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中国
【石炭】

石炭産業の「脱生産能力」の鍵は石炭化学工業にあり (16/01/28)
2016/2/8
中国【石炭】

 中国の現代的石炭化学工業のブームは過去数年間冷めることなく過熱していたが、精密化、ハイエンド化に向けた発展の面では当初の期待をはるかに下回り、さらに2015年に入ると、環境保護部の環境アセスメントをめぐる制約や経済変調などの衝撃で、見る影もなくなった。

 石炭産業の「脱生産能力」は目下持続的に推進されている。《新京報》によると、国務院は3日間で2回にわたって会議を開き、石炭産業の「脱生産能力」を部署した。これより先、1月20日には李克強首相は2016年の過剰生産能力解消策について、鉄鋼と石炭から着手して打開を図ると表明していた。証券会社の研究レポートによると、最近の中央政府の石炭産業に対する態度から見て、政府はすでに老朽化生産能力を断固除去することを決意している。

 石炭と鉄鋼は過剰生産能力の典型であり、石炭の場合、2015年1〜10月の全国の一定規模以上の石炭企業の減益幅は62%に達し、赤字企業は80%以上に上っている。国有石炭企業の全体の赤字は223億元になる。昨年はまだ300億元の利益を上げていたのに対し、今や多重の困難が押し寄せている。

 一般に鉄鋼と石炭は経済変動に伴って大幅な調整を余儀なくされるのが常であり、欧米等の諸国も同じような危機に見舞われたこともあるが、中国の石炭産業が直面する極めて大きな困難は中国固有の要素も背景にある。

 伝統的産業である鉄鋼と石炭産業にも技術革新と産業のグレードアップが必要であるが、中国はこの面では極めて不十分である。

 生産した石炭を基礎化学品に転化するのか、それとも精密化・ハイエンド化の石炭化学工業製品に転化するのか、両者いずれが市場競争力が強いかは言うまでもない。当面の石炭産業の過剰生産能力解消や企業の閉鎖はネガティブな影響が極めて大きい。報道によると、中国は向こう3年間で4,300社の炭鉱(年間生産能力7億トン)を閉鎖し、100万人の人員の配置転換を進めることになる。中国政府はそのために45.7億ドル(約300億元)を支出する。このように大きい代償を払うのも止むを得ないところがあるが、石炭産業の長期的発展の点から言えば、ハイエンド化に向けた製品のグレードアップこそが王道になる。

 ここ数年、国有資本が石炭企業を経営支配する動きが目立つが、そのため、石炭産業全体に微妙な問題がもたらされている。炭鉱事故が頻発し安全管理に問題がある状況で政府が統廃合によって石炭企業の「小・散・乱」状況を改めるのは仕方ないが、その一方では、国有資本の過度の介入は企業システムの硬直化や市場的思考の欠如といった問題をもたらすことにもなる。そして、こうした問題のため、当面の「脱生産能力」は厳しさを増すことになる。

 注意しなければならないのは、当今の過剰生産能力解消においては、企業の合併再編が重要な緊急対応方式になっていることである。合併再編では、政府が必然的に「強引な仲人」の役割を演じることになり、これでは市場原理に背く。そのため、過剰生産能力の解消に当たっては不当な行政干渉を出来る限り減らすことで、石炭や鉄鋼といった生産能力過剰産業が市場化に回帰できるようにしなければならない。

 石炭や鉄鋼の「脱生産能力」は銀行(債務)、地方(財政)や企業(自身の利益)など様々なセクターの利害に直接関わる。そうしたセクターからの抵抗力を克服したとしても、人員の配置転換が財政と社会に一定の負担をもたらすことになり、政策はこうしたチャレンジに向き合う必要がある。長期的な着眼点からずれば、政府は生産能力過剰をもたらした根本原因を明確に認識し、緊急対応後には市場的な手法によって、優勝劣敗に基づく統廃合を進めることが求められる。

 (財経網 1月28日)