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【省エネ・環境】

中国の炭素排出ピークは2030年以降 社会科学院の最新レポート (14/11/05)
2014/11/10
中国【省エネ・環境】

 中国社会科学院−国家気象局気候変動経済学模擬連合実験室の最新研究成果によると、中国の排出ピークは2030年以降の一定期間内に発生する公算である。この研究成果は中国の将来の排出削減政策や国際気候変動交渉への参加を進める上で大いに参考になる。

 11月5日、気候変動経済学模擬連合実験室は気候変動白書第6版として《気候変動対応報告2014:科学的認識と政治対立》を発表した。

 同レポートによると、中国は世界最大の温暖化ガス排出国であり、炭素排出の伸び率が高く、炭素排出ピークがいつ到来するかは学術界の研究課題であるだけでなく、国際社会の注目の的でもある。

 国家気候変動センターの劉昌義助理研究員を初めとする専門家は、工業化、都市化、エネルギー、人口、消費需要の5つの側面から中国の将来の炭素排出とピークについて研究した。

 工業部門は最も大きいエネルギー消費セクターであり、排出セクターである。中国の工業化プロセスは全体的に中期から後期への過渡期にあり、エネルギー多消費、高排出の重化学工業が2020年以降に生産のピークに達し、2025年頃には工業化が完了して、ポスト工業化時代に入る。

 先進諸国の工業化プロセスやCO2排出の経験、中国の工業化と都市化等の影響など種々の要素に基づいて判断すると、基準シナリオの場合、工業セクターの排出は今後緩やかに増加し、2040年頃にピークに達する。また、低炭素シナリオの場合、工業セクターの総排出量は2025〜2030年にピークに達するが、ピークに達した後すぐに大幅な排出削減が実現するわけではなく、当分この排出水準が持続し、2040年頃になってようやく排出量の逐次低下が実現する。

 劉昌義助理研究員によると、中国の実状に基づく限りでは、低炭素シナリオが中国の現実に即しており、持続可能な発展のニーズを満たすとともに、工業大国かつ排出大国としての中国の排出削減努力を体現することになる。

 都市化も中国の炭素排出に影響する重要なファクターである。中国の都市化は現在急速に進んでおり、都市建設に必要な鉄鋼やセメントなどエネルギー多消費製品の潜在需要は莫大である。将来の都市化の発展は中国の炭素排出ピークの実現に大きなチャレンジをもたらす。

 炭素排出強度、1人当たり炭素排出及び炭素排出総量は都市化の発展に伴ってそれぞれU字型曲線を描き、それぞれのピーク値が順に発生することになる。中国はすでに炭素排出強度のピークは過ぎ、現在は1人当たり炭素排出量のピークに向かいつつある。

 先進国のこれまでの歴史的経験を振り返ると、1人当たり炭素排出のピークは都市化率が約70%になった段階で発生する。2013年の中国の都市化率は53.73%であり、ほぼ世界平均レベルにある。都市化率が70%に達するまでさらに約15年を要することになり、この点から中国の1人当たり炭素排出は2030年頃にピークになると推定される。

 中国社会科学院−国家気象局気候変動経済学模擬連合実験室によると、中国はこうした情勢を直視し、新型都市化発展過程において、人口、社会、経済、空間構造、技術など様々な次元から、低炭素の理念を取り入れ、科学的な計画を進め、都市化が炭素排出に及ぼす影響を低減させて、中国の炭素排出ピークが速やかに到来するようにしなければならない。

 同レポートは中国の将来の経済成長において消費需要が重要なエンジンになると指摘する。中国の消費モデルと消費構造は転換しているところであり、そのことは中国の炭素排出に重要な影響を及ぼす。

 中国の消費セクターの炭素排出の現状、特徴、駆動要因や発展動向を研究した結果、中国の住民消費のピークは2035〜2040年に発生すると予想される。今後は住民消費を科学的、合理的に誘導することによって、高消費、高炭素排出の発展の道に陥り炭素排出ピークの到来を遅らせることがないよう回避に努めなければならない。

 中国の炭素排出ピークがいつ到来するのかについて、同レポートは、工業化、都市化、エネルギー、人口、消費需要の全てがそれぞれ炭素排出ピークの様々な側面に影響するとし、また、研究方法やデータの出所などによって炭素排出ピークをめぐる結論に違いが生じる可能性もあると指摘する。

 同レポートによると、総合的に言えば、2030年頃まで中国の経済と社会は引き続き安定的かつ比較的急速に発展し、省エネと排出削減に力を入れることも「新たな常態」になる。中国の排出ピークは2030年以降の一定期間内に発生し、2040年から徐々に低減し始める。劉昌義助理研究員は、中国は排出ピークをより早く実現するため、もっと大きな努力を払わなければならないと述べた。

 (中国新聞網 11月5日)