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【エネルギー全般・政治経済】

【論説】ペトロチャイナとエクソンモービルの巨額LNG取引成立もなお続く中豪両国の政冷 (09/08/21)
2009/8/24
中国【エネルギー全般・政治経済】

 中国とオーストラリアの政治関係が悪化している中、先頃、中国石油天然ガス股フェン公司(PetroChina)とエクソンモービル傘下のMobil Australia Resources Company Pty Ltdの間で年間225万トン、20年間のLNG貿易が合意され、両国関係好転の転機になるかと期待されたが、LNGの発熱量では冷え切った関係を暖めるには十分でないようである。

 今回のLNG取引は500億オーストラリアドルに上ると見られ、中豪間の取引では過去最高になる。これまでの中豪間の大口貿易には、2002年のオーストラリア西北大陸棚事業から深セン大鵬事業への年間300万トンに上るLNG貿易契約(250億豪ドル相当)、2006年のウラン貿易契約(2010年よりオーストラリアから中国へ年間1万トンのウラン輸出)、2007年のシェルとの年間100万トンに上る20年間のLNG貿易やウッドサイドエナジーとの300万トンに上る同じく15年間のLNG貿易があったが、それらの契約調印式や、深セン大鵬事業起工式には温家宝首相やハワード首相など両国首脳の立会いがあり、中豪貿易やエネルギー協力に対する両国政府の重視が示された。

 然るに、今回のPetroChinaとエクソンモービルの調印式に出席したのはMartin Fergusonエネルギー相であった。この取引成立のニュースが世界で報道された後、新華社は18日夜になって遅まきながら報道した。PetroChinaの親会社であるCNPCは、今回の合意は天然ガス分野の良好な協力の象徴であり、長期戦略協力の基礎が固められたと表明したが、協力の相手はオーストラリアを指すのか、それともエクソンモービルを指すのか判然としない。

 2009年以降の中豪政府首脳の往来は、以前と比べて急速に色あせていたが、さらに、今回のLNG取引成立直前にはウイグル独立運動のリーダーと目されるラビヤ・カーディルに対するビザ発給とそれに対する中国の抗議や、リオ・ティントの社員逮捕などで両国の政治関係は急速に冷え切っていた。

 Martin Fergusonエネルギー相は北京での調印式に際して、両国間の衝突にも関わらず、商業活動を継続する必要があると述べた。外交官の経験があるオーストラリアのアジア問題専門家のAlison Broinowski氏は、今回のLNG取引成立によって中豪関係は「商売は商売、政治は政治」の基本レールに戻ったと指摘し、政治と商売を一緒にしないことが妥当な選択との考えを示している。

 しかし、商売と政治は完全に分けることが出来るのだろうか。資源輸出に依存するオーストラリアにとって、商売もまた政治に他ならないのである。

 (財経網 8月21日)