2008年、中国の電力業界は、大寒波、地震、石炭価格高騰など幾多の試練に見舞われたが、今度は金融危機の影響に遭遇している。 10月以降、全国の電力使用量と発電量はともに低下し始め、火力発電の年間稼動時間数は5,000時間にまで落ちた。来年はさらなる低下が続くと見られており、1998年のアジア金融危機の際の4,800時間を下回る公算は極めて大きい。 電力需要の低下、インフレ圧力の減退という環境の下で、電力業界は電気料金値上げのチャンスを見出すことが出来ない。それどころか、金融危機の余波で、製造業を救済するため優遇電気料金を打ち出す地方政府もあり、電力企業は新たな試練に直面している。 7、8月に電力業界は電気料金値上げの余地を大きくできるよう、インフレ圧力の減退を期待していた。しかし、実体経済が金融危機の影響を受けるに及んで、今度は電気料金値上げに際して電力使用企業の受入能力や深刻化し始めた経済情勢に対する影響を考慮せざるを得なくなった。このことは、電気料金値上げに踏み切ることの出来ない理由として、CPI上昇を懸念していた頃よりもさらに大きな壁になっている。 一方、電力企業の赤字状態は半年以上も続いてきた上に、金融危機の衝撃が加わった。景気後退の影響で電力需要は低調になった。特に鉄鋼、化学、非鉄金属などエネルギー多消費企業の大幅な減産が進み、重点産業の電力使用量が7月から減少し始め、重工業の電力使用の伸び率は低下を来たしている。今年の電力消費の伸び率は昨年に比べ7ポイント下がる見通しであり、発電設備の稼動時間数は2007年に比べ約300時間減少することになる。 業界筋の推計によると、今年の火力発電事業の赤字は700億元に上る。政府の内需刺激策の波及効果が電力需要に対して現れるのは来年下半期以降になる。現段階で電気料金を引き上げない限り、電力事業の赤字状況が変わることはなく、いずれは困難の極に達するだろう。 電力事業は国民経済の基礎産業であり、業界全体の赤字構造が速やかに転換されなければ、電力事業自体の正常な発展と運営に影響が及び、延いては国民経済の持続可能な発展にも影響が及ぶことになる。発電企業の運営を正常化するためには、石炭価格と電力価格の連動を堅持し、売電価格を適正に引き上げなければならない。しかし、電気料金の値上げは電力消費企業の経営圧力を高め、貧困層の負担を大きくする。当面の経済情勢の下で、社会の負担能力は低下しており、電気料金の値上げはジレンマに直面している。その上、石炭価格が下落傾向にあるため、電気料金値上げはますます難しいものになっている。 一方、電力使用量の回復を図り、経済成長率の低下を阻止するため、各地の政府は次々と電気料金引き下げによって電力需要を牽引するという措置を打ち出している。例えば、11月17日、内蒙古は鉄合金、多結晶シリコンなど7種のエネルギー多消費産業に対する電気料金を1kWh当たり0.08元引き下げ、鉄鋼や高度加工等に対する料金を0.045元引き下げた。西部地区の他の省も次々とこれに倣い、寧夏は工業用電気料金を1kWh当たり0.03元、雲南は0.06元下げた。経済成長の鈍化と需要低迷の中で、企業の操業コストを引き下げようというものである。しかし、こうしたやり方はますます電力事業の損失を大きくすることになり、石炭価格下落による利益も消し飛ばされてしまう。電力企業の見通しは暗くなるばかりである。また、全体的な経済構造から見ると、旧来の生産構造維持を前提に企業を救済することは意味がない。重要なのは、新たな成長の内容を盛り込むことである。 電気料金の低価格据え置きと電力企業の赤字の長期化により、リスクは量的なものに止まらず、質的な変化が累積している。時間の推移により、その種の累積した影響は早晩浮上するだろう。 (中国電力新聞網 12月26日)
2008年、中国の電力業界は、大寒波、地震、石炭価格高騰など幾多の試練に見舞われたが、今度は金融危機の影響に遭遇している。
10月以降、全国の電力使用量と発電量はともに低下し始め、火力発電の年間稼動時間数は5,000時間にまで落ちた。来年はさらなる低下が続くと見られており、1998年のアジア金融危機の際の4,800時間を下回る公算は極めて大きい。
電力需要の低下、インフレ圧力の減退という環境の下で、電力業界は電気料金値上げのチャンスを見出すことが出来ない。それどころか、金融危機の余波で、製造業を救済するため優遇電気料金を打ち出す地方政府もあり、電力企業は新たな試練に直面している。
7、8月に電力業界は電気料金値上げの余地を大きくできるよう、インフレ圧力の減退を期待していた。しかし、実体経済が金融危機の影響を受けるに及んで、今度は電気料金値上げに際して電力使用企業の受入能力や深刻化し始めた経済情勢に対する影響を考慮せざるを得なくなった。このことは、電気料金値上げに踏み切ることの出来ない理由として、CPI上昇を懸念していた頃よりもさらに大きな壁になっている。
一方、電力企業の赤字状態は半年以上も続いてきた上に、金融危機の衝撃が加わった。景気後退の影響で電力需要は低調になった。特に鉄鋼、化学、非鉄金属などエネルギー多消費企業の大幅な減産が進み、重点産業の電力使用量が7月から減少し始め、重工業の電力使用の伸び率は低下を来たしている。今年の電力消費の伸び率は昨年に比べ7ポイント下がる見通しであり、発電設備の稼動時間数は2007年に比べ約300時間減少することになる。
業界筋の推計によると、今年の火力発電事業の赤字は700億元に上る。政府の内需刺激策の波及効果が電力需要に対して現れるのは来年下半期以降になる。現段階で電気料金を引き上げない限り、電力事業の赤字状況が変わることはなく、いずれは困難の極に達するだろう。
電力事業は国民経済の基礎産業であり、業界全体の赤字構造が速やかに転換されなければ、電力事業自体の正常な発展と運営に影響が及び、延いては国民経済の持続可能な発展にも影響が及ぶことになる。発電企業の運営を正常化するためには、石炭価格と電力価格の連動を堅持し、売電価格を適正に引き上げなければならない。しかし、電気料金の値上げは電力消費企業の経営圧力を高め、貧困層の負担を大きくする。当面の経済情勢の下で、社会の負担能力は低下しており、電気料金の値上げはジレンマに直面している。その上、石炭価格が下落傾向にあるため、電気料金値上げはますます難しいものになっている。
一方、電力使用量の回復を図り、経済成長率の低下を阻止するため、各地の政府は次々と電気料金引き下げによって電力需要を牽引するという措置を打ち出している。例えば、11月17日、内蒙古は鉄合金、多結晶シリコンなど7種のエネルギー多消費産業に対する電気料金を1kWh当たり0.08元引き下げ、鉄鋼や高度加工等に対する料金を0.045元引き下げた。西部地区の他の省も次々とこれに倣い、寧夏は工業用電気料金を1kWh当たり0.03元、雲南は0.06元下げた。経済成長の鈍化と需要低迷の中で、企業の操業コストを引き下げようというものである。しかし、こうしたやり方はますます電力事業の損失を大きくすることになり、石炭価格下落による利益も消し飛ばされてしまう。電力企業の見通しは暗くなるばかりである。また、全体的な経済構造から見ると、旧来の生産構造維持を前提に企業を救済することは意味がない。重要なのは、新たな成長の内容を盛り込むことである。
電気料金の低価格据え置きと電力企業の赤字の長期化により、リスクは量的なものに止まらず、質的な変化が累積している。時間の推移により、その種の累積した影響は早晩浮上するだろう。
(中国電力新聞網 12月26日)