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【エネルギー全般・政治経済】

中国の鉱産物輸出税に米欧がWTO提訴の構え 資源輸出の開放迫る (09/06/15)
2009/6/16
中国【エネルギー全般・政治経済】

 反ダンピング、反補助金に続き、米欧は再び中国に対し新たな保護貿易の大鉈を振るっている。

 「ウォール・ストリート・ジャーナル」12日付報道によると、EUと米国は、中国が原材料輸出に課税して資源を売り惜しみし、その結果、中国の化学工業や鉄鋼等の企業が不公平な優越性を得るとともに他の資源輸出国に対しても悪しき先例を作っているとして、WTOに提訴する構えである。EUと米国はすでに約20種類に上る原材料リストを作成し、今月中にもWTOに提訴する見通し。中国がアルミや鉄鋼等の生産に用いる鉱石の欧州向け出荷量は今年第1四半期に90%以上も減少したとのこと。「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、中国以外にも、ロシア、ウクライナ、アルゼンチン、南アフリカ、インドも資源輸出に高い関税をかけているとしている。

 また、ロイターの報道では、EUと米国は6月22日に中国政府に対し協議を求める予定であるとのことで、対話が効を奏さなければWTOに提訴することになる。中国との協議の対象になる原材料には、黄リン、アンチモニー、コークス、シリカ、タングステン、錫、亜鉛などがある。

 欧州委員会貿易部門のスポークスマンは、中国の原材料輸出に対する制限は重要な問題であると表明している。中国は昨年、黄リンの輸出に120%の関税を課税するよう決定したが、欧州の化学工業部門はそのことに相当の不満を抱いている。

 米国メディアは、今回の米欧の対中連携行動によって、これまでも摩擦の多かった米中、米欧貿易関係の火に油を注ぐと見ている。中国は米欧の動きに対して未だ明確な反応を示していないが、商務部のウェブサイトは12日、様々な形を取る保護貿易主義を非難し、「保護貿易主義が激化する中、中国は世界第3位の貿易国、第2位の輸出国として貿易摩擦の主要な対象になっている」としている。

 中国WTO研究会の周世倹常務理事は、米欧のやり方には道理がないとし、米欧は安価でものを買えるよう、中国が売り尽くすまで資源輸出を開放するよう求めているが実際には米国も含む多くの国が自国の資源を保護しているにも関わらず中国にはなぜそれを許さないのかと疑問を投げかけ、米欧の要求はWTOの規則に違反していると説く。つまり、本来WTOが強調しているのは、輸入を制限せず、市場を開放せよということであり、輸出をどうすべきかについては具体的な規定がなく、資源輸出の開放を要請しているわけではない。周世倹氏は、中国がもし資源の輸出を開放すれば国際非鉄金属市場の秩序を乱し、別の不満を生むことになる指摘、中国のやり方は市場調節に有利であるとしている。

 米欧の政策には一貫性がないと疑問を投げかける専門家もいる。EUは中国のコークス輸出に対して、2000年と2008年の2度にわたり反ダンピング税を課税した。それが、今では逆に中国のコークス輸出税に反対するのでは、政策の一貫性を疑われても仕方がない。

 前出の周世倹氏は、「中国の目下の資源状況は極めてタイトである」「中国は発展途上の大国であり、鉱物資源は極めて貴重。そのため、政府が資源の有効な管理を進めることが必要だ」と説く。

 (環球時報6月15日)