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中国
【エネルギー全般・政治経済】

中国人は環境のためにハマーを省エネ車に変えられるのか…米メディアの視点 (09/06/10)
2009/6/10
中国【エネルギー全般・政治経済】

 GM傘下のハマーが四川騰中重工へ売却されることになった。中国企業が米国の有名な自動車ブランドを手にするのはこれが初めてである。今後、「悍馬」(ハマーの中国名)は「漢馬」(中国の馬の意・漢と悍は同音)になり、最早中国ブランドになる。

 今回の買収についてオバマ政府は歓迎の意を示している。これは米政府の2大目標、すなわちGMから低収益資産を切り離すことと、米国の雇用を確保することに合致しているからである。ホワイトハウスの報道官は、3,000人の職工と100社余りの販売会社にとって今回の買収は朗報であるとした。

 米国のメディアもこの買収劇に注目したが、好意的、否定的な見方が錯綜し、複雑な心情が吐露された。

 例えば、『ワシントンポスト』紙は「ハマーの新しい主人、中国は節制のない新大陸」と題する記事で、ガソリン大食い野郎と悪名高いハマーは車体が大きく、エンジンが強いが燃費が極めて悪く、これほど嘲られる車は他にないとこき下ろした上で、アンチ環境保護の代名詞になっているハマーは米国自動車産業の失敗の象徴であり、環境保護運動家の攻撃の的になっているとした。

 実際、アンチハマーブームの結果、ハマーの販売台数は激減し、昨年1〜5月期は1万4,000台であったのが、今年1〜5月には5,000台にまで落ち込んだ。

 ハマーはGMの負の遺産であり、同社の破産と再編に当たって、ハマーが見捨てられるのも必然の成り行きである。『ワシントンポスト』紙は、ハマーはGMのブランドイメージを下げており、ハマーを一刀両断に切り離すことはGMの「新しくポジティブなイメージ作り」にとって効果があり、今後のGMの省エネ型自動車開発やトヨタとの競争においても有利に働くとしている。

 問題はハマーが中国企業によって再生できるかどうかである。エコノミストのDean A. DeRosa氏は、騰中重工がハマーを買収した理由として、中国市場は広大であり、セレブや金持ちにとってハマーは地位の象徴になるからとしているが、しかし、長期的には高燃費のハマーが生き残れるかは疑問であるとしている。

 米国のメディアやネチズンの大多数は、差し当たりキャッシュが必要なGMにとって今回のハマー売却はわりの良い取引であると見なしているが、しかし、反対の声も少なからずある。

 『ニューヨークタイムズ』は、「今回の買収には軍用車は含まれるのか」というネチズンの疑問の声を掲載した。一部の「センシティブな」アメリカ人にとっては、中国との取引はすべて米国の安全保障に危害を及ぼすものになる。ハマーは本来軍用アウトドア車であったことから、オバマ政府は安全保障面での評価を行い、「センシティブな技術が中国へ漏洩しないように保証すべき」との指摘もある。

 米国の論壇では、討論が異常なまでに熱を帯びている。「中国人がハマーを買うのは、消費者の米国ブランドに対する盲目的な崇拝が推進力になっている」と分析するネチズンや、「ハマーのような車を買収するのはすべて彼らの利己主義から発したものだ。彼らは我々の天然資源を浪費する。ハマーのような大きい車を走らせるのは他の車や歩行者を威嚇するためだ」と憤慨する者もいる。

 (経済参考報 6月10日)