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中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】中豪LNG協議失効の背後にあるもの (10/01/07)
2010/1/12
中国【エネルギー全般・政治経済】

 オーストラリアのWoodsideは4日、中国石油天然ガス股フェン公司(PetroChina)と調印した約404億米ドル、年間300万トンのLNG協議が失効したことを明らかにした。2007年9月、PetroChinaはWoodsideから毎年200〜300万トンのLNGを輸入することで合意していた。

 Woodsideによると、PetroChinaとの協議失効の主因は投資事業の遅延であり、このため中国への2013年の天然ガス供給が出来なくなったとのことである。オーストラリアのメディアも、これが協議が流産した主な原因であるとしている。

 しかしながら、中豪天然ガス協力の流産は、表面上は商行為の中止の1つに過ぎないが、深層レベルを分析すると、それほど単純ではないことが分かる。中国企業は短期間で集中的にオーストラリア資源の買収や調達を進めたため、オーストラリア政府から大きな圧力に直面することになったという分析もある。

 中国にとって、オーストラリアとの天然ガス契約は中国企業の「走出去」戦略の一部に過ぎない。巨額の外貨準備を有する中国にとっては、米国国債を買うよりも世界においてエネルギーの買収、調達を進める方が賢明で重要である。こうした計画が成功すれば、金融危機を乗り切ることが出来るだけでなく、国家の将来の数十年、百年以上の発展のために基礎を固めることも出来る。

 一年前、世界金融危機が発生して国際エネルギー市場は危機に陥り、オーストラリアの企業は莫大な債務に頭を抱えていた。正にその時、中国企業は白馬の騎士のように出現し、オーストラリアは歓呼の声で迎えた。しかし、エネルギー市況がやや好転し、価格が上昇するや、オーストラリア側は中国企業への敷居を上げ、協力パートナーを門前払いするようになった。

 中国アルミによるリオ・ティント買収案も同様の憂き目にあった。2008年末に両者が合意した買収案は当初50%の株で決議できる「一般決議」とされたが、多くの株主が反対の声を上げて75%以上の支持を要する「特別決議」とされ、また、オーストラリアの政界、財界も介入し、買収案は最終的に覆された。

 道理から言えば、中国企業とオーストラリア企業の協力によって、資金不足のオーストラリア企業は窮地から脱し、オーストラリアの雇用率と税収を高め、一方、中国に豊かなエネルギーを供給することが出来る。

 2008年6月、中国を訪問したオーストラリアのスワン財務相は中国企業がオーストラリアに投資することを奨励すると表明したが、しかし、これは一種のポーズに過ぎなかった。中国企業がオーストラリアへの投資やオーストラリア企業との提携を求める段になると、彼の態度は豹変した。中国側は度々、中国企業にはオーストラリアの資源を「支配」する意図はないと表明したが、スワンはこれを無視して、中豪合弁案を否決した。

 中国はオーストラリアのエネルギーの最大の買い手であり、オーストラリアの経済利益は中国と密接に関連していると言うべきであろう。オーストラリアの経済的繁栄は中国によって大きく推進されていることは、当のオーストラリア人自身も認めるところである。しかし、一部のオーストラリア人は、一方では最大の貿易パートナーである中国からの投資を歓迎していながら、もう一方では自国の経済命脈である重要資源産業が外資によって支配されることに対して日増しに憂慮を募らせている。

 外国政策のアナリストであるジョン・リー氏によると、オーストラリア当局には長期にわたり中国に対する「種族的焦慮感」を持ち続けており、このことはオーストラリアの「不安・偏執・仇外」を示している。また、西側諸国は中国の台頭に対して複雑な感情を抱いており、中国企業の資源調達や資産買収を阻止しようとすることは、経済の政治化の必然の選択であり結果である。中豪天然ガス協議の流産もそのような要素に影響されたものに他ならない。

 (自貢日報・邱林 1月7日)

 (本論説記事は中国の一部の見方を示したものであり、エイジアム研究所の見解を示すものではありません)