エタノール燃料の主要原料は穀物 中国の現在のエタノール市場構造は2004年に形成されたものである。同年の計画案では、吉林燃料乙醇有限責任公司、河南天冠集団、安徽豊原生物化学股フェン有限公司及び黒龍江華潤酒精有限公司の4社が生産企業に指定され、経営範囲が規定された。うち河南天冠集団は小麦を原料とし、他の3社はトウモロコシを原料としている。 2006年の時点で、黒龍江、吉林、遼寧、河南、安徽の5省及び湖北、河北、山東、江蘇の一部地区で一般無鉛ガソリンからエタノールガソリンへの転換が基本的に実現している。また、今年9月、広西省は12月15日から自動車用エタノールガソリンの販売を開始し、一般ガソリンの販売を禁止すると発表した。2005年のエタノール燃料生産量は102万トン、ブラジル、米国に次ぐ世界第3位のバイオエタノール生産・消費国である。2006年の生産量は144万トンに達し、1対3.3の割合で計算するとトウモロコシを475万トン消費したことになる。 相対的に高価なコストと低すぎる価格のため政府からの補助が必要 エタノールガソリンの普及促進のため、国はエタノール燃料の生産及び使用に補助金や優遇税制、優遇価格政策を適用していた。例えば、上記の指定メーカー4社に対して、消費税5%の免除、付加価値税の還付、生産に要する古くなった穀物への補助金交付や優遇供給価格などを適用してきた。安徽豊原生物化学股フェン有限公司のデータによると、2005年の補助金は1トン当たり1,883元、2006年は1,628元、2007年及び2008年は1,373元である。現在食用アルコール価格は1トン当たり5,500元である。政府は指定エタノール燃料メーカーへの補助金を年々引き下げ、2008年には撤廃するよう計画している。つまり、エタノール燃料の生産は完全に市場化され、競争はより一層激化する。何よりも原料の選択は企業競争において最も高い重要性を占めることになる。 世界有数の経営コンサルティング会社A.T. カーニーが2007年7月に発表した「中国エタノール燃料産業の現状と展望――産業研究白書」によると、中国のトウモロコシ生産コストは米国よりも約80%高く、そのため中国のエタノール生産コストは米国よりも17%高い。一方、中国のガソリンと米国のガソリンには1トン当たり約600元の価格差があり、しかも中国のエタノール燃料の価格は90号ガソリンの0.911と定められているため、中国のエタノールの価格は米国に比べ18%低くなる。その結果、中国のエタノールは経済性に劣り、利益を出すには政府の補助金に依存するしかない。一方、米国のエタノールガソリン混合メーカーは政府から1ガロン当たり0.51ドルの補助金を交付され、そのうち補助金の50%をエタノールメーカーに移転すると仮定し、さらに1ガロン0.007元の直接補助金を加算すると、米国のエタノールメーカーは1ガロンにつき合計0.257ドルの補助金を得ることになる。 同「白書」は、中国と米国のエタノールの生産性にも大きな格差が存在すると分析している。中国の場合、エタノール1トンの生産に12トンの水を要するが、米国は1.8トンである。また、中国は1トンのエタノール生産には3.3トンのトウモロコシが必要であるが、米国は2.8トンである。中国のエタノール生産に伴う汚染物排出も米国に比べはるかに深刻である。 つまり、中国のエタノール燃料生産は米国に比べ、コストが高く、価格があまりにも低く、エネルギー消費が深刻であり、政府の補助金がなければ利益を確保することが出来ないのである。 穀物生産によってエタノール燃料の急拡大を賄うことは困難 2005年から2007年にかけて、中国のトウモロコシ生産は1.4〜1.45億トンで安定している。一方、工業需要の拡大、中でもアルコール燃料需要の拡大によって国内のトウモロコシの需要量は日増しに拡大し、輸出量は年々低下している。だが、単位当たりの生産量や作付面積の制約があるため、トウモロコシの生産量が持続的かつ大幅に拡大する可能性は小さい。 古くなった穀物が次第に消費し尽くされ、トウモロコシ価格が徐々に高騰する中、政府はトウモロコシによるバイオエタノールの生産が食糧のセキュリティにとって脅威になることを懸念して、2006年以降トウモロコシによる新規エタノール燃料企業の認可を停止するとともに、非穀物系原料によるエタノール燃料の開発に力を入れるようになった。現在、中粮集団に投資による広西キャッサバエタノールの第1期試験プロジェクトが政府から認可を受けスタートしている。 (生物技術 Biology aweb.com 10月18日)
エタノール燃料の主要原料は穀物
中国の現在のエタノール市場構造は2004年に形成されたものである。同年の計画案では、吉林燃料乙醇有限責任公司、河南天冠集団、安徽豊原生物化学股フェン有限公司及び黒龍江華潤酒精有限公司の4社が生産企業に指定され、経営範囲が規定された。うち河南天冠集団は小麦を原料とし、他の3社はトウモロコシを原料としている。
2006年の時点で、黒龍江、吉林、遼寧、河南、安徽の5省及び湖北、河北、山東、江蘇の一部地区で一般無鉛ガソリンからエタノールガソリンへの転換が基本的に実現している。また、今年9月、広西省は12月15日から自動車用エタノールガソリンの販売を開始し、一般ガソリンの販売を禁止すると発表した。2005年のエタノール燃料生産量は102万トン、ブラジル、米国に次ぐ世界第3位のバイオエタノール生産・消費国である。2006年の生産量は144万トンに達し、1対3.3の割合で計算するとトウモロコシを475万トン消費したことになる。
相対的に高価なコストと低すぎる価格のため政府からの補助が必要
エタノールガソリンの普及促進のため、国はエタノール燃料の生産及び使用に補助金や優遇税制、優遇価格政策を適用していた。例えば、上記の指定メーカー4社に対して、消費税5%の免除、付加価値税の還付、生産に要する古くなった穀物への補助金交付や優遇供給価格などを適用してきた。安徽豊原生物化学股フェン有限公司のデータによると、2005年の補助金は1トン当たり1,883元、2006年は1,628元、2007年及び2008年は1,373元である。現在食用アルコール価格は1トン当たり5,500元である。政府は指定エタノール燃料メーカーへの補助金を年々引き下げ、2008年には撤廃するよう計画している。つまり、エタノール燃料の生産は完全に市場化され、競争はより一層激化する。何よりも原料の選択は企業競争において最も高い重要性を占めることになる。
世界有数の経営コンサルティング会社A.T. カーニーが2007年7月に発表した「中国エタノール燃料産業の現状と展望――産業研究白書」によると、中国のトウモロコシ生産コストは米国よりも約80%高く、そのため中国のエタノール生産コストは米国よりも17%高い。一方、中国のガソリンと米国のガソリンには1トン当たり約600元の価格差があり、しかも中国のエタノール燃料の価格は90号ガソリンの0.911と定められているため、中国のエタノールの価格は米国に比べ18%低くなる。その結果、中国のエタノールは経済性に劣り、利益を出すには政府の補助金に依存するしかない。一方、米国のエタノールガソリン混合メーカーは政府から1ガロン当たり0.51ドルの補助金を交付され、そのうち補助金の50%をエタノールメーカーに移転すると仮定し、さらに1ガロン0.007元の直接補助金を加算すると、米国のエタノールメーカーは1ガロンにつき合計0.257ドルの補助金を得ることになる。
同「白書」は、中国と米国のエタノールの生産性にも大きな格差が存在すると分析している。中国の場合、エタノール1トンの生産に12トンの水を要するが、米国は1.8トンである。また、中国は1トンのエタノール生産には3.3トンのトウモロコシが必要であるが、米国は2.8トンである。中国のエタノール生産に伴う汚染物排出も米国に比べはるかに深刻である。
つまり、中国のエタノール燃料生産は米国に比べ、コストが高く、価格があまりにも低く、エネルギー消費が深刻であり、政府の補助金がなければ利益を確保することが出来ないのである。
穀物生産によってエタノール燃料の急拡大を賄うことは困難
2005年から2007年にかけて、中国のトウモロコシ生産は1.4〜1.45億トンで安定している。一方、工業需要の拡大、中でもアルコール燃料需要の拡大によって国内のトウモロコシの需要量は日増しに拡大し、輸出量は年々低下している。だが、単位当たりの生産量や作付面積の制約があるため、トウモロコシの生産量が持続的かつ大幅に拡大する可能性は小さい。
古くなった穀物が次第に消費し尽くされ、トウモロコシ価格が徐々に高騰する中、政府はトウモロコシによるバイオエタノールの生産が食糧のセキュリティにとって脅威になることを懸念して、2006年以降トウモロコシによる新規エタノール燃料企業の認可を停止するとともに、非穀物系原料によるエタノール燃料の開発に力を入れるようになった。現在、中粮集団に投資による広西キャッサバエタノールの第1期試験プロジェクトが政府から認可を受けスタートしている。
(生物技術 Biology aweb.com 10月18日)