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【エネルギー全般・政治経済】

【論説】有効需要の不足と生産能力過剰が中国経済の回復を制約 (09/08/27)
2009/8/28
中国【エネルギー全般・政治経済】

 マクロ経済政策が顕著な効果を示し、中国経済はすでに回復軌道に乗っているとの見方があり、株式、不動産、大口商品など資産価格が著しく上昇している中で今後はインフレ対策に重点を移し、マクロ経済を適時調整すべしとの意見が出ている。

 しかし、国家発展改革委員会経済研究所経済情勢研究室の樊彩躍副主任は、こうした見方に対し、需要不足と生産能力過剰問題は依然として際立っており、内外需要減少の局面を転換することは難しく、公共投資から民間投資へのバトンタッチは未だ無理であると指摘する。以下、樊彩躍副主任の見解。

 当面の情勢下でデフレ防止策からインフレ対策に転換すれば、経済回復傾向を持続することは難しくなる。現在のマクロ政策の連続性と安定性を維持すべきだ。外需の短期的な好転は期待できず、民間投資も大きな困難に直面する中で、中央政府は追加投資策を検討すべきである。

 有効需要の不足と生産能力過剰のギャップは、早急な解決が難しい。投資と工業には回復傾向が出ているものの、両者の伸び率は釣合いが取れていない。1〜5月の都市固定資産投資が前年同期比32.9%もの増加を示しているのに対し、一定規模以上の製造業の生産高はわずか6.3%の伸びに止まっている。特に国有経済の投資と業績には大きなギャップがある。1〜5月の国有及び国有持ち株企業の投資の伸び率は40.6%に達したが、生産高の伸び率はわずか0.6%に過ぎなかった。

 国有企業の投資が急増したのは公共事業によるものであり、一方、生産高の低迷は生産能力過剰に起因する稼動率の不足によるものである。本来、投資の伸びと工業生産の伸びは対応していなければならないが、このように投資の大幅な拡大の一方で工業生産の回復が遅れていることは、有効需要の不足と生産能力過剰の矛盾がますます際立っていることを意味している。

 このことは、発電量、輸入や価格の動向からも明らかである。今年5月の発電量は前年同期比3.5%低下し、4月期に比べても好転の兆しは見られない。1〜5月の輸入は前年同期比マイナス28%になり、輸出の減少幅を6.2ポイント下回った。輸入の減少率が大きくなっているのは、輸出低減の影響だけでなく、内需不足による影響も大きい。

 また、消費者物価指数(CPI)と工業品出荷価格指数(PPI)はいずれも4ヶ月連続でマイナスになった。5月のCPIは前年同期比でマイナス1.4%、前月比ではマイナス0.3%である。PPIの5月の下落率は7.2%に広がり、前月よりも0.6ポイント大きくなった。価格水準の持続的な低下は市場において供給と需要のギャップがますます突出していることを示しており、デフレ圧力は絶えず大きくなっている。

 有効需要の不足と生産能力過剰は依然として中国経済の安定と回復を制約する主要問題であり、中国は当面の間、インフレ圧力ではなく、依然としてデフレ圧力にさらされることになる。

 固定資産投資の急増に促される形で、今後一定の間はマクロ経済に回復的な成長が見込めるだろう。しかし、当面の経済回復情勢に過度の楽観は禁物である。中国経済が真の意味で底を割り、輸入が新たな上昇軌道に乗るには、世界経済の回復と中国経済の成長を制約する深層レベルの矛盾緩和を待つしかない。

 (経済参考報 8月27日)