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中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】中国の内需拡大の鍵は国内消費の促進にあり 公共投資のカンフル効果は頭打ちに (09/06/19)
2009/6/22
中国【エネルギー全般・政治経済】

 金融危機と世界的な景気後退によって欧州人はもとより米国人も金をあまり使わず貯金に回すようになり、国際貿易は大幅に縮小した。外需の萎縮によって大きな影響を被ったのは貿易主導型経済であり、中国はその典型である。中国の経済統計もこうした事実を明白に物語っており、1〜5月の貿易総額は前年同期比24.7%もの減少となった。

 2001年のWTO加盟以降、中国の輸出は激増し、中国は所謂「世界の工場」になった。中国の経済成長は輸出の増大とますます緊密にリンクするようになり、輸出は消費に代わって中国経済を牽引する主要な柱になった。GDP全体に占める輸出のシェアは2001年の20%から2007年には36%以上に上昇した。同時に貿易黒字(純輸出)の増加に伴って中国の外貨準備高は世界最大になり、今や2兆ドル近くになった。

 確かに輸出主導型の経済成長によって中国は短期間で大きな国富を累積し、国力は大幅に拡大、人民の生活水準も向上した。外需が持続的、安定的に増加することは中国のような発展途上国にとって悪いことではない。しかし、問題は、かかる成長パターンは他人の懐を当てにしたものであり、他人の消費能力が十分かつ持続可能であるかどうかに依存していることである。不幸なことに、金融危機によって世界経済は低迷に入り、外需は急激に縮小し、その結果、中国の輸出の大幅な減少を招いた。米国商務省が5月9日に発表したデータによると、米国経済の第1四半期の成長率は年率換算でマイナス5.7%になり、3四半期連続でマイナスになった。EUや日本も経済衰退状況にあり、中国商務部の5月初めに発表したレポートによると、世界経済が短期間で顕著に回復する可能性は低い。国際市場の需要低迷が長引けば、中国の対外貿易をめぐる外部環境も、依然として深刻なものであり続ける。

 今回の金融危機が中国に与えた最も深刻な衝撃は、世界的な貿易の萎縮と消費不振であり、最早中国の輸出主導型経済にとって外需は支えになり得ない。今年の世界貿易は11.8%にマイナスになるとの分析もある。貿易の減少は1930年代の世界恐慌よりも一層深刻と形容する者もいる。長期にわたって過度に貿易に依存してきた中国経済は、いったんその支えを失えば、内需を経済の持続可能な発展の支えにすることが必然の選択になる。

 実際、中国政府は2008年11月より内需拡大に取り組んでいる。11月、国務院は4兆元の景気刺激策を打ち出し、各省・自治区政府もそれぞれの景気刺激策を打ち出した。これらを合計すると23.5兆元に上る。加えて、長期建設国債も増発し、2009年度の発行額は1998〜2000年の積極財政時期の発行額合計3,600億元をはるかに上回ることになる。

 これらの投資計画はすでに内需拡大の「カンフル剤」になっている。国家統計局のデータによると、1〜5月の都市部固定資産投資は前年同期比32.9%の伸びを示し、伸び率は1〜4月よりもさらに2.4ポイント上昇した。短期的には、投資に支えられた内需が中国のGDPにとって大きな成長材料になるに違いない。

 しかしながら、投資主導型の経済成長方式が危機到来に当たっては「カンフル剤」になり得ても、今後相当長期にわたって立ち行くことは出来るのだろうか。その上、今回の投資は政府主導であって、民間主導ではない、政府投資は収益性が低く、民間資本への効果や市場による資源配置の面でマイナスの影響が出ることについては警戒が必要である。また、今年に入ってから消費は表面上好転しているが、これも政府の強力な景気刺激策と密接な関係にあり、いったん投資の伸びが減速すると、もともと過度に低かった消費率は実質的な上昇が出来なくなり、内需拡大への強力な支えが不十分になる。中国経済の持続可能な発展も壁にぶち当たる。結局、内需を牽引するというのは、根本的にはやはり消費を牽引するということであり、消費が真の意味で拡大するかどうかは、収入の再分配や社会保障にまで及ぶ本当の改革が実現するかどうかによって決まるが、これらははるか遠い道のりになる。

 (経済参考報 6月19日)