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中国
【石炭】

現代的石炭化学工業に今後4つの流れ (15/06/05)
2015/6/11
中国【石炭】

 中国は石炭が豊かであるが、石油に乏しいため、現代的石炭化学工業製品は一定の戦略的意義を備えている。長年の努力を経て、中国は石炭液化、コール・トゥ・オレフィン(CTO)、石炭由来のジメチルエーテル、エチレングリコールやSNG(代替天然ガス)といった現代的石炭化学工業の製品、技術並びに設備の開発と事業建設を進め、基本的に規模を備えるようになり、今後のさらなる発展のために基礎を固めた。

 石炭化学工業ほど様々な争点のある産業は他にはないが、その重要性は決して否定できるものではない。石炭は豊かであるが石油に乏しいという中国の資源賦存の特徴により、石炭化学工業は必然的に化学工業の重要な一環になる。同様に石炭液化は中国の「エネルギーセキュリティ戦略」の重要な構成要素であり、中国の石油ガス対外依存度を引き下げ、国のエネルギーセキュリティを確保する上でも重要な意義を有している。

 中化化肥有限公司の張金陽高級工程師によると、石炭化学工業の次の4つの発展動向は特に注目される。

 (1) 石炭化学工業は石油化学工業の重要な補完物

 現代的石炭化学工業と石油化学工業の関係は、簡単に言えば相互依存、相互補完にある。現代的石炭化学工業は石油化学工業製品の一部に取って替わることは出来るが、全てに取って替わることは不可能である。

 石油価格は現代的石炭化学工業の成敗を決する鍵になり、石油価格を基準にしない限り、石炭化学工業の収益を談じても意味はない。また、それゆえにこそ、石炭化学工業の規模を合理的に規制することがとりわけ重要になる。

 石油化学工業と比べると、石炭化学工業の優位は多くの場合、環境の犠牲と炭素排出を代償にしており、そのような代償がなければ、石炭化学工業の競争上の優位は「逆転」される。

 これまで石油化学工業で生産していた化学品は、2020年にはその3分の1が石炭化学工業に取って替わられる可能性が高い。つまり、石油化学工業との競争において「天下三分の計」のうちその一分を占めることが石炭化学工業の究極の目標になる。
 
 (2) 石炭化学産業チェーンの延伸は必然的選択
 
清華大学教授であり、中国工程院院士の金涌氏は「石炭化学工業の方向性を燃料ではなく原料にする」ことを提唱しており、これこそが石炭化学工業発展の必然の選択になる。そのため、化石燃料を石炭液化やSNGのような別の「人造化石燃料」に人為的に転換することに対し、奨励や支援に力を入れることは適当ではない。

 石炭液化はエネルギーを別のエネルギーに転化するものであり、エネルギー転換効率はもとより、炭素排出の基準超過は越え難い障害になり、広範囲の普及を進めるべきではない。炭素排出基準の超過が徹底的に解決されないまま、石炭化学工業を全面的に推進することは間違いなく「本末転倒」になる。

 そのためには完成稼動済みの実証事業に対して全面的な総括と評価を行うことが必要になり、評価結果に基づき改めて石炭液化やSNGの未来の方向性を決定するしかない。

 具体的に言えば、石炭液化、石炭由来アルコール燃料、CTO、SNG、石炭由来グリコール、石炭由来芳香族化合物の製品チェーンの中で、CTO、芳香族化合物やグリコールの発展を優先すべきであるが、全体的な規模は抑制しなければならない。

 産業チェーンの延伸と製品チェーンの延伸は石炭化学工業の永遠のテーマであるとともに、石炭化学工業の生産能力過剰を解消する有効な道筋でもあり、川下市場の支えがなければ、石炭化学工業は「源のない水、根のない樹木」になってしまう。

 (3) 石炭化学工業と石油化学工業の境界線が曖昧に
 
未来の石油化学工業と石炭化学工業の境界線はますます曖昧になり、両者が一体化する化学工業構造が徐々に形成されることになる。石油化学工業と石炭化学工業の融合は大きな流れになるだろう。

 石炭由来芳香族化合物と石炭由来グリコールの融合により、ポリエチレンテレフタレート(PET)の整った産業チェーンを実現することが石炭化学工業の新たな投資の焦点になる。

 (4) 石炭化学工業は今後さらに「大型化」「細分化」
 
 未来の石炭化学工業の動向は「大型化」と「細分化」の2つに側面に収斂することになる。「大型化」は規模と生産能力の大型化を指し、産業参入の基準になる。例えば、石炭由来芳香族化合物なら年産50万トン、天然ガスなら20億m3、石炭液化なら100万トンという具合である。「細分化」は市場と技術の細分化を指し、製品チェーンの延伸を通して在来石炭化学製品(メタノールなど)の付加価値を高めることでもある。また、中国の石炭化学工業には2大陣営が形成されることになる。一つは、神華、中煤、伊泰、河南能源のような有力な石炭企業であり、もう一つは、中国石油化工(SINOPEC)や延長石油のような有力な石油企業である。2大陣営のうち現在はるかに先を進んでいるのは前者であるが、将来的には拮抗するようにしなければならない。
 
 (中国煤炭資源網 6月5日)