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中国
【エネルギー全般・政治経済】

【論説】中緬原油パイプライン脅威論を駁す (10/04/03)
2010/4/5
中国【エネルギー全般・政治経済】

 中国とミャンマーのエネルギー協力に対して国際社会から雑音が生じている。「中緬原油パイプラインは危険な一歩」「中国がミャンマーへの道路、鉄道及びミャンマーの港湾に到る水路を建設することはインドにとって新たな戦略的挑戦だ」などとするものである。

 しかし、こうした見方は客観的ではなく、道理がない。

 中緬原油パイプラインの建設は今に始まったテーマではなく、90年代に打ち出されたものである。しかし、当時は国際原油価格が安く、投資価値が表面化していたかったため、実際の動きは起こらなかった。

 米国を筆頭とする西側諸国によって孤立に追い込まれているミャンマーにとって、隣国の中国との協力強化は必要である。また、ミャンマー国内において石油・天然ガスの鉱床が絶えず発見され、このことはミャンマーと中国のエネルギー協力の基盤になった。こうして、石油・天然ガスパイプラインの敷設は必然的にミャンマーが中国の投資を呼び込むカードになっているのである。

 一方、中国は、持続的な経済成長に伴い、エネルギーの対外依存度が上昇して、今や世界第2位の石油輸入国になった。2020年の中国の石油の需要量は5.2億トンに達し、輸入依存度は60%を超えるだろう。エネルギーセキュリティは中国にとって安全保障上の突出した問題になっている。30年間の改革開放を経て、中国は国際エネルギー協力を強化しただけでなく、国外の石油・天然ガス資源を開発、利用する能力を有するようになった。このことは、中緬エネルギー協力の重要な前提になっている。

 国際社会においても、石油の不足、国際石油価格の高騰によって、海外資源を利用することや国際協力を通してエネルギー問題を解決することは著しい戦略的価値を有するようになった。しかし、先進国の主導する既存の国際エネルギー構造の中で、世界の石油市場の新参者である中国には選択の余地は限られる。隣国のミャンマーが埋蔵する豊富なエネルギーや特有のロケーションを中国が重視するのは必然の成り行きである。

 加えて、ミャンマー周辺の環境も次第に好転している。アジア諸国は、世界最大のエネルギー消費市場の1つとして、国際石油市場においてますます大きな発言権を有するようになり、エネルギー分野における協力を絶えず強化している。インドは中国に先んじて、ミャンマーと開発で合意し、ミャンマーとのエネルギーのルートとインフラ建設での協力を計画している。第2回東アジアサミットは「アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」に署名し、関係諸国が共同努力して地域のエネルギーセキュリティを確保することに改めて言及した。加えて、マラッカ海峡にはリスクが存在し、そのことも中国がミャンマーとのエネルギー協力の強化する一因になっている。日本、韓国等の周辺諸国もそこから利益を得ることを期待している。

 エネルギー協力は世界のエネルギー生産大国と消費大国の必然的な選択である。中国はすでに36ヵ国との間で、二国間エネルギー協力の仕組みを構築している。中緬エネルギー協力は中国がエネルギーの多元化を進める一手であるに過ぎない。

 (中国石化報 4月3日)

 注:この記事は中国の一部の見解を示したものであり、エイジアム研究所の見解を代表するものではありません。