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【石油・天然ガス】

【論説】中国の海外石油資源獲得の4つの方式 その利害得失 (09/11/23)
2009/11/25
中国【石油・天然ガス】

 この2年、中国は海外の安定的な海外石油資源の獲得に邁進し、世界から注目されている。中国の海外石油資源獲得の方式を4つのモデルに分けて、それぞれのメリットとデメリットについて考察することにする。

 まず、中国の海外石油資源獲得には次のような4つのモデルとそれぞれ事例がある。

(1) 「株式と石油の交換」モデル…今年8月、SinopecはスイスのAddax社を75.6億ドルで買収した。
(2) 「技術と石油の交換」モデル…今年11月、中国石油天然ガス集団(CNPC)・BP連合はイラク石油省との間で20年間のサービス契約に調印し、同国最大のルマイラ油田開発に当たることになった。また、中国海洋石油(CNOOC)はカタール石油会社(QP)と期間25年の油田探査及び生産物分与契約に調印、カタール東海岸沖合の5,649km2の海域において探査作業を行う。
(3) 「融資と石油の交換」モデル…今年2月、中国はロシアのRosneftとTransneftに合計250億ドルの融資を行う見返りに、ロシアは今後20年、中国へ年間1,500万トンの石油を輸出することになった。金融危機の中で、中国の巨額の外貨準備は歓迎され、中国は今年上半期だけでもロシア、ブラジル、カザフスタン、ベネズエラとの間で、総額440億ドルに上る「融資と石油の交換」で合意した。
(4) 「市場と石油の交換」モデル…中国は合弁の形で国内の製油化学、石油製品及び化学製品市場の開発を進めており、福建製油エチレン一貫プロジェクトはその典型である。海外の先進的な技術やマネジメントを導入するとともに、国際原油供給企業を確実に繋ぎとめておくものである。今年10月には、広東省湛江市政府、中国石油化工(Sinopec)及びクウェート国営石油精製会社(KNPC)が、合弁製油化学事業の推進でMOUに調印した。クウェートの原油を輸入して年間1,500万トンの石油製品と100万トンのエチレンを生産する計画である。
 
 こうした4つのモデルにはそれぞれメリットとデメリットがある。

 (1)「株式と石油の交換」モデル

 ●メリット…中国の石油企業は海外企業と収益を共有することで、国際原油価格の大きな変動による損失を相殺することが出来る。
 ×デメリット…中国側は海外投資に伴う様々な政治的、経済的、社会的、文化的なリスクを負う。中国企業は経営管理、人材等の面で依然力不足であり、中国企業の性急な海外拡張には比較的大きなリスクが潜在する。2005年のCNOOCのユノカル買収案失敗はその代表例であり、政治的要因のため、中国石油企業の海外進出は度々辛酸を嘗めている。

(2)「技術と石油の交換」モデル

 ●メリット…中国の石油企業は海外の油田の探査、採掘に参加することによって、下流産業の提携においても機先を制することが出来る。
 ×デメリット…技術サービスは短期的な収益が低く、中国のエネルギーセキュリティ戦略への大きな貢献も出来ない。

(3)「融資と石油の交換」モデル
●メリット…石油供給源が安定し、企業の経営リスクを伴わない。
 ×デメリット…「ローリスク・ローリターン」のモデルであり、一種の過渡的な戦略に過ぎない。「融資と石油の交換」によって中国側が得られるものは一片の原油売買契約でしかない。

(4)「市場と石油の交換」モデル

 ●メリット…中国側にとって最もリスクが低く最も安定的な収益を図ることの出来る協力方式である。安定的な石油供給源を確保できるとともに、中国側の経営リスクを極小化することが出来る。
 ×デメリット…中国国内の石油製品及び化学品市場から上がる利益を外国企業と共有しなければならない。

 昨年以降、金融危機によって国際原油需要が減少し、国際原油価格が大幅な変動を示す中、中国という巨大市場の消費潜在力は産油国からますます注目されている。当面の国際エネルギー市場環境の下で、産油国が中国の石油化学産業に投資するよう誘導し、原油輸入を拡大するとともに先進的な技術と管理のノウハウを導入することが賢明な選択である。

 (経済参考報 11月23日)