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【国有石油企業改革】CNPC・シノペックの混合所有制改革へ民間資本の参加を推進も優良資産は対象外 (15/09/14)
2015/9/16
中国【石油・天然ガス】

 中国共産党中央と国務院は《国有企業改革の深化に関する指導意見》を通達した。これは、新たな時期において国有企業改革を指導する綱領的文書であり、国有企業発展の新たなページを開くものになる。以下、中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油化工集団(SINOPEC)の2大国有石油企業のそれぞれ異なる改革の道筋について整理することで、現状と将来の発展動向を示し、種々の道筋の利害得失について分析を加えることにする。こうした作業は《指導意見》通達後の国有企業改革にとって参考になるだろう。

 CNPCとSINOPECは混合所有制経済発展の中央実験企業にはなり得ないが、その独占的地位や膨大な資産のゆえ、昨年以来、混合所有制経済をめぐる2社の一挙手一投足は幅広い関心を惹起している。

 中国共産党中央と国務院は《国有企業改革の深化に関する指導意見》を通達し、石油、天然ガス、電力、鉄道、通信、資源開発等の領域で、産業政策に適合し産業の転換とグレードアップにとって有効な事業を非国有資本に対して開放することを明確にした。

 中石化販売公司は民間資本の導入で一歩先んじており、混合所有制改革において1,000億元超の資金がすでに投入されている。一方、CNPCは昨年、6大セクターに民間資本を導入して混合所有制改革を進めると宣言し、上流・中流・下流の各セクターの混合所有制改革の消息が絶えず流れている。しかし、CNPCに関しては、外部から最も注目されているのはパイプラインの混合所有制改革であるが、今のところほとんど動きはない。

 CNPC内部筋は《毎日経済新聞》の取材に対し、民間資本が高収益を求めても、成熟した良質の資源についてはCNPCが十分な開発資金を有し、民間資本を引き入れる動機がほとんどないこと、一方、CNPCが開発投資を求めるリスキーな資源については、民間資本の方も進んでリスクを引き受ける意欲が高くないことが混合所有制改革の最も難しい点であると指摘した。

 民間資本はパイプラインと販売セクターに好感

 昨年以降、CNPCとSINOPECは混合所有制改革実験に1,000億元超の資産を当てている。SINOPECは販売セクターに社会資金と民営資本を導入して、混合経営の販売公司を新設した。すでに25の投資家が1,070億元の現金で販売公司の29.99%の株式を買い入れた。一方、CNPCは6大セクターにおいて社会・民営資本との協力を推進することを打ち出している。

 アモイ大学エネルギー経済協同イノベーションセンターの林伯強主任によると、CNPCとSINOPECは国のスローガンに呼応するだけでなく、自らもまた改革を推進する必要性がある。「これまで石油と天然ガスの市場は急速に成長してきた。CNPCとSINOPECは単純に拡張すればそれで良かった。しかし、国内外の需要が減速しつつある今日、CNPCとSINOPECにとって効率が極めて重要になった。混合所有制改革は民間資本を導入し、取締役会など現代的な企業運営管理制度を確立するので、運営効率の向上にメリットがある」と林伯強氏は分析する。

 2014年2月19日、SINOPECは公告を発表し、石油製品販売業務に社会・民営資本を導入して混合経営を実現すると宣言した。そして、昨年4月1日、販売公司の業務再編が完了した。同年9月12日、中石化販売公司と25の国内外の投資家は《中国石化販売有限公司の増資に関する協議》に調印し、投資家は販売公司の株式の29.99%を合計1,070億9,400万元で買収した。

 CNPCが混合所有制改革に当てる資産の範囲はそれよりも広いものになる。早くも2014年の全人代・全国政治協商会議において、CNPC前董事長(会長)の周吉平は、CNPCが6大共同出資プラットフォームを構築したことを明らかにし、社会・民営資本との協力を推進すると表明した。6大分野とは、未開発の埋蔵量、非在来型石油ガス資源の探査開発、パイプライン、海外事業、金融セクター及び石油化学セクターである。また、昨年5月12日、CNPCは西気東輸管道分公司が管理する第1及び第2西気東輸パイプライン関連の資産及び負債、そしてパイプライン建設事業管理部が試算した第2西気東輸パイプライン関連の資産及び負債を充当して、全額出資子会社として東部管道公司を設けるとともに、外部資金を導入する計画を発表した。

 CNPCの優良資産の所有制をめぐる打開はマーケットの極めて高い関心を呼び起こした。2013年時点のデータによると、CNPCが運営する天然ガスパイプラインは全国の約80%を占め、一方、譲渡が計画されていた第1及び第2西気東輸パイプラインの総延長は1万2,398キロに上っていた。これはCNPCの天然ガスパイプラインの27%に当たる。専門家の見たところでは、CNPCがこの時差し出した第1西気東輸パイプラインと第2西気東輸パイプライン東部ブロックの資産は、長期安定的な収益の見地からすれば、社会資金にとって極めて大きな魅力であった。

 改革の利益と責任の綱引き

 民間資本は利益を追求するのが本質であり、そのため、CNPCとSINOPECの中央企業2社と地方資本がそれぞれ異なる利益を求めることで隔たりが生じる。

 昨年以来、パイプライン資産をめぐるCNPCの混合所有制改革は注目を集めているが、今に到るも全く動きはない。CNPCに近い関係者が記者に明らかにしたところでは、パイプラインの混合所有制改革をめぐっては、国有資産としてのパイプラインの価額をどのように評価するのか、外部資金の株式比率を最終的にどのように設定するのか、収益をどのように分配するのか、運営企業はパイプラインネットワークとどのように協調的に運営するのかなど、難問が山積している。

 「パイプラインへの投資は巨額だ。中露パイプラインは1本500億元になる。相当大きな資金力がない限り、参入は極めて難しい。現在、天然ガス需要は鈍化しており、パイプライン輸送のニーズも下がりつつある。パイプラインの将来の収益性を考えると、民間資本の参入の意欲も下がるに違いない」と前出のCNPC内部筋は指摘する。

 このことは上流部門の混合所有制改革の難題でもある。CNPCは利益が安定している鉱区を有しており、2014年の石油探査開発セクターの経営額は7,754億元であったが、利益は1,868億元に上り、CNPCにとって石油探査開発セクターは最大の収益源である。

 2015年3月、CNPCは新疆を探査開発分野の混合所有制改革実験区に確定し、自治区内の油田鉱区を差し出して株式の49%以下に地方資本を導入することにした。上流分野の混合所有制改革については今のところ地方資金との間で混合所有制改革は比較的順調に進んでいると、前出のCNPC内部筋は指摘する。「CNPCの上流と中流に対する地方の利益訴求は極めて高い。CNPCが発展しようとするなら地方政府の支持が必要だ。そのため、こうしたウィン・ウィンの協力は比較的順調に進む」。

 但し、民間資本がCNPCの「未開発埋蔵量」に参入することは極めて難しいと、前出のCNPC内部筋は見ている。「中流と下流は市場化の程度がやや高いので、改革がわりと容易だ。しかし、上流については地方と民間の資金には限界がある。しかも、残りの資源も決して質の高いものではない。そのため、上流の混合所有制改革の推進は全体的に難度の高いものになる。国有石油大手3社が上流分野で主導的地位を占めている構造を短期間で改めることは難しい」「中国の石油資源はこれまで探査を重ねてきた。CNPCとSINOPECの残りの資源で質の高いものは微々たるものだ。しかし、成熟した鉱区については、CNPCが外部資金を導入して投資を行なう必要は今のところ全くない。CNPCにはこのような鉱区を差し出す動機はなく、資金を導入する必要性が高いのは一定のリスクがある鉱区だ。しかし、参入しようとする資金は利益に与りたいとは思うが、責任は負いたくはない。そのため、上流の混合所有制改革は容易に行き詰ることになる」と前出のCNPC内部筋は指摘する。

 (毎日経済新聞 9月14日)