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【エネルギー全般・政治経済】

【論説】中露原油パイプライン着工の背景にロシアの経済危機 (09/05/11)
2009/5/12
中国【エネルギー全般・政治経済】

 中露原油パイプライン着工の背景には国際金融危機がある。これまで同パイプラインの着工が遅れていた主な原因は価格をめぐる中露間の隔たりにあったが、今回ロシア側が中露パイプラインに積極的な態度を示すようになったことは、ロシアの当面の経済情勢に関連している。

 巨額の債務に直面するロシア
 
 金融危機と石油価格下落との二重の打撃により、ロシア経済は1998年以来最も深刻な景気後退を経験している。ロシア経済発展省の発表によると、今年第1四半期のロシアのGDPは前年同期比9.5%のマイナス成長になった。また、IMFが4月22日に発表したレポートは、ロシアの2009年のGDPがマイナス6%になるとの予想を示しており、ロシア経済発展省も成長率の予測をマイナス6%に下方修正した。

 ロシアは経済回復のため巨額の資金を要するが、同国の外貨準備は急速に減少している。昨年8月8日のピークの5,975億ドルから、今年4月24日には3,806億ドルに減少した。一方、財政赤字は急速に膨らみ、今年はGDPの7.4%に当たる3兆ルーブルもの財政赤字になる見通しである。

 ロシアの大型企業も莫大な債務に喘いでいる。「コメルサント」紙によると、ロスネフチの債務は212億ドル、トランスネフチの債務は77億ドルに上っており、しかも、その半分は短期債務である。その上、石油価格の下落により、ロシアのエネルギー企業は泣きっ面に蜂である。ロスネフチの昨年の純益は1,414億ルーブルで、2007年に比べ12.8%の減益になった。さらに、昨年第4四半期は650億ルーブルもの巨額の欠損を出した。

 地域協力はロシアにとっても急務

 中露原油パイプラインの着工、特に中国からの融資を獲得することは、ロシアにとって焦眉の急である。中露間の合意により、ロスネフチは中国側から150億ドル、トランスネフチは100億ドルの融資を、石油供給を担保にして受けることになった。

 その上、当面の国際金融危機が続く中、石油分野の協力に関する中露協定は中露経済貿易関係の発展にとっても重要な意義を備えている。中露貿易は昨年第4四半期以来、国際金融危機の深刻化に伴って大幅に減少している。今年1月、ロシアの対中貿易額は輸出、輸入とも10年ぶりのマイナスになり、輸出は27%、輸入は51%減少した。

 ロシア大統領メドベージェフは昨年11月、APECにおいて、ロシアは世界最大のエネルギー供給国の1つとして、アジア・太平洋地域のエネルギーセキュリティシステムの確立を希望するとし、こうしたシステムによって、エネルギー消費国側は輸入先の多元化を実現できるとともに、エネルギーの確実でスムーズな供給を確保できるとした。また、メ大統領は、ロシアが実際の需給関係に基づく安定的で予見可能な石油・天然ガス価格の確立を支持するとした。

 現在、ロシアの石油・天然ガスパイプラインのほとんどは西側へ通じているが、急速に経済発展が続き巨大なエネルギー需要を備えるアジア・太平洋地区、とりわけ中国が、ロシアのエネルギー分野におけるパートナーになることは、ロシアにとって必要性が極めて高い。

 さらに、ロシア極東地域の経済にとっても、アムール州のオレグ・コジェミャコ知事が表明しているように、中露原油パイプライン建設事業は現地の雇用創出や税収増加の面で意義が大きい。ロシアは、チャヤンダ油田も含む東シベリア油田の開発を前倒しで進め、エネルギーインフラへの投資を拡大することを決定しており、また、原油輸出税の減免も検討している。それによってもロシアの企業と地方に大きな利益がもたらされるだろう。

 (中国証券報 5月11日)