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【石油・天然ガス】

中国 今後3年間で沿海部に9大製油基地完成も石油製品需要減の懸念 内需牽引効果は? (09/02/25)
2009/3/2
中国【石油・天然ガス】

 先頃、打ち出された石油化学産業調整振興計画は、国家発展改革委員会産業協調司が中心になって策定したものであるが、それとは別に、国家能源局も製油産業について計画を立案していると中国石油化学工業協会の幹部が明らかにした。

 上海、寧波、南京の3,000万トン級超大型製油基地はすでに能源局の計画に盛り込まれているとのこと。今後3年内に、輸入原油の精製を行う9大製油基地が中国沿海部に出現することになる。

 能源局の今後3年間の石油・天然ガス計画において、大型製油基地建設計画は次の3つの要素からなる。第1に、鎮海、茂名等の既存の製油所の改造・拡張プロジェクト。第2に、四川、広州、泉州、上海で進行中の新規大型製油所建設。第3に、ベネズエラ、カタール、ロシア等からの原油を精製する合弁大型製油所の新規建設。

 中国石油化学工業協会の幹部によると、最終的には、上海、寧波、南京に精製規模3,000万トン超、茂名、広州、恵州、泉州、天津、曹妃甸に2,000万トン超の大型製油基地合計9ヶ所が完成する。

 但し、経済不況というリスクの下で、大型製油事業を集中して立ち上げることはもとより内需牽引を可能にするものの、石油製品需要減少のチャレンジにも直面することになる。

 ●長江デルタに3大基地が集中

 易貿資訊の研究員は「金融危機の影響が心配だ。建設中の一部プロジェクトが停止される可能性もある。能源局の計画は相当大風呂敷だ。3,000万トン級の製油基地計画を一気に3ヶ所も打ち上げており、これまで定まっていなかったプロジェクトについても、極めて前向きな姿勢で明確に決めてしまった」と言う。

 例えば、寧波にある鎮海石化の場合、中国石油化工 (SINOPEC)は2008年5月、鎮海石化の原油精製能力を2009年9月までに現在の2,000万トンから2,300万トンに増やすよう決定した。当時、業界筋は、鎮海石化の次の目標は3,000万トンになると予想していた。

 一方、南京と上海については、業界筋によると、製油基地は1件の製油事業だけではなく、いくつかの事業から合わせて3,000万トンの生産能力を形作る可能性が高いとのこと。

 2008年10月、SINOPECと上海市政府は協力基本合意書に調印したが、それには上海化学工業区における製油一体化事業についての協力が盛り込まれた。同事業の規模や発展改革委員会の許認可状況については明らかにされていないが、東方油気網の鍾健樹氏によると、同事業は上海石化、高橋石化とは別の事業になり、上海市政府の同事業に対する発言権は、上海石化、高橋石化に対するものよりも大きくなる。前出の中国石油化学工業協会幹部によると、上海石化、高橋石化の精製能力に、上海化学工業区におけるSINOPECの新規製油事業を加えると、上海全体で製油能力は年4,000万トンになる可能性もある。

 南京については、金陵石化の2007年の原油精製量が1,073万トン、揚子石化の能力は約1,000万トンに過ぎない。残りの1,000万トンをどこから持って来るかは、今のところ不透明である。

 ●SINOPECが勝ち組に

能源局による今後3年間の製油基地建設計画で最も大きな利益を得るのは東南沿海である。東南沿海の製油能力は今のとこと全国の50%足らずに過ぎない。将来的に中国の新規原油供給の大部分は輸入原油に依存することになり、一方、東南沿海地区は石油製品需要の最も大きい地域である。中国の石油対外依存度はほぼ51%になっており、国土資源部の予測によると、探査の強化と経済成長パターンの転換を進めない限り、2020年の対外依存度は60%に上昇することになる。中国石油化学工業協会のデータによると、2008年の中国の原油生産量はほぼ1.9億トン、前年同期比2.3%になったが、同年の原油輸入量は1.79億トンに上り、前年に比べ9.6%増加した。

 中国の新たな製油基地計画によって最大の受益者になるのはSINOPECである。それは、東南沿海部がもともとSINOPECの勢力範囲だからである。計画に上っている事業計画のうち、四川はペトロチャイナ、恵州は中国海洋石油 (CNOOC)に属しているが、それ以外の広州、上海、寧波、茂名はいずれもSINOPECの傘下にあり、また、泉州、天津、曹妃甸の各事業もSINOPECに落着する可能性が極めて高い。

 ●なお残る懸念

 但し、このような多くの石油化学プロジェクトの着工によって、SINOPECの負債率はますます高くなる。張国宝能源局長によると、SINOPECの負債率は60%以上に上っており、資金繰りの逼迫、銀行の貸し渋りなどで、新規投資事業計画を進めようとしても資金が続かなくなる恐れがある。SINOPECは、国庫からの巨額の助成がなかったなら、2008年上半期には上場以来初の赤字になっていただろう。実際、2008年上半期の製油部門の赤字は460億元に上っていた。

 SINOPECの資金的圧迫は、上流事業の拡張計画にも起因している。SINOPECは近年、上流資源開発を強化しようとしており、海外の石油・天然ガス資源の買収交渉を再三にわたって進めている。

 結局、中国の製油事業全体から見ても、精製能力の拡張には懸念材料が付きまとう。特に現在の経済情勢の下では、需要拡大の方が生産能力拡張よりも重要であると中国能源網CEOの韓暁平氏は言う。氏は、市場の需要を直接増やすためには、製油事業の建設によって内需を拡大するよりも、中小企業に対する支援を強化する方が効果的であると指摘している。

 (第一財経日報 2月25日)