ロシアの天然ガス会社ガスプロムは6月1日、第2四半期におけるトルクメニスタンからの天然ガス輸入を80%削減するかまたは価格を40%引き下げるようトルクメニスタンに提議したことを明らかにした。ガスプロムの提案に基づく場合、中央アジア・中央ガスパイプラインの輸送量は昨年の日量1.15億m3から今年第2四半期には2,700万m3に縮小される。 これより先、トルクメニスタンからロシアへの天然ガス輸出ルートである中央アジア・中央ガスパイプラインに爆発事故が発生し輸送が中断した。5月末になってパイプラインは復旧したが、天然ガス輸送は未だに再開されていない。 パイプライン爆発の原因について、トルクメニスタンがガスプロムの天然ガス輸入の急減が原因であるとして非難しているのに対し、ガスプロムはこれを否定し、トルクメニスタンの天然ガス輸送指令部局の過失が原因としている。 ガスプロム側によると、同社がトルクメニスタンから輸入する天然ガスは主にウクライナに販売されるが、ウクライナの天然ガス需要はこれまで年間400億m3であったのが、220億m3に減少し、その結果、今年第1四半期におけるガスプロムからウクライナへの天然ガス輸出は39%減少した。また、ロシア国内の天然ガス消費量も5%減少したとのこと。今年のウクライナ向け天然ガス輸出量は前年の半分以下になる見通しである。 しかし、トルクメニスタン側の主張では、実際にはトルクメニスタンの天然ガスは主にEU向けに販売されており、ロシアとトルクメニスタンが昨年末に調印した合意文書によると、ロシアがトルクメニスタンから輸入する天然ガスは欧州の価格フォーミュラに基づいて計算することになっている。つまり、トルクメニスタンの天然ガスはEU諸国に販売しないと採算が取れないが、ロシアの天然ガスの主要市場であるEUの輸入量が激減しているため、ガスプロムのEU向け販売価格が暴落している。 また、価格をめぐっては、ガスプロムとトルクメニスタンが2003年に調印した25年間の天然ガス売買契約によると、ガスプロムがトルクメニスタンから輸入する天然ガス価格を今年から1,000m3当たり340USドルに引き上げることになっている。これは昨年の価格の3.4倍に当たる。 こうした問題をめぐってロシアとトルクメニスタンの交渉は紛糾しており、中央アジア・中央パイプライン再開の目途は立っていない。 しかし、トルクメニスタンにとってロシアは最大の天然ガス輸出先である。ロシアのエネルギー相シマトコは6月1日、ガスプロムとトルクメニスタン国営石油ガス公社トルクメンネフチェがパイプライン爆発事故をめぐる問題で和解するよう希望すると述べ、さらに、EUへ直接天然ガスを輸出するルートがない限り、トルクメニスタンにとって和解以外に選択の余地はないと指摘した。実際、2008年のトルクメニスタンの天然ガス生産量は705億m3、うち470億m3が輸出に当てられたが、その中の423億m3をガスプロムが購入したとのこと。トルクメニスタンは今年の天然ガス生産量を750億m3、輸出量を510億m3に引き上げるよう計画しているが、現状では実現は難しい。 一方、ガスプロムのレポートによると、同社の今年第1四半期の天然ガス輸出は30%減少し、特に欧州向けは40%も減少した。同時に、中央アジア諸国の天然ガス輸出価格の大幅な上昇によってコストが嵩み、ガスプロムの第1四半期の収益は80%もの減少になった。加えて、欧州市場におけるガスプロムのシェアも減り始めている。EUの統計によると、昨年のEUの天然ガス輸入量は5%増加したが、ガスプロムのシェアは逆に低下している。 欧州の需要家は今年第3四半期にはロシアの天然ガス価格が大幅に下落すると観測しており、そのためガスプロムからの天然ガス輸入に乗り気でなく、ノルウェーからの天然ガスやアフリカのLNGの利用を増やそうとしている。 (第一財経日報 6月3日)
ロシアの天然ガス会社ガスプロムは6月1日、第2四半期におけるトルクメニスタンからの天然ガス輸入を80%削減するかまたは価格を40%引き下げるようトルクメニスタンに提議したことを明らかにした。ガスプロムの提案に基づく場合、中央アジア・中央ガスパイプラインの輸送量は昨年の日量1.15億m3から今年第2四半期には2,700万m3に縮小される。
これより先、トルクメニスタンからロシアへの天然ガス輸出ルートである中央アジア・中央ガスパイプラインに爆発事故が発生し輸送が中断した。5月末になってパイプラインは復旧したが、天然ガス輸送は未だに再開されていない。
パイプライン爆発の原因について、トルクメニスタンがガスプロムの天然ガス輸入の急減が原因であるとして非難しているのに対し、ガスプロムはこれを否定し、トルクメニスタンの天然ガス輸送指令部局の過失が原因としている。
ガスプロム側によると、同社がトルクメニスタンから輸入する天然ガスは主にウクライナに販売されるが、ウクライナの天然ガス需要はこれまで年間400億m3であったのが、220億m3に減少し、その結果、今年第1四半期におけるガスプロムからウクライナへの天然ガス輸出は39%減少した。また、ロシア国内の天然ガス消費量も5%減少したとのこと。今年のウクライナ向け天然ガス輸出量は前年の半分以下になる見通しである。
しかし、トルクメニスタン側の主張では、実際にはトルクメニスタンの天然ガスは主にEU向けに販売されており、ロシアとトルクメニスタンが昨年末に調印した合意文書によると、ロシアがトルクメニスタンから輸入する天然ガスは欧州の価格フォーミュラに基づいて計算することになっている。つまり、トルクメニスタンの天然ガスはEU諸国に販売しないと採算が取れないが、ロシアの天然ガスの主要市場であるEUの輸入量が激減しているため、ガスプロムのEU向け販売価格が暴落している。
また、価格をめぐっては、ガスプロムとトルクメニスタンが2003年に調印した25年間の天然ガス売買契約によると、ガスプロムがトルクメニスタンから輸入する天然ガス価格を今年から1,000m3当たり340USドルに引き上げることになっている。これは昨年の価格の3.4倍に当たる。
こうした問題をめぐってロシアとトルクメニスタンの交渉は紛糾しており、中央アジア・中央パイプライン再開の目途は立っていない。
しかし、トルクメニスタンにとってロシアは最大の天然ガス輸出先である。ロシアのエネルギー相シマトコは6月1日、ガスプロムとトルクメニスタン国営石油ガス公社トルクメンネフチェがパイプライン爆発事故をめぐる問題で和解するよう希望すると述べ、さらに、EUへ直接天然ガスを輸出するルートがない限り、トルクメニスタンにとって和解以外に選択の余地はないと指摘した。実際、2008年のトルクメニスタンの天然ガス生産量は705億m3、うち470億m3が輸出に当てられたが、その中の423億m3をガスプロムが購入したとのこと。トルクメニスタンは今年の天然ガス生産量を750億m3、輸出量を510億m3に引き上げるよう計画しているが、現状では実現は難しい。
一方、ガスプロムのレポートによると、同社の今年第1四半期の天然ガス輸出は30%減少し、特に欧州向けは40%も減少した。同時に、中央アジア諸国の天然ガス輸出価格の大幅な上昇によってコストが嵩み、ガスプロムの第1四半期の収益は80%もの減少になった。加えて、欧州市場におけるガスプロムのシェアも減り始めている。EUの統計によると、昨年のEUの天然ガス輸入量は5%増加したが、ガスプロムのシェアは逆に低下している。
欧州の需要家は今年第3四半期にはロシアの天然ガス価格が大幅に下落すると観測しており、そのためガスプロムからの天然ガス輸入に乗り気でなく、ノルウェーからの天然ガスやアフリカのLNGの利用を増やそうとしている。
(第一財経日報 6月3日)