米国は世界最大のエネルギー消費大国であり、原油の60%を輸入に依存している。しかし、石油価格の高騰に加え、中東情勢の変動、イラン問題の複雑化、世界的な資源ナショナリズムの台頭を背景に、石油の対外依存を下げることは今や米国の重要な国家目標となり、そのためにはエネルギーの多元化が鍵となる。 ブッシュ政権はエネルギー多元化を推進する上で、エタノール等のバイオエネルギーに期待を寄せている。今年、ブッシュ政権は今後10年でガソリン使用量を20%削減するとの目標を打ち出した。実現すると、米国は20年以内に中東からの石油輸入を75%減らすことが出来る。 目標達成のためには、ハイブリッド車の使用を提唱する他、エタノールの再生燃料又はバイオ燃料の開発を重要な措置として打ち出し、自動車のガソリン消費に占めるこの種のエネルギーの比率を15%にするとしている。構想通りに進めば、2017年に米国の自動車用代替燃料の使用量は350億ガロンに達すると期待される。 この数年、石油価格の高騰は米国のエタノールにとって追い風となり、すでに114のエタノール精製工場が完成し、今なお80もの工場が建設されている。2006年のエタノール生産量は前年比25%増の50億ガロン超、さらに今後2年以内に生産能力は60億ガロン増加する見込みである。 エタノールの生産拡大に伴い、米国のトウモロコシ作付面積は絶えず拡大している。2007年には前年比15%増の9,050万エーカーに達するだろう。 トウモロコシブームによって米国中西部の農地価格も上昇し、1年前に1エーカー4,500ドルであったのが、現在6,000ドルとなった。また、トウモロコシ価格も急騰し、過去10年間の最高を記録した。 今後数年、米国のトウモロコシ価格はさらに上昇すると予想されており、消費者の利益に影響が出よう。トウモロコシは幅広く食品に利用されており、また、重要な飼料ともなる。トウモロコシの含め穀物価格の上昇は他の食品価格にも連鎖的に波及するだろう。米国農業の推計によると、2007年の米国の鶏肉卸売価格は前年比10%の上昇となり、鶏卵1ダースの価格は21%、牛乳は14%もの上昇となる。 2006年、米国ではエタノールの生産に4,200万トンのトウモロコシが投入された。この数値は1.35億人の1年間の食糧に相当する。米国エネルギー省筋によると、トウモロコシは今後相当長期にわたって米国のエタノール生産の主要原料であり続ける。 米国が自国で栽培したトウモロコシによって自国のエネルギーを賄うことをとがめるわけにはいかないが、しかし、世界の多くの国で衣食問題が十分な解決を見ていない状況では、米国のエタノール生産拡大計画にはそうした諸国からの批判も大きい。例えば、キューバのカストロは、米国の政策はトウモロコシなど主食の上昇を招き、世界の穀物供給を危険に陥れるとし、ベネズエラのチャベス大統領も、このような計画は貧乏人から食物を強奪するとしている。トウモロコシを主食とするメキシコもトウモロコシ価格の高騰に抗議している。 ブッシュ政権の政策には米国内からの批判も大きい。専門家は、大量の穀物を自動車燃料に転換することによって世界全体の穀物価格の上昇を招き、しかもその高騰は長期にわたるとしている。 米国が世界最大の穀物輸出国である以上、ブッシュ政権の戦略には米国の消費者だけでなく、世界の消費者も重大な関心を寄せないわけにはいかない。ワシントンが穀物から燃料への転換を制限しなければ、消費者の反対に直面するのみならず、途上国や中進国の政治的安定にも悪影響を及ぼし、世界経済の発展も阻害することになろう。 穀物価格は今なお上昇を続けており、製パン用の穀物価格は30〜50%上昇する可能性がある。豆類や植物油の種子に到っては60〜80%もの上昇になりかねない。一方、世界では約15億人の人々は1日1ドルの生活を送っており、その半分は食品の購入で消える。もし食品価格が50%も80%も高騰すれば、多くの人々は飢餓線上をさ迷うことになろう。 米政界にトウモロコシ等によるエタノール燃料の生産を支持する傾向があるのは、政治的な理由が大きく、特に米国中西部のトウモロコシ栽培の盛んな一部の州ではその傾向が強い。 しかし、エタノールの実際のエネルギー効率は決して高くはない。むしと極めて低いと言える。また、トウモロコシを原料としてエタノールを生産する場合のコストも相当高い。現在米国のエタノール生産コストは1ガロン2.50ドルとされているが、政府からの補助金を差し引くと、生産コストは3.50ドルかそれ以上にはね上がる。補助金が撤廃されると、エタノールの価格面での優越性は直ちに失われるのである。 その他にも、エタノール生産には、食糧生産用の農地を奪う、単一の作物生産によって土壌に悪影響が出るなどの問題を伴う。また、トウモロコシ栽培には石油由来の化学肥料等の物質を大量に使用するため、恒久的な代替エネルギーとはなり得ない。 多くの人々は、効率の良いエタノール生産を進めるためには、トウモロコシ以外の植物を利用することが不可欠であると考えている。ブッシュ政権でさえも、再生可能な燃料となる別の原料も積極的に模索している。中でもセルロース系エタノール生産技術に対しては開発費を増やし、生産企業の発展を支援しているとともに、セルロースから精製するエタノールを2013年以降には2.5億ガロン以上とするよう決定した。セルロース系エタノールとは、木屑、樹木の枝や葉、草や農業廃棄物を主要原料とするエタノールである。但し、現在のセルロース系エタノール生産技術ではコストが高く、価格競争力を伴っていない。 しかし、いずれは、時間が技術上の問題を解決するだろう。生産技術面で打開できれば、代替エネルギーとしてのエタノールの生産コストは大きく下がり、米国の石油輸入の大幅な減少も期待できる。 (中国農産品加工網 10月24日)
米国は世界最大のエネルギー消費大国であり、原油の60%を輸入に依存している。しかし、石油価格の高騰に加え、中東情勢の変動、イラン問題の複雑化、世界的な資源ナショナリズムの台頭を背景に、石油の対外依存を下げることは今や米国の重要な国家目標となり、そのためにはエネルギーの多元化が鍵となる。
ブッシュ政権はエネルギー多元化を推進する上で、エタノール等のバイオエネルギーに期待を寄せている。今年、ブッシュ政権は今後10年でガソリン使用量を20%削減するとの目標を打ち出した。実現すると、米国は20年以内に中東からの石油輸入を75%減らすことが出来る。
目標達成のためには、ハイブリッド車の使用を提唱する他、エタノールの再生燃料又はバイオ燃料の開発を重要な措置として打ち出し、自動車のガソリン消費に占めるこの種のエネルギーの比率を15%にするとしている。構想通りに進めば、2017年に米国の自動車用代替燃料の使用量は350億ガロンに達すると期待される。
この数年、石油価格の高騰は米国のエタノールにとって追い風となり、すでに114のエタノール精製工場が完成し、今なお80もの工場が建設されている。2006年のエタノール生産量は前年比25%増の50億ガロン超、さらに今後2年以内に生産能力は60億ガロン増加する見込みである。
エタノールの生産拡大に伴い、米国のトウモロコシ作付面積は絶えず拡大している。2007年には前年比15%増の9,050万エーカーに達するだろう。
トウモロコシブームによって米国中西部の農地価格も上昇し、1年前に1エーカー4,500ドルであったのが、現在6,000ドルとなった。また、トウモロコシ価格も急騰し、過去10年間の最高を記録した。
今後数年、米国のトウモロコシ価格はさらに上昇すると予想されており、消費者の利益に影響が出よう。トウモロコシは幅広く食品に利用されており、また、重要な飼料ともなる。トウモロコシの含め穀物価格の上昇は他の食品価格にも連鎖的に波及するだろう。米国農業の推計によると、2007年の米国の鶏肉卸売価格は前年比10%の上昇となり、鶏卵1ダースの価格は21%、牛乳は14%もの上昇となる。
2006年、米国ではエタノールの生産に4,200万トンのトウモロコシが投入された。この数値は1.35億人の1年間の食糧に相当する。米国エネルギー省筋によると、トウモロコシは今後相当長期にわたって米国のエタノール生産の主要原料であり続ける。
米国が自国で栽培したトウモロコシによって自国のエネルギーを賄うことをとがめるわけにはいかないが、しかし、世界の多くの国で衣食問題が十分な解決を見ていない状況では、米国のエタノール生産拡大計画にはそうした諸国からの批判も大きい。例えば、キューバのカストロは、米国の政策はトウモロコシなど主食の上昇を招き、世界の穀物供給を危険に陥れるとし、ベネズエラのチャベス大統領も、このような計画は貧乏人から食物を強奪するとしている。トウモロコシを主食とするメキシコもトウモロコシ価格の高騰に抗議している。
ブッシュ政権の政策には米国内からの批判も大きい。専門家は、大量の穀物を自動車燃料に転換することによって世界全体の穀物価格の上昇を招き、しかもその高騰は長期にわたるとしている。
米国が世界最大の穀物輸出国である以上、ブッシュ政権の戦略には米国の消費者だけでなく、世界の消費者も重大な関心を寄せないわけにはいかない。ワシントンが穀物から燃料への転換を制限しなければ、消費者の反対に直面するのみならず、途上国や中進国の政治的安定にも悪影響を及ぼし、世界経済の発展も阻害することになろう。
穀物価格は今なお上昇を続けており、製パン用の穀物価格は30〜50%上昇する可能性がある。豆類や植物油の種子に到っては60〜80%もの上昇になりかねない。一方、世界では約15億人の人々は1日1ドルの生活を送っており、その半分は食品の購入で消える。もし食品価格が50%も80%も高騰すれば、多くの人々は飢餓線上をさ迷うことになろう。
米政界にトウモロコシ等によるエタノール燃料の生産を支持する傾向があるのは、政治的な理由が大きく、特に米国中西部のトウモロコシ栽培の盛んな一部の州ではその傾向が強い。
しかし、エタノールの実際のエネルギー効率は決して高くはない。むしと極めて低いと言える。また、トウモロコシを原料としてエタノールを生産する場合のコストも相当高い。現在米国のエタノール生産コストは1ガロン2.50ドルとされているが、政府からの補助金を差し引くと、生産コストは3.50ドルかそれ以上にはね上がる。補助金が撤廃されると、エタノールの価格面での優越性は直ちに失われるのである。
その他にも、エタノール生産には、食糧生産用の農地を奪う、単一の作物生産によって土壌に悪影響が出るなどの問題を伴う。また、トウモロコシ栽培には石油由来の化学肥料等の物質を大量に使用するため、恒久的な代替エネルギーとはなり得ない。
多くの人々は、効率の良いエタノール生産を進めるためには、トウモロコシ以外の植物を利用することが不可欠であると考えている。ブッシュ政権でさえも、再生可能な燃料となる別の原料も積極的に模索している。中でもセルロース系エタノール生産技術に対しては開発費を増やし、生産企業の発展を支援しているとともに、セルロースから精製するエタノールを2013年以降には2.5億ガロン以上とするよう決定した。セルロース系エタノールとは、木屑、樹木の枝や葉、草や農業廃棄物を主要原料とするエタノールである。但し、現在のセルロース系エタノール生産技術ではコストが高く、価格競争力を伴っていない。
しかし、いずれは、時間が技術上の問題を解決するだろう。生産技術面で打開できれば、代替エネルギーとしてのエタノールの生産コストは大きく下がり、米国の石油輸入の大幅な減少も期待できる。
(中国農産品加工網 10月24日)