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【論説】ミャンマー政局は中緬石油・天然ガスパイプラインにとって最大の不確実要因 (07/10/31)
2007/11/22
中国【石油・天然ガス】

 中国政府はエネルギーセキュリティ問題を解決するため、全世界で様々な戦略的布石を進めているが、中緬石油パイプラインもその1つである。2004年8月、雲南大学のエネルギー問題専門家である呉磊等はミャンマー・昆明送油パイプラインの建設を提唱し、各界から幅広い論議を呼んだ。

 中緬送油パイプライン計画案は中国政府から公式には確認されていないが、様々な情報が示しているように、すでにこの計画は政策決定層の視野に入っており、実質的な模索も進められている。2006年、中国石油化工(SINOPEC)本社の製油事業部関係者は、中緬パイプラインプロジェクトが同年4月に発展改革委員会の最終審議を通過したことを明らかにした。SINOPECと中国石油天然ガス集団(CNPC)による競争的な実施計画案もすでに発展改革委員会能源局に報告されているとのことである。また同筋は、プロジェクトの総投資額が数十億ドルに上ることも明らかにしている。

 中国−アセアン石油・天然ガスパイプライン協力フォーラムにおいて、ミャンマー国営石油ガス公社(MOGE)社長ウミンチ(呉敏季)は、ミャンマーとCNPCのメンバーからなる共同研究チームが天然ガスパイプラインのルートについて目下FS(事業化可能性調査)を進めていることを明らかにした。PetroChina規画総院の韓景寛副院長も、このガスパイプラインと同じルートを取る石油パイプラインの建設について、中国側とミャンマー側が共同研究を進めていると明らかにした。CNPCの中国石油網によると、中国石油天然ガス股フェン公司(PetroChina)とMOGEは2007年に正式契約を結び、PetroChinaはミャンマーの3つの深海鉱区における石油・天然ガス探鉱開発権を獲得した。その他にも、中緬両国は、両国をつなぐ送油パイプラインを敷設する意思を有している。

 今年3月23日、重慶市の黄奇帆副市長は、中緬パイプラインは重慶にまで伸び、年間1,000万トンの原油を重慶に輸送することになると明かした。これより先、1月31日、黄奇帆は、中国とミャンマーは同月中旬に天然ガス協力で合意し、PetroChinaがミャンマーでガス田を獲得したことを明らかにし、今後は1日1,000万m3のガスを重慶に送り、重慶からは河南、河北、湖南、湖北や上海等に中継することになるとした。つまり、重慶市はミャンマーのガスを使用するだけでなく、重慶をエネルギー送配地区とする構想も有しているのである。また、これによって製油産業を立ち上げることも可能になる。

 中緬石油パイプラインがもし実現すれば、中国にとっての意義は極めて大きい。第1に、ミャンマーの石油・天然ガス資源を開発することによって、安定的なエネルギー供給源を確保できる。第2に、マラッカ海峡の隘路を打開し、中国の石油の「生命線」がマラッカ海峡に過度に依存する状況を緩和することが出来る。第3に、中緬パイプラインによって中国西南地区のエネルギー建設と経済発展を推進できる。また、地政学的に見て、中緬パイプラインが実施されると、シンガポールの貿易やベトナム、インドの石油供給にも影響を及ぼすだろう。

 しかし、石油問題は単純な経済問題に止まらない。中緬石油パイプラインプロジェクトの実施は、ミャンマー政局の基本的な安定維持が前提になる。政権が引っくり返るような変化が生じてはならないのである。中国がミャンマーにおいてエネルギー協力事業を推進できるかどうかは、中緬両国の外交上の安定関係に依存している。

 だが、今年に入ってからミャンマーで軍事独裁政府に反対するデモと流血の衝突事件が発生し、ミャンマーは国際政治の焦点になった。西側諸国の世論はいずれも非難の矛先をミャンマーの軍事独裁政府に向けた。国連は中国も含むミャンマー周辺諸国に特使を派遣して、ミャンマー政府に対する経済制裁決議を達成するよう周旋している。しかし、中国はミャンマー問題解決に関して、西側諸国とは異なる独自の観点を貫いている。

 戦略的に見た場合、西側諸国が中国の伝統的友好国の内政に介入することになれば、中国にとっては間違いなく不利になる。もしミャンマーに政変が起こり、政権交代という事態になれば、それは中国の玄関でもある東南アジア諸国において、西側諸国による「策動」がまたしても成功したことを意味している。また、西側諸国だけでなく国連もまたミャンマーに対する制裁を主張していることには注意しなければならない。多くの国々は中国が一貫してミャンマーを庇い立てしていると見なしている。中国にとっては、ミャンマーに政変が起こる可能性を視野に入れた上で、政局の変動にどのように対応するのか、検討しておかなければならない。

 ミャンマー情勢の変動は中国とミャンマーの石油・天然ガスパイプライン計画にとって極めて大きな不確実要因となる。ミャンマーに政権交代が生じる可能性も排除できない。このため、中緬パイプラインが水泡に帰す最悪の事態も考えられる。

 (中国油気管道網 10月31日)