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【石油・天然ガス】

4,000億ドルの中露天然ガス契約 ガス価格をめぐって「諸説紛々」(14/05/22)
2014/5/28
中国【石油・天然ガス】

 習近平主席とプーチン大統領の立ち会いの下に、5月21日、上海において中露両国政府は《東ルート天然ガス協力事業覚書》に調印し、中国石油天然ガス集団(CNPC)とGazpromは《中露東ルート天然ガス供給売買契約》に調印した。

 双方の約定に基づき、ロシアは2018年より中露天然ガスパイプライン東ルートを通して中国への天然ガス供給を開始する。ガス輸送量は年々増やしていき、最終的には年間380億m3とし、供給期間は30年間とする。契約額は総額4,000億ドルに上る。年間380億m3の天然ガスは中国の2013年の天然ガス輸入量の72%に相当する。

 中露双方はいずれも契約価格に関する情報を明らかにしていないが、プーチン大統領がメディアに表明したところでは、GazpromとCNPCは、対中天然ガス価格を原油並びに石油製品の市場価格とリンクさせることで合意し、双方はいずれも満足しているとのことである。Gazpromのプレス発表によると、互恵条件の下に調印された今回の契約には、石油価格とワンパッケージの価格フォーミュラやテイク・オア・ペイの条件など主要パラメータが盛り込まれている。

 中露天然ガス契約価格について、専門家は次のように推測している。

 (推測1)380〜388ドル/1,000m3

 国務院発展研究センター欧亜研究所の孫永祥研究員によると、ロシアが最終的に提示した価格は388ドル/1,000m3であり、一方、中国側の提示価格は380ドル/1,000m3で、最終的にその中間で落着したと見られる。この価格はロシアの欧州向け天然ガス輸出価格と横並びであるが、中国がトルクメニスタンやカザフスタン等の中央アジア諸国から輸入する天然ガス価格は200ドル前後である。もっとも、孫永祥研究員は両者を比較することは出来ないと言う。なぜなら中国はトルクメニスタンにおいて大きい投資を行っており、しかも中露東ルートは自然環境が厳しく、輸送コストも相対的に高くなるからである。

 (推測2)350〜400ドル/1,000m3

 今回の契約総額は4,000億ドルであり、ロシアが年間380億m3の天然ガス供給を保障すると仮定すると、ガス価格は350ドル/1,000m3になる。これは中国がトルクメニスタン等の中央アジア諸国から輸入する天然ガス価格を上回る。後者は約320ドル/1,000m3である。但し、中露パイプラインの実際の輸送量は徐々に拡大して最終的に380億m3とするため、それをもとに試算すると、中国側がロシアから輸入する天然ガス価格は350ドル/1,000m3よりも高くなる。また、ロシア側は、中央アジアからの輸入ガス価格より低い価格を受け入れることはなく、中国へ輸出する天然ガスは欧州向け天然ガスと等価で計算すること、すなわちロシアの主要ガス田から中国と欧州への輸出価格は、タリフや関税等の比較不可能なファクターは別にして等価でなければならないとしていた。2013年のロシアの欧州向け天然ガス価格は平均400ドル/1,000m3であり、ロシア側から見た場合、中露天然ガス価格は350〜400ドル/1,000m3でなければならず、実際、ロシアが固執していた価格もこの価格幅である。ロシアの専門家の試算によると、ロシアが中国に輸送する天然ガスのコストは190〜260ドル/1,000m3(入境地点によって異なる)であり、350ドル/1,000m3として試算しても、ロシアには依然収益の余地がある。

 (推測3)2.19元/m3(換算すると350ドル/1,000m3)

 あるアナリストは中露天然ガス合意価格を2.19元/m3と推定した。資料によると、ロシアのEU向け販売価格は2.3元/m3であり、一方、中国が中央アジアから輸入する天然ガス価格は2.2元./m3である。当然ながら2.19元/m3というのは推定価格に過ぎない。この推定は契約総額約4,000億ドル、契約期間30年、年間供給量380億m3を根拠としている。なお、ロシアが欧州に供給する天然ガス価格を換算すると約2.38元/m3になるとする報道もある。

 (推測4)ロシアの最低提示価格は約9.67ドル/MMBTU(ほぼ380ドル/1,000m3)

 消息筋の話を引用したロイターの報道によると、中国がGazpromに支払う価格は現在トルクメニスタンの天然ガスに支払っている9ドル/MMBTUよりも高くなる。一方、ロシアの提示した最低価格は約9.67ドル/MMBTUである。Gazpromが昨年欧州に供給した天然ガスの平均価格は10.60ドル/MMBTUであった。ロシアの使用する価格単位では、9.67ドル/MMBTUは約380ドル/1,000m3に相当する。

 その他に外国メディアの報道によると、ロシアのAlexander Novakエネルギー相は、中国が最大250億ドルの前払いを行う可能性を示唆している。

 各方面の試算から価格幅は350〜380ドル/1,000m3になる可能性が高いと見られるが、350ドルに近いのか、それとも380ドルに近いのかは、今のところ未だ判断し難い。しかしながら、専門家の多くは中国側が譲歩した可能性が高いとしている。もっとも、契約期間は30年であり、当初の価格が若干高いとしても、長期的に見て中国の利益に合致するという見方もある。

 (中国国際入札網 5月22日)