中国石油化工(SINOPEC)の傅成玉会長は3月末に中国側代表団の一員としてロシアを訪問し、ロシア石油会社Rosneftと全面協力覚書に調印した。RosneftはSINOPECが中露東方石油化学公司に参加する可能性について検討すると発表した。SINOPECの関係者は4月8日、協力の構想があることを認めたが、いつ最終的に確定するかについてはタイムスケジュールがないと述べた。業界の専門家によると、東方石化の事業にSINOPECを引き入れるのは、SINOPECのネットワークを利用して販売チャンネルを広げるためであるとの分析を示した。 東方石化製油所は未だ着工されず 2006年3月、中国とロシアは《合弁企業の設立と石油協力の深化に関する基本原則協議》に調印し、2007年11月末に中露東方石化有限公司を天津に設立した。 この協議書に基づき、中国石油天然ガス集団(CNPC)が同合弁企業の株式の51%、Rosneftが49%を占めた。東方石化は天津に投資額50億ドル、年産能力1,300万トンの製油所を建設することになり、製油所に供給する原油の70%はロシアから、残りの30%は国際市場から調達することにした。 ESPO(東シベリア−太平洋)パイプラインによりロシアから中国へ年間1,500万トンの石油が供給されているが、それとは別にロシアは天津製油所に原油を供給する計画である。ロシア企業は、イルクーツク州も含む東シベリア油田から産出する石油を製油所に供給するよう計画している。しかしながら、天津製油所は未だ実質的に着工されていない。中国エネルギー戦略研究院の王震院長の分析によると、一つにはロシアから同製油所への石油供給源の問題がこれまで合意を見ていなのと、もう一つは中国国内の石油製品価格決定の仕組みが国際原油価格と連動しておらず、石油製品価格が国の統制を受けていたことがある。ロシア側は、輸入原油を処理すれば赤字になり、自身の収益に影響することを懸念している。 3月22日、中露間に新たな協定がなり、中国への原油供給量を1,500万トンからその2倍の3,100万トンに増やすことになった。今回ロシア側が追加した原油供給量は主に天津製油所の原油需要を賄うものである。一方、3月27日には中国国内の石油製品価格決定の仕組みが打ち出され、国際原油価格にほぼ連動することになった。 王震院長の見方によると、ロシアは原油供給を1,600万トン増やしたことで合弁製油事業の原油供給源問題が解決するとともに、新たな石油製品価格決定の仕組みは製油事業の収益を保証するものになる。 Rosneftは東方石化へのシノペック引き入れの意向 王震院長によると、中露エネルギー協力においてCNPCとSINOPECはいずれもロシア側と協力していたが、ロシア原油の輸入が大きいのはCNPCであり、天然ガス協力をめぐってもCNPCが主導権を握っているので、中露エネルギー協力の多くはCNPCが関わるものと見られていた。 然るに、3月22日、Rosneftのセーチン社長とSINOPECの傅成玉会長は全面協力覚書に調印し、両社の協力関係を拡大することになった。その直後、RosneftはSINOPECが東方石化公司に参加する可能性や参加の条件について検討すると発表した。Rosneftが中露東方石化の製油事業に第3の協力パートナーを引き入れると表明したのは初めてである。 中投顧問公司のエネルギー産業研究員である任浩寧氏は、石油化学工業においてSINOPECの優勢は顕著であり、SINOPECが東方石化に参加する上で技術、資金、人材、マネジメントなどの面で不足はなく、CNPC、Rosneftと協力を展開することも想定内であると分析する。また、アモイ大学中国エネルギー経済研究センターの林伯強主任は「SINOPECを引き入れることは製油所の下流の石油製品販売問題を考慮した上でのことだ」と述べ、「この件はおそらくロシア側が提案したのだろう。なぜなら、SINOPECは中国最大のサービスステーションの販売ネットワークを有しているからだ。製油所にとって下流の販売チャンネルは重要な一環であり、Rosneftの利益配当に直接影響する」と指摘した。東方石化は製油所建設の次の段階として、中国にサービスステーションのネットワークを設けることになる。 2012年末時点でSINOPECは全国に30,836のサービスステーションを有し、今年はさらに1,000軒増やすと予想される。一方、CNPCのサービスステーションは19,840軒である。王震院長の分析によると、政府もSINOPECの事業参加によってリスクが分散することを希望している可能性がある。また、そうなれば、SINOPECがロシアの石油上流分野に参入して協力を展開する上でも有利である。 今回のRosneftとSINOPECの協力覚書は石油・天然ガスの探査と開発、石油精製と石油化学、液化石油ガス生産の他にも、中国への原油輸出、石油製品および将来のLNG輸出なども対象にしている。 2005年、SINOPECはRosneftとサハリン3事業への共同出資・開発で合意したが、開発コストが高すぎることや探査結果が思わしくなかったため、最終的に破談になった。 任浩寧氏の見方によると、短期的にはロシアが上流の探査事業を完全に開放する可能性は低く、たとえ中国側が大きな譲歩を行ってもロシア側の承認を得ることは難しい。東方石化公司は製油化学を主とすることになり、その化学製品が大量に中国国内へ販売されると、CNPCとSINOPECの製油化学事業に対して一定の衝撃を及ぼす。しかし、双方の協力は単純に経済収益だけで推し量ってはならず、国家間のエネルギー分野の戦略協力にはその他の目的もある。 (毎日経済新聞 4月9日)
中国石油化工(SINOPEC)の傅成玉会長は3月末に中国側代表団の一員としてロシアを訪問し、ロシア石油会社Rosneftと全面協力覚書に調印した。RosneftはSINOPECが中露東方石油化学公司に参加する可能性について検討すると発表した。SINOPECの関係者は4月8日、協力の構想があることを認めたが、いつ最終的に確定するかについてはタイムスケジュールがないと述べた。業界の専門家によると、東方石化の事業にSINOPECを引き入れるのは、SINOPECのネットワークを利用して販売チャンネルを広げるためであるとの分析を示した。
東方石化製油所は未だ着工されず
2006年3月、中国とロシアは《合弁企業の設立と石油協力の深化に関する基本原則協議》に調印し、2007年11月末に中露東方石化有限公司を天津に設立した。
この協議書に基づき、中国石油天然ガス集団(CNPC)が同合弁企業の株式の51%、Rosneftが49%を占めた。東方石化は天津に投資額50億ドル、年産能力1,300万トンの製油所を建設することになり、製油所に供給する原油の70%はロシアから、残りの30%は国際市場から調達することにした。
ESPO(東シベリア−太平洋)パイプラインによりロシアから中国へ年間1,500万トンの石油が供給されているが、それとは別にロシアは天津製油所に原油を供給する計画である。ロシア企業は、イルクーツク州も含む東シベリア油田から産出する石油を製油所に供給するよう計画している。しかしながら、天津製油所は未だ実質的に着工されていない。中国エネルギー戦略研究院の王震院長の分析によると、一つにはロシアから同製油所への石油供給源の問題がこれまで合意を見ていなのと、もう一つは中国国内の石油製品価格決定の仕組みが国際原油価格と連動しておらず、石油製品価格が国の統制を受けていたことがある。ロシア側は、輸入原油を処理すれば赤字になり、自身の収益に影響することを懸念している。
3月22日、中露間に新たな協定がなり、中国への原油供給量を1,500万トンからその2倍の3,100万トンに増やすことになった。今回ロシア側が追加した原油供給量は主に天津製油所の原油需要を賄うものである。一方、3月27日には中国国内の石油製品価格決定の仕組みが打ち出され、国際原油価格にほぼ連動することになった。
王震院長の見方によると、ロシアは原油供給を1,600万トン増やしたことで合弁製油事業の原油供給源問題が解決するとともに、新たな石油製品価格決定の仕組みは製油事業の収益を保証するものになる。
Rosneftは東方石化へのシノペック引き入れの意向
王震院長によると、中露エネルギー協力においてCNPCとSINOPECはいずれもロシア側と協力していたが、ロシア原油の輸入が大きいのはCNPCであり、天然ガス協力をめぐってもCNPCが主導権を握っているので、中露エネルギー協力の多くはCNPCが関わるものと見られていた。
然るに、3月22日、Rosneftのセーチン社長とSINOPECの傅成玉会長は全面協力覚書に調印し、両社の協力関係を拡大することになった。その直後、RosneftはSINOPECが東方石化公司に参加する可能性や参加の条件について検討すると発表した。Rosneftが中露東方石化の製油事業に第3の協力パートナーを引き入れると表明したのは初めてである。
中投顧問公司のエネルギー産業研究員である任浩寧氏は、石油化学工業においてSINOPECの優勢は顕著であり、SINOPECが東方石化に参加する上で技術、資金、人材、マネジメントなどの面で不足はなく、CNPC、Rosneftと協力を展開することも想定内であると分析する。また、アモイ大学中国エネルギー経済研究センターの林伯強主任は「SINOPECを引き入れることは製油所の下流の石油製品販売問題を考慮した上でのことだ」と述べ、「この件はおそらくロシア側が提案したのだろう。なぜなら、SINOPECは中国最大のサービスステーションの販売ネットワークを有しているからだ。製油所にとって下流の販売チャンネルは重要な一環であり、Rosneftの利益配当に直接影響する」と指摘した。東方石化は製油所建設の次の段階として、中国にサービスステーションのネットワークを設けることになる。
2012年末時点でSINOPECは全国に30,836のサービスステーションを有し、今年はさらに1,000軒増やすと予想される。一方、CNPCのサービスステーションは19,840軒である。王震院長の分析によると、政府もSINOPECの事業参加によってリスクが分散することを希望している可能性がある。また、そうなれば、SINOPECがロシアの石油上流分野に参入して協力を展開する上でも有利である。
今回のRosneftとSINOPECの協力覚書は石油・天然ガスの探査と開発、石油精製と石油化学、液化石油ガス生産の他にも、中国への原油輸出、石油製品および将来のLNG輸出なども対象にしている。
2005年、SINOPECはRosneftとサハリン3事業への共同出資・開発で合意したが、開発コストが高すぎることや探査結果が思わしくなかったため、最終的に破談になった。
任浩寧氏の見方によると、短期的にはロシアが上流の探査事業を完全に開放する可能性は低く、たとえ中国側が大きな譲歩を行ってもロシア側の承認を得ることは難しい。東方石化公司は製油化学を主とすることになり、その化学製品が大量に中国国内へ販売されると、CNPCとSINOPECの製油化学事業に対して一定の衝撃を及ぼす。しかし、双方の協力は単純に経済収益だけで推し量ってはならず、国家間のエネルギー分野の戦略協力にはその他の目的もある。
(毎日経済新聞 4月9日)