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中国
【新エネルギー】

中国のバイオ燃料産業は4つの側面からブレークスルーが必要 (12/09/03)
2012/9/6
中国【新エネルギー】

 国家発展改革委員会等の政府部門が策定した《再生可能エネルギー第12次5カ年規画》は2015年には中国のバイオエタノール燃料利用量を400万トンにすることを提唱しているが、2011年のエタノール燃料生産量はわずか169万トンであり、セルロース系エタノールは依然中間試験段階に止まっている。現在、中国のバイオ燃料産業にはどのような問題があるのか、2015年の目標を達成するためにはどのような側面からブレークスルーを実現すれば良いのか。先週開催された米中先進バイオ燃料シンポジウムにおいて、業界の専門家は十分な討議を経た上で、技術イノベーション、原料の確保、標準の研究及び関連支援政策の4つの側面に重点を置き、力を合わせてバイオ燃料産業のブレークスルーを共同で推進すべきであると提唱した。

 シンポジウムに参加した専門家によると、2011年に中国が生産した169万トンの燃料用エタノールのうち、トウモロコシ系エタノールが154万トン、キャッサバ系エタノールが15万トンであった。いずれもデンプン由来の第一世代エタノール燃料である。中国は、食糧危機の浮上に伴って、穀物系エタノール生産事業を徐々に停止した。第二世代のセルロース系エタノールは、地球上で最も埋蔵量が豊富なリグノセルロースを原料とする。食糧や土地をめぐる競合問題がなく、世界的にも投資が競い合う方向性になっている。しかし、原料収集、事前処理工程や酵素技術などの制約から、商用製品は未だに世に出ていない。

 技術問題はセルロース系エタノールの開発を阻害する主要な要因である。清華大学の李十中教授によると、リグノセルロースの構造は複雑性、安定性と抗微生物分解特性を備え、そのため、エタノールの生産コストは大幅に高くなる。また、ペントース技術の効率的な利用技術はセルロース系エタノール生産の大規模な商業化生産を可能にするが、未だ構想段階に止まっている。海外企業はこれらの面ですでに成果を上げている。例えば、ノボザイムズの酵素製剤は市場において最もコストパフォーマンスに優れ、セルロース系エタノールの生産コストを最低限に出来る酵素製剤と見られている。

 十分かつ安定的な原料供給がないこともバイオ燃料の発展にとってボトルネックの一つである。一部事業では農業廃棄物のくずわらを原料とすることが試みられている。しかし、中国には未だ統一的なくずわらのサプライヤーがなく、バイオ燃料メーカーが農民や大型農場から直接買い取っている。そのため、くずわらの買取や貯蔵・輸送のコストは高くなる。現在、世界の大手バイオケミカル企業は藻類など可能性のある植物品種に目を向けている。

 標準の研究と政策的な保障はバイオ燃料の発展にとっても極めて重要である。米国環境保護庁は今年4月、ガソリン中のエタノールの混合比率を高める計画を議決した。これまでの10%(E10)から15%(E15)に高め、2001年以降に生産された自動車とトラックに適用する。つまり、米国の自動車の3分の2近くがE15を使用することになる。一方、中国のバイオ燃料標準の制定は遅れを取っており、市場での普及に対する支援政策も不十分である。そのことは技術の研究開発を遅らせる一定の原因になっている。業界関係者は法律を運用することで燃料中のバイオエタノールの添加比率を確保することに期待を寄せている。

 中国石油化学工業聯合会の李寿生常務副会長は、中国の国情に基づき、民と穀物を争わず、穀物と土地を争わないことを原則として、非穀物系エタノールとバイオディーゼルの生産規模を徐々に拡大すべきとし、次のいくつかの側面で重点的に対策に取り組むべきであると提唱した。

 (1) 技術イノベーションを強化し、実証プロジェクトを進める。農作物のくずわらとリグノセルロースを原料とするエタノール生産の技術開発を加速し、リッチオイル木材を原料とするバイオディーゼル等の工業化実証プロジェクトを進めて、原料利用効率を高め、生産コストを引き下げ、原料の多元的な発展を推進する。

 (2) 大規模な作付けと経営を促進して、原料の供給保障能力を高める。塩性アルカリ地や砂漠・荒地など非農耕地にヤトロファやアブラギリなどリッチオイル林を作付けする。大規模な作付けと経営を促進し、原料供給源の集中度を高め、育種、収穫から製品加工に到るまでのバイオ燃料産業チェーンを徐々に構築する。

 (3) 関連標準の研究に取り組んで、バイオ燃料の生産と応用の向上を技術面からサポートする。欧米諸国は標準を制定することで、バイオ燃料の大規模生産と使用に技術的根拠を与え、例えば米国は再生可能エネルギー標準を施行して以来、バイオ燃料の生産量を急増させた。これらの経験を参考にして関連対策に取り組む。

 (4) 支援政策の研究と制定を加速して、バイオ燃料産業発展のために良好な環境を創出する。バイオ燃料産業は戦略的新興産業であるが、スタート段階の幼稚な産業でもある。速やかに関連政策を策定して、技術開発、原料供給、市場開拓や産業化の面からサポートしなければならない。

 (生意社 9月2日)