中国東北エネルギールートが開くアジア・太平洋のマルチ・ウィン・ウィン 中国工程院 院士 胡見義(ロシアに長年留学し、中露エネルギー協力を見守ってきた専門家) 中露原油パイプライン着工により、中国東北がロシア極東から陸路で原油を輸入するパイプライン基幹ルートが開通することになった。 中国の原油対外依存度は2020年には60%に上昇すると予想される中、石油資源供給能力を高めることは中国経済の長期的な健全安定発展を確保する戦略措置の1つである。中国にとって、4種類の戦略資源、すなわち食糧、水、石油、情報のうち1つでも問題が生じれば、中国経済全体に影響が及ぶことは間違いない。 1995年以降、中国がいくつかの戦略研究を展開する中で1つの共通認識が生まれた。つまり、中国の石油対外依存度は次第に上昇し、石油輸入を検討することが不可欠になるということである。 中国は海路及び陸路からの石油輸入を検討した。当時、湾岸戦争は世界のエネルギー供給に極めて大きな脅威をもたらし、中国は石油危機や石油価格の大幅な変動を経験することになった。中国は、世界の資源地帯や輸送方式、輸送ルートを分析した結果、ロシアと中央アジアからの石油輸入が重要な戦略指針になるとの結論を出した。 1990年代中頃、中国が石油輸出国から純輸入国に転じた当時は未だ輸入量が極めて少なかった。しかし、先見の明を有する石油指導層は計画部門に対し、ロシアからの石油輸入の研究に着手するよう命令した。その後10数年の紆余曲折を経て、今回中露両国は新しいエネルギールートを開くことになったのである。当面は年間供給能力1,500万トンに過ぎないが、原油輸入の海上ルートに対する過度の依存を一定程度軽減することは間違いない。 さらに、中露原油パイプラインは、中国が4大戦略石油輸入ルートの建設に向けて大きな一歩を踏み出したことを示している。これにより、中国は石油供給のセキュリティを全体的にレベルアップし、石油供給源の多様化戦略が強力に推進される。 中露原油パイプラインによる年間供給量を1,500万トンから3,000万トンに増やすには資源の裏付けが必要である。西シベリアの油田地帯を基礎に、東シベリアの油・ガス田が参画することになるが、現在の東シベリア油田開発ペースでは需要に追いつくことは出来ない。しかも、東シベリアで使用する石油も西シベリアから運ばれることを考慮に入れると、3,000万トンの供給の内訳は、東シベリア1,000万トン、西シベリア2,000万トンになる。これらの原油は中国の既存のパイプライン網によって南へ輸送され、中国のその他の地区のエネルギーセキュリティが確保される。 一方、ロシアの昨年の石油生産量は4.8億トン、国内消費量は1.6億トンで、輸出は3億トン。輸出先はこれまですべて欧州であった。そのため、中露原油パイプラインは過去10数年、大きな進展がなく、特にパイプラインのルートをめぐる紛糾が続いてきた。しかし、情勢の変化に伴って、ロシアは石油輸出先を多様化することが必要と認識するに到り、エネルギー協力が加速され、最終的にESPOパイプライン(東シベリア−太平洋パイプライン)及び中露原油パイプラインが確定した。このパイプラインはロシアにとっても意義が大きく、ロシアはアジア・太平洋に向け新たな市場を開くことになる。また、ロシアのアジアに対するエネルギー外交にとって有利になるだけでなく、欧州市場に対しても非常に重要なカードになる。 世界金融危機の影響が石油需要にも及ぶ経済情勢の中で、ロシアの対中原油輸出は、ロシアの危機対応策を促し、景気を刺激する上で役立つ。また、巨額のパイプライン建設投資は中露両国の地域経済の成長と雇用創出を促進するだろう。 (中国石油新聞中心 5月19日)
中国東北エネルギールートが開くアジア・太平洋のマルチ・ウィン・ウィン
中国工程院 院士 胡見義(ロシアに長年留学し、中露エネルギー協力を見守ってきた専門家)
中露原油パイプライン着工により、中国東北がロシア極東から陸路で原油を輸入するパイプライン基幹ルートが開通することになった。
中国の原油対外依存度は2020年には60%に上昇すると予想される中、石油資源供給能力を高めることは中国経済の長期的な健全安定発展を確保する戦略措置の1つである。中国にとって、4種類の戦略資源、すなわち食糧、水、石油、情報のうち1つでも問題が生じれば、中国経済全体に影響が及ぶことは間違いない。
1995年以降、中国がいくつかの戦略研究を展開する中で1つの共通認識が生まれた。つまり、中国の石油対外依存度は次第に上昇し、石油輸入を検討することが不可欠になるということである。
中国は海路及び陸路からの石油輸入を検討した。当時、湾岸戦争は世界のエネルギー供給に極めて大きな脅威をもたらし、中国は石油危機や石油価格の大幅な変動を経験することになった。中国は、世界の資源地帯や輸送方式、輸送ルートを分析した結果、ロシアと中央アジアからの石油輸入が重要な戦略指針になるとの結論を出した。
1990年代中頃、中国が石油輸出国から純輸入国に転じた当時は未だ輸入量が極めて少なかった。しかし、先見の明を有する石油指導層は計画部門に対し、ロシアからの石油輸入の研究に着手するよう命令した。その後10数年の紆余曲折を経て、今回中露両国は新しいエネルギールートを開くことになったのである。当面は年間供給能力1,500万トンに過ぎないが、原油輸入の海上ルートに対する過度の依存を一定程度軽減することは間違いない。
さらに、中露原油パイプラインは、中国が4大戦略石油輸入ルートの建設に向けて大きな一歩を踏み出したことを示している。これにより、中国は石油供給のセキュリティを全体的にレベルアップし、石油供給源の多様化戦略が強力に推進される。
中露原油パイプラインによる年間供給量を1,500万トンから3,000万トンに増やすには資源の裏付けが必要である。西シベリアの油田地帯を基礎に、東シベリアの油・ガス田が参画することになるが、現在の東シベリア油田開発ペースでは需要に追いつくことは出来ない。しかも、東シベリアで使用する石油も西シベリアから運ばれることを考慮に入れると、3,000万トンの供給の内訳は、東シベリア1,000万トン、西シベリア2,000万トンになる。これらの原油は中国の既存のパイプライン網によって南へ輸送され、中国のその他の地区のエネルギーセキュリティが確保される。
一方、ロシアの昨年の石油生産量は4.8億トン、国内消費量は1.6億トンで、輸出は3億トン。輸出先はこれまですべて欧州であった。そのため、中露原油パイプラインは過去10数年、大きな進展がなく、特にパイプラインのルートをめぐる紛糾が続いてきた。しかし、情勢の変化に伴って、ロシアは石油輸出先を多様化することが必要と認識するに到り、エネルギー協力が加速され、最終的にESPOパイプライン(東シベリア−太平洋パイプライン)及び中露原油パイプラインが確定した。このパイプラインはロシアにとっても意義が大きく、ロシアはアジア・太平洋に向け新たな市場を開くことになる。また、ロシアのアジアに対するエネルギー外交にとって有利になるだけでなく、欧州市場に対しても非常に重要なカードになる。
世界金融危機の影響が石油需要にも及ぶ経済情勢の中で、ロシアの対中原油輸出は、ロシアの危機対応策を促し、景気を刺激する上で役立つ。また、巨額のパイプライン建設投資は中露両国の地域経済の成長と雇用創出を促進するだろう。
(中国石油新聞中心 5月19日)