設はすでに世界的な流れになっている。中国の関連計画によると、2020年に東部沿海地区の発電設備容量は5,000万kWになるが、その中で天然ガス発電所を1,000万kW、20%にすることが目標となっている。然るに、パイプラインガスだけでは東部沿海地区の巨大な需要を賄うことは不可能であり、天然ガス発電所の70%、すなわち700万kWはLNGに依存することになる。つまり、中国のLNG発電所には依然として大きな発展の余地があるということである。 こうしたところから、政府並びに関係企業は次の3つの方法を取って、LNG発電所の政策環境の確立と完備を図るべきである。 第1に、LNG発電開発戦略を確定し、国家エネルギーセキュリティ及び総合エネルギー戦略の見地から、あるいは持続可能な発展の見地から、高効率クリーン・エネルギーとしてのLNG輸入の戦略配置を確定し、天然ガス備蓄制度を設け、様々な供給源からの供給やLNGとパイプラインガスの相互補完を実施すべきである。特に沿海発展地区は一次エネルギーが不足する一方、環境のキャパシティが限られるため、一次エネルギー消費の中でLNGの比率を増やし、LNG発電戦略を明確化し、沿海地区におけるLNG発電プロジェクトを推進すべきである。 第2に、LNG発電をめぐる政策措置を具体化し、LNG発電の位置づけを明確にすべきである。LNG発電は今のところ、都市電力供給の主流にはなり得ないが、ピーク調整の必須の手段になり得る。条件を整えた上で、大都市の中心に大型LNGベースロード発電所を建設する。また、売電価格システムを完備し、電源によって異なる性質のサービスが電力価格に反映できるようにする。また、LNG発電に対する財政、課税上のインセンティブを制定する。 第3に、LNG資源の開拓に力を入れる。国際天然ガス価格の高騰が続く中で、天然ガス市場は数年前の買手市場から売手市場に変化した。しかし、LNG市場にはサイクルがあり、世界経済の成長が鈍化すると、LNG需要も低下して、再び買手市場に転換する可能性もある。従って、中国は「総合計画・合理的配置」を前提に、長期的な視点に立って、外国企業との協力を強化し、適当な時機を掴み、あらゆる手立てを尽くしてLNG供給源の拡大を図るべきである。適切な措置を取りさえすれば、中国のLNG発電の発展を大いに推進して、経済と社会の転換を促進することも可能である。 (新華網 10月8日)
困難に直面する広東のLNG発電 問題と対策
新華網 彭勇 趙旭
中国各地でLNG発電所の建設がブームとなる一方で、国際天然ガス価格の高騰や中国国内への供給不足の問題が深刻化している。
燃料不足に直面する広東のLNG発電所
中国で初めてLNGを導入した広東省のLNG発電所はいずれも燃料不足に直面している。広東LNG事業を手がける広東大鵬公司は長期契約に基づきオーストラリアの西北大陸棚(NWS)事業から年間370万トンの天然ガスを輸入し、うち65%はLNG発電所、35%は都市ガスで利用されている。
広東大鵬公司は都市ガス用に優先して天然ガスを供給しており、しかも都市ガス向けの卸売価格は発電所向けよりも1kWh当たり0.04元高いため、資源が逼迫すると、発電所への天然ガス供給を保証することは難しくなる。
深セン市初の天然ガス発電所である深セン能源集団・東部発電所の計画容量は9基×35万kW、2期に分けて建設が進められ、うち第1期は3基のガスコンバインドサイクルユニットになる。設計上の年間発電量は42億kWh。郭志東総経理(社長)によると、東部発電所のLNGはすべて広東大鵬LNG事業から供給される。いわゆる「計画内」供給であり、年間契約量は50.5万トン、設計上の年間有効利用時間数は4,500〜5,000時間になる。しかし、広東大鵬からのLNG供給が十分でないため、年間利用時間は3,000時間程度に止まり、稼働率は60%余りに過ぎない。同発電所は、国際市場から3.7万トンのスポットLNGを調達して、発電の需要を賄うしかない状況である。
広州市内の天然ガス発電所である広州華潤熱電有限公司はすでに運転を停止した。同発電所は大鵬公司との契約がなく、スポットLNGに依存するしかないが、スポットLNGは価格があまりにも高くなった上、今や入手することすら出来ない。
広東大鵬もまたスポットLNGを調達して天然ガス発電所への供給を増やそうとしており、昨年は合計7隻、約73万トンのスポットLNGを輸入し、主に発電所に供給して当時の深刻な電力不足の緩和に一役買った。今年も発電所用と都市ガス用の拡大する需要を賄うため、スポットLNGの調達に努めている。
ガス価格高騰がLNG発電所困窮の主因
しかし、こうした努力にも関わらず、今年の中国国内のLNG供給不足はどうにもならない。広東省電力行政部門の関係者によると、広東省の天然ガス発電ユニットは現在およそ300万kWに上るが、天然ガスの不足や価格高騰のため、その半分が運転を停止している。
主な原因には国際市場におけるLNG価格に大きな変動が生じたことがある。エネルギー消費大国はますますLNGの導入を重視するようになり、国際石油メジャーもLNG業務を新たな収益材料と見なすようになった。こうした様々な原因により、本来安価だったLNG価格の暴騰が生じることになったのである。
広東大鵬公司が供給する契約価格は1.6元/m3、一方、国際平均価格はその6倍以上に当たる10元/m3以上に上っている。また、新規LNG生産事業の延期やインドネシア、エジプト等のLNG輸出抑制策等のため、アジアの今年のLNG価格は80%上昇して、25$/MMBTUになる公算が大きい。
中国では政府の規定に基づきCNPC、SINOPEC、CNOOCの3大石油メジャーが新たなLNG長期契約を模索して対外交渉に当たっているが、国際天然ガス価格が高騰する中で、契約を成立させることは難しく、中国国内のLNG発電所の燃料「飢餓」症にはなかなか即効薬が見当たらない。
もう1つ問題がある。LNG発電所は一般的に規模が小さいため、主にピーク調整の任務を担っている。しかし、ピーク調整任務は設備の老朽化を早め、発電所の経済収益にも影響が及ぶ。前述の深セン東部発電所の郭志東総経理によると、同発電所は毎日ピーク調整発電を行い、発電ユニットは毎日、運転と停止を繰り返して、電力系統の安全に貢献している。しかし、そのため設備が犠牲になり、維持修理コストが増えているのである。国の関連政策においてもピーク調整電力価格に対する助成は未だ具体化されておらず、売電価格も一般の電源と同じである。LNG発電所は自身の経済利益を犠牲にして、電力系統全体の収益を維持することに奉仕せざるを得ないのであり、これでは、LNG発電所の生存と発展を期することが出来ない。
対策建議
環境保護の面から言えば、LNG発電所の建設はすでに世界的な流れになっている。中国の関連計画によると、2020年に東部沿海地区の発電設備容量は5,000万kWになるが、その中で天然ガス発電所を1,000万kW、20%にすることが目標となっている。然るに、パイプラインガスだけでは東部沿海地区の巨大な需要を賄うことは不可能であり、天然ガス発電所の70%、すなわち700万kWはLNGに依存することになる。つまり、中国のLNG発電所には依然として大きな発展の余地があるということである。
こうしたところから、政府並びに関係企業は次の3つの方法を取って、LNG発電所の政策環境の確立と完備を図るべきである。
第1に、LNG発電開発戦略を確定し、国家エネルギーセキュリティ及び総合エネルギー戦略の見地から、あるいは持続可能な発展の見地から、高効率クリーン・エネルギーとしてのLNG輸入の戦略配置を確定し、天然ガス備蓄制度を設け、様々な供給源からの供給やLNGとパイプラインガスの相互補完を実施すべきである。特に沿海発展地区は一次エネルギーが不足する一方、環境のキャパシティが限られるため、一次エネルギー消費の中でLNGの比率を増やし、LNG発電戦略を明確化し、沿海地区におけるLNG発電プロジェクトを推進すべきである。
第2に、LNG発電をめぐる政策措置を具体化し、LNG発電の位置づけを明確にすべきである。LNG発電は今のところ、都市電力供給の主流にはなり得ないが、ピーク調整の必須の手段になり得る。条件を整えた上で、大都市の中心に大型LNGベースロード発電所を建設する。また、売電価格システムを完備し、電源によって異なる性質のサービスが電力価格に反映できるようにする。また、LNG発電に対する財政、課税上のインセンティブを制定する。
第3に、LNG資源の開拓に力を入れる。国際天然ガス価格の高騰が続く中で、天然ガス市場は数年前の買手市場から売手市場に変化した。しかし、LNG市場にはサイクルがあり、世界経済の成長が鈍化すると、LNG需要も低下して、再び買手市場に転換する可能性もある。従って、中国は「総合計画・合理的配置」を前提に、長期的な視点に立って、外国企業との協力を強化し、適当な時機を掴み、あらゆる手立てを尽くしてLNG供給源の拡大を図るべきである。適切な措置を取りさえすれば、中国のLNG発電の発展を大いに推進して、経済と社会の転換を促進することも可能である。
(新華網 10月8日)