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【石油・天然ガス】

広州、深センが天然ガス料金値上げ 背景と影響 (08/10/10)
2008/10/15
中国【石油・天然ガス】

 深セン市の天然ガス料金値上げの動き

 10月8日、深セン市天然ガス料金改定案が公表された。同案によると、住民用ガス料金は現行の3.5元/m3から、3.79〜3.86元/m3に、工商業用は5元/m3に引き上げられる。正式価格は今月16日開催の公聴会で発表される。現行の天然ガス小売価格は、2007年11月から適用されている1年限りの試行料金。間もなく適用期限を迎え、正式価格が決定されることになる。

 広州市の天然ガス料金値上げの動き

 広州市もまた、2007年11月1日から3.45元/m3の天然ガス試行料金を適用していたが、1年以内に改定するとしていた。しかし、広州市物価局筋が8日に明らかにしたところによると、今年11月に広州市の天然ガス試行料金適用期間も終了するが、年内は現行料金を継続することになる。物価安定に関する国の要請に従って、公定価格は出来る限り値上げしないようにする方針である。正式価格は、物価局が公聴会を開いた上で、社会の意見を聴取して再確定することになる。

 天然ガス試行価格適用期間は、低収入家庭、旧紅軍軍人、革命殉職者の遺族、傷痍軍人等を対象に、毎月17m3以内の天然ガスについては40%安い2.07元/m3の優遇料金を適用していた(17m3を超える部分は3.45元/m3の試行料金を適用)。広州市物価局筋によると、貧困家庭のガス料金についても公聴会によって確定する必要があるが、改定案には貧困家庭に対する最大限の優遇措置が盛り込まれることになる。

 広州市民の声

 広州市民に対する意識調査によると、回答者の27%が天然ガスの価格や利便性、品質に不満を抱いていた。記者が何人かの天然ガス利用者を直接取材したところ、天然ガスへの転換によって毎月かかるガス代が著しく増加したとのこと。あるユーザーの場合、これまでガス料金は2.5元/m3で毎月のガス代は40元余りであったのが、昨年天然ガスに転換してから、ガス代は倍以上の80〜90元に増えた。

 関係部門の説明によると、3.45元/m3という住民用天然ガス料金は、石油製都市ガスに比べ0.24元/m3、6.5%安く、さらに発熱量で換算したプロパンガスが7.21元/m3であるのに対し、天然ガスは3.76元/m3安いことになる。つまり、天然ガスはガス量が同じでも発熱量がより大きいことになるが、しかし、多くの市民は、実際の使用において発熱量に換算をしても意味がないと見ている。例えば、広東人はスープを好むが、スープを煮込むのに最低2時間は必要である。然るに、天然ガスに転換したからと言って、スープを煮る火加減を変えるわけにもいかず、結局、ガス代は、増えることはあっても減ることはない。

 因みに、天然ガス転換以前の広州の都市ガスは石油製ガスであり、発熱量は27.22MJ/m3、料金は2.50元/m3、一方、現在の天然ガスの発熱量は40.20MJ/m3で料金は3.45元/m3である。つまり、天然ガスの1m3当たりの発熱量は石油製ガスの1.48倍、一方、天然ガス1m3の現行料金は石油製ガスの1.58倍に当たる。

 国際天然ガス価格高騰の影響

 広州、仏山、東莞、深センはいずれも深セン大鵬ターミナルからの天然ガスを使用しており、天然ガスはオーストラリアから輸入している。オーストラリア側が25年間、既定価格で年間370万トンの天然ガスを深セン大鵬に輸出する長期契約であり、この契約は国際石油価格が1バレル20ドル前後の頃に結ばれたため、契約価格は現在の国際天然ガス価格をはるかに下回っている。

 このように価格が安定しているのにも関わらず、なぜ料金の値上げを急いでいるのか。深センの関係筋によると、都市ガス販売量が急速に伸びており、大鵬公司は、契約による天然ガス供給量では最早深セン市の現在の天然ガス需要を賄うことは出来ない。そのため、国際市場から別途天然ガスを調達することが必要になるが、その価格は相対的に大きな上昇を示している。

 深センと同様にオーストラリアの天然ガスを使用する広州の場合はどうか。広東油気商会燃気部長の荘金栄氏によると、2003年のオーストラリアとの契約はテイク・オア・ペイ契約であり、買い手はたとえガスを売り切ることが出来なくとも所定価格で天然ガスを全量引き取る必要がある。そのため、当初はガスの買い手が付かない状況を恐れて、オーストラリアからの供給量の60%を深セン等の発電所向けに供給することにし、さらに香港や工場用を除いた28%を住民用としたのである。しかし、この供給量では住民用の需要を賄うことは出来ず、結局、国際スポット市場や先物市場から天然ガスを調達することを余儀なくされている。

 荘金栄氏によると、7月の国際天然ガスCIF価格は15$/MMBTUに達し、オーストラリアとの契約価格3.16$/MMBTUの5倍以上に上っている。さらに、9月のスポット天然ガス価格は20ドルに達していると見られる。今年6月までの時点で、オーストラリアとの契約による天然ガスが440.31万トン到着し、大鵬ターミナルからの天然ガス総供給量の85.7%を占めた。一方、国際市場からの天然ガスは73.61万トン、15.3%を占め、割合は小さいものの、国際価格の高騰のため、企業の負担は大きく、その一部は消費者に転嫁されることは避けられない。

 荘金栄氏の指摘によると、住民向け天然ガス料金を定めた当初、3.85元/m3前後と試算していたのは理に適ったことであったが、広州、深センでは普及当初に優遇試行価格を適用した(但し、東莞は当初より試行価格を3.8元/m3とした)。現在、国際天然ガス価格高騰の中、広州が適当な時機に天然ガス料金値上げに踏み切るのは必然の流れであると荘金栄氏は言う。

 (信息時報 10月10日)