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【省エネ・環境】

国務院が汚染排出権取引の推進を通達 (14/08/26)
2014/8/26
中国【省エネ・環境】

 8月25日、国務院弁公庁は《汚染排出権有償使用並びに取引実験工作の推進に関する指導意見》を通達し、2015年末までに実験地区における汚染排出企業の汚染排出権の査定を全て完了することを打ち出した。さらに2017年には汚染排出権有償使用と取引の制度を基本的に確立する。

 現在、実験省・直轄市における汚染排出権取引では、主に二酸化硫黄、化学的酸素要求量(COD)、窒素酸化物及びアンモニア態窒素の排出指標を対象に売買を行っている。

 2007年以降、財政部が環境保護部及び国家発展改革委員会とともに、天津、江蘇、浙江、陝西など11の省・市を国家級実験単位として認定し、汚染排出権取引を展開してきた、

 今年3月14日、財政部は《全国範囲における汚染排出権有償使用並びに取引制度の推進と確立》と題するレポートを発表し、2〜3年内に全国の主な省・市において汚染排出権の有償使用と取引実験を展開し、条件の整っている省・市の実験をサポートするとともに、より多くの汚染排出企業を実験に組み入れることを打ち出した。

 これまで汚染排出権取引については全国的な指導文書が欠如していた。上海環境エネルギー取引所の賓暉副総経理によると、今回の意見書は汚染排出権取引の基本制度を定め、川上の汚染物総量規制から川下の市場取引に到るまで規範化を行っており、汚染排出権市場の育成に資するものになっている。

 上掲の財政部《全国範囲における汚染排出権有償使用並びに取引制度の推進と確立》によると、当面の汚染排出権取引には問題が山積している。実験範囲が小さいこと、地区によって運用が大きく異なり規範化されていないこと、企業の総量規制対策が遅れていることなどである。こうした問題について、今回の意見書は、汚染排出総量規制の実施を実験展開の前提にすると明示している。実験地区は国が確定した汚染物排出削減要件に厳格に従い、汚染物総量規制指標を末端に分担させて、総量規制の上限を突破しないようにしなければならない。国が拘束的指標として総量規制を進める汚染物を実験対象の汚染物とし、また、実験地区は地元の環境に顕著な影響を及ぼすその他の汚染物を選択して実験を展開すべきである。

 汚染排出権の査定は汚染排出権取引の基礎になる。しかしながら、各省の実験過程において、同一の企業もしくは同一の事業の排出量には環境アセスメント、環境統計、汚染全面調査、総量審査など様々な統計が適用されているが、異なる統計方式によって汚染排出量を算出したのでは、汚染取引需要も異なる結果になる。

 今回の意見書は汚染排出権の合理的な査定を打ち出している。実験地区は2015年末までに汚染排出企業の汚染排出権の初回査定を全て完了しなければならない。それ以降は原則として5年毎に査定を行うことになる。既存の汚染排出企業の汚染排出権は法規や標準、汚染物総量規制要件、産業部署や汚染物排出権の現状等に基づいて査定しなければならない。事業の新規建設、改造、拡張の汚染排出権は環境アセスメントの結果に基づいて査定しなければならない。

 意見書は、汚染排出権の確認は汚染許可証の形式で行うことを特に規定している。広東省社会科学研究院環境経済政策研究センターの趙細康主任によると、これまで汚染排出権は法理上の根拠が十分でなかったが、現在は汚染排出許可証を基礎にすることで、権利を確認する法的根拠が備わった。また、汚染排出権取引と現行の汚染排出制度に齟齬が生じないようにした。汚染排出権の取得方式は有償取得である。意見書によると、実験地区の汚染排出企業は使用費を納付することで汚染排出権を取得するかもしくは取引によって汚染排出権を取得する。汚染排出企業は所定の期間内において汚染排出権に対する使用、譲渡及び抵当設定等の権利を有する。汚染排出権使用費は地方の環境保護当局が汚染源管理権限に基づいて徴収し、全額を地方予算に組み入れる。

 汚染排出権取引は原則として各実験省の省内で進める。今回の意見書が水質汚染物の排出権取引を同一流域に限っていることは注目される。賓暉氏によると、水質汚染物の排出権取引については、同一流域内では省間に跨って進めるということである。

 但し、意見書は、火力発電企業については、その他の業種との間で大気汚染物を対象とする排出権取引を原則として禁止している。また、環境基準に達していない地区は地元の汚染物総量を増やす形での汚染排出権取引を行うことは出来ない。工業汚染源と農業汚染源との間でも汚染排出権取引は出来ない。

 財政部がこれまで力を入れて推進してきたのが広域の汚染排出権取引である。財政部は同一流域の水質汚染物排出権取引だけでなく、同一の大気汚染制御エリア内における大気汚染物排出権取引も推進中である。

 趙細康氏によると、今回の意見書は異業種間の汚染排出権取引について明確な規定を設けており、汚染排出権が現行の環境保護制度とより良く調和し、市場手法による環境保護の作用を発揮できるようにしている。

 しかしながら、汚染排出権取引実験から今まで7年もかかっていることは指摘しておく必要がある。賓暉氏によると、実験省のそれぞれの排出権取引量は全体的に小さく、汚染排出権取引は主に一次市場、すなわち汚染排出権の初期分配に集中している。二次市場、すなわち企業間における汚染排出権の取引量は限られている。

 財新網の今年3月の報道によると、実験省・市の汚染排出権累計競売収入は約20億元であった。

 当面の汚染排出権取引は「取引の場はあるが市場がない」というのが現状であり、この点について、今回の意見書は取引市場の活性化を提唱している。

 意見書の部署に従って、実験地区は汚染排出企業に対して支援と指導を行い、老朽化生産能力と過剰生産能力の淘汰、クリーン生産、汚染管理、技術の改良と高度化などを通して、汚染物の排出削減を進め、「余剰汚染排出権」が参加する市場取引を形成しなければならない。また、汚染排出権備蓄制度を設けて、汚染排出企業の「余剰汚染排出権」を買い取り、適時市場に放出して、戦略的新興産業や重大科技実証事業等の建設を重点的に支援する。

 今回の意見書は、汚染排出権取引は汚染管理権限に基づき地方政府の環境保護当局が責務を負うと規定している。一方、省クラスの行政エリアに跨る汚染排出取引実験については、環境保護部、財政部及び発展改革委員会が統括する。

 (東方早報 8月26日)