【論説】「シェールガス神話」は中国には無縁 (13/04/09) 米国のシェールガス生産量は5年間で20倍近くに増え、エネルギー自給率は大幅に上昇した。国際エネルギー機関(IEA)は、2017年に米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になるとの予想を示している。 米国の成功は各国の羨望の的になった。IEAの予測では、中国のシェールガス埋蔵量は36兆m3、世界の約20%を占め第1位である。中国は米国のシェールガス革命に倣うことが出来ないはずがあるまい。 然るに、現実は理想とかけ離れている。米国の成功に対比すると、中国が越えなければならないハードルは極めて多い。 第1に、埋蔵量の数値を単純に比べることは何の意味もない。中国の地質や地形条件の複雑さは米国に比すべくもない。中国のシェールガス鉱床は深度が深く、南方の峻厳な山間部に集中しており、開発には大きい困難が伴う。米国のシェールガス井1坑の建設には300万ドルを要するが、中国はその4〜5倍になる。このような高い投資額では、中国のほとんどのシェールガスは開発に値しないことになる。 第2に、中国の水資源条件は無視できないボトルネックである。米国のシェールガス開発の成功において極めて重要なことは、水圧破砕技術で打開を遂げたことにある。しかし、この技術は在来天然ガスのおよそ10倍に上る大量の水資源を消費しなければならない。米国に年間約30億トンの水資源がなければ、シェールガス革命を支えることは出来ない。 中国の人口は世界の約20%を占めるが、水資源量は世界の約5.2%である。中国の水資源がシェールガス開発のニーズを満たすことは当面不可能である。中国は年間500億m3余りの水が不足しており、都市の3分の2は水不足状態にある。大規模なシェールガス開発のために地下水を汲み出せば、水資源不足のリスクを一層高めるに違いない。このことは軽視するわけにはいかない。 以上のような差異に止まらず、中国の最大の問題として、時代遅れの体制と仕組みが挙げられる。シェールガス開発にはあらゆる産業チェーンの高度の協力が必要である。また、企業が進んで開発に当たるような優れたインセンティブも必要である。地質や資源以外のこうしたファクターが整っていないことは、中国のシェールガスの大規模な開発を制約する最大の難題である。政府は補助政策を打ち出してはいるが、支援に依存するだけでは革命的な産業を創出することは不可能である。 米国ではオープンな市場へ多くの業者が一攫千金を狙って参入した。これら企業は、ハイコスト、ハイリスクに圧迫される形で絶えず技術革新を進め、そのことは米国のシェールガス技術がブレークスルーを実現する鍵になった。現在、米国のシェールガスの85%は中小企業が生産している。一方、中国のシェールガス開発は、政府の主導の下に大手企業が主役になるモデルを採用し、積極的に参加しようとする中小企業を排除している。 米国の法規定では、土地は私有であるため、地下の鉱産物も含めて鉱業権の流動にとっては好都合であり、鉱業権取得のコストは低い。これは中国では不可能なことである。中国の鉱業権は政府の手中にあり、探鉱権を取得するためのハードルは極めて高く、一般企業は指を加えて見ていることしか出来ない。そのため、シェールガス産業への資本参入のチャンネルは狭く、シェールガス開発が大規模な社会資本を得ることが難しい。 中国はシェールガスを独立した鉱物種として設定しているが、応分の付帯政策は依然として欠如している。特に市場主体が大きな関心を寄せるインセンティブや退出のメカニズム、とりわけ重要なガス価格、課税、パイプラインタリフ、生産物分与契約などはいずれも明確は規定を欠いている。その結果、シェールガス開発技術を掌握する外資系石油企業は中国のシェールガスに対して慎重な態度を取っており、「資源と技術の交換」や「市場と技術の交換」といった旧来の方法は、シェールガス開発においては試練に直面している。 中国の現在のシェールガス開発ブームには冷や水を浴びせて熱を下げることが必要である。中国が米国と同じようにシェールガス革命を起こすことは根本的に不可能である。この点については目を覚まして認識する必要がある。中国のシェールガス産業はゆっくりと成長するプロセスを歩むことしか出来ない。一挙に殺到することは抑える必要がある。 筆者:《財経国家週刊》主筆 王康鵬 (中国石油新聞中心 4月9日)
【論説】「シェールガス神話」は中国には無縁 (13/04/09)
米国のシェールガス生産量は5年間で20倍近くに増え、エネルギー自給率は大幅に上昇した。国際エネルギー機関(IEA)は、2017年に米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になるとの予想を示している。
米国の成功は各国の羨望の的になった。IEAの予測では、中国のシェールガス埋蔵量は36兆m3、世界の約20%を占め第1位である。中国は米国のシェールガス革命に倣うことが出来ないはずがあるまい。
然るに、現実は理想とかけ離れている。米国の成功に対比すると、中国が越えなければならないハードルは極めて多い。
第1に、埋蔵量の数値を単純に比べることは何の意味もない。中国の地質や地形条件の複雑さは米国に比すべくもない。中国のシェールガス鉱床は深度が深く、南方の峻厳な山間部に集中しており、開発には大きい困難が伴う。米国のシェールガス井1坑の建設には300万ドルを要するが、中国はその4〜5倍になる。このような高い投資額では、中国のほとんどのシェールガスは開発に値しないことになる。
第2に、中国の水資源条件は無視できないボトルネックである。米国のシェールガス開発の成功において極めて重要なことは、水圧破砕技術で打開を遂げたことにある。しかし、この技術は在来天然ガスのおよそ10倍に上る大量の水資源を消費しなければならない。米国に年間約30億トンの水資源がなければ、シェールガス革命を支えることは出来ない。
中国の人口は世界の約20%を占めるが、水資源量は世界の約5.2%である。中国の水資源がシェールガス開発のニーズを満たすことは当面不可能である。中国は年間500億m3余りの水が不足しており、都市の3分の2は水不足状態にある。大規模なシェールガス開発のために地下水を汲み出せば、水資源不足のリスクを一層高めるに違いない。このことは軽視するわけにはいかない。
以上のような差異に止まらず、中国の最大の問題として、時代遅れの体制と仕組みが挙げられる。シェールガス開発にはあらゆる産業チェーンの高度の協力が必要である。また、企業が進んで開発に当たるような優れたインセンティブも必要である。地質や資源以外のこうしたファクターが整っていないことは、中国のシェールガスの大規模な開発を制約する最大の難題である。政府は補助政策を打ち出してはいるが、支援に依存するだけでは革命的な産業を創出することは不可能である。
米国ではオープンな市場へ多くの業者が一攫千金を狙って参入した。これら企業は、ハイコスト、ハイリスクに圧迫される形で絶えず技術革新を進め、そのことは米国のシェールガス技術がブレークスルーを実現する鍵になった。現在、米国のシェールガスの85%は中小企業が生産している。一方、中国のシェールガス開発は、政府の主導の下に大手企業が主役になるモデルを採用し、積極的に参加しようとする中小企業を排除している。
米国の法規定では、土地は私有であるため、地下の鉱産物も含めて鉱業権の流動にとっては好都合であり、鉱業権取得のコストは低い。これは中国では不可能なことである。中国の鉱業権は政府の手中にあり、探鉱権を取得するためのハードルは極めて高く、一般企業は指を加えて見ていることしか出来ない。そのため、シェールガス産業への資本参入のチャンネルは狭く、シェールガス開発が大規模な社会資本を得ることが難しい。
中国はシェールガスを独立した鉱物種として設定しているが、応分の付帯政策は依然として欠如している。特に市場主体が大きな関心を寄せるインセンティブや退出のメカニズム、とりわけ重要なガス価格、課税、パイプラインタリフ、生産物分与契約などはいずれも明確は規定を欠いている。その結果、シェールガス開発技術を掌握する外資系石油企業は中国のシェールガスに対して慎重な態度を取っており、「資源と技術の交換」や「市場と技術の交換」といった旧来の方法は、シェールガス開発においては試練に直面している。
中国の現在のシェールガス開発ブームには冷や水を浴びせて熱を下げることが必要である。中国が米国と同じようにシェールガス革命を起こすことは根本的に不可能である。この点については目を覚まして認識する必要がある。中国のシェールガス産業はゆっくりと成長するプロセスを歩むことしか出来ない。一挙に殺到することは抑える必要がある。
筆者:《財経国家週刊》主筆 王康鵬
(中国石油新聞中心 4月9日)