昨年は自家用車購入の比率が増えたため、乗用車市場が急成長した。2008年も中国の自動車市場の急成長は続き、自動車生産・販売台数は1,000万台の大台に迫ると見られる。 高油価は自動車販売に影響するか 2008年の自動車市場は極めて有望であるが、しかし、制約要因もある。まず、油価と石油供給問題がある。国際石油価格の高騰と一部地方で発生した極端な石油製品不足は消費者心理に影響する。また、渋滞が深刻化していることから、自動車市場の成長に制限措置を取る地方も出始めた。株式市場の影響も大きい。株式市場が下落すれば、自動車購入を見送る投資家も増える。さらに、一部の都市ではユーロ3排ガス基準を実施しており、車種によっては販売に影響が及ぶ。 一般に、油価の大幅上昇が自動車市場に与える影響は大きい。そのため、政府はガソリンと軽油の大胆な値上げには踏み切らない。前回の値上げでは、ガソリンが1リッター当たり0.4元、軽油が0.46元上がったに過ぎない。月に1,000〜1,200キロ走行し、100キロ当たりの燃費を10リッターとして計算すれば、ガソリン・軽油代は月々50元高くなるだけである。多くの消費者は高油価のために自動車購入を見合わせることはないとしている。 中国の自動車産業をめぐる一連の問題 中国の自動車産業は急成長を示しているが、しかし、先進国の自動車産業と比較すると大きな格差があり、問題は大きい。 第1に、中国の自動車部品産業のレベルは低く、規模が整っていない。昨年8月の段階で中国の自動車部品メーカーは6,000社に上ったが、その80%以上は売上高1億元以下である。集中度が低いため、産業全体が高コスト体質となり、収益が低く、無秩序な競争が横行している。 第2に、中国独自ブランドの自動車は数量が多いが、規模が限られている。乗用車の独自ブランドは約40になるが、主にローエンドの市場に集中し、利益率が低い。 第3に、盲目的な投資が進められた結果、自動車市場には構造的な生産能力過剰が発生している。完成車メーカーは130社に上るが、上位10社が総販売台数の84%以上を占め、残りの120社の販売台数は合計しても120万台にもならない。多くの完成車メーカーの年間販売台数は1万台足らずである。 第4に、自動車産業の長期的成長にはエネルギー問題が影を落とす。自動車保有台数が急増し石油価格が高騰する中、国のエネルギーセキュリティと自動車産業の持続可能な成長を確保するには、省エネ、排出削減、環境保護、安全に力を入れ、その種の技術の普及を図るとともに、新エネルギー車の開発を推進する必要があるが、この面で中国の自動車産業は遅れを取っている。 そのため、自動車部品産業のハイテク技術開発を政府が先頭に立って進め、政策を整備し、国内部品メーカーの共同を進めることが必要となる。 また、自動車メーカーの自主革新を推進するインセンティブも策定しなければならない。融資、課税、用地買収や設備買入等の面での優遇や、独自ブランドを対象とする差別政策や制限の撤廃などを進め、中国独自ブランドに対する国民の認知度と信頼を高めるのである。 市場面では、合理的な市場参入と撤退の仕組みを確立し、自動車産業の構造を高度化して、構造的な過剰問題の解消を図る。そのためには、技術面の参入基準を厳格化し、技術水準の低い事業や質の低い重複事業を防止しなければならない。 特に新エネルギー車については、課税の減免やインフラ建設等の面から新エネルギー車の生産と販売に対して誘導奨励政策を適用する。新エネルギー車も一定の台数がなければ、燃料供給企業も給油ステーションを建設しようとはせず、一方、一定数の給油ステーションがなければ、消費者は新エネルギー車を買おうとはしない。消費者が買おうとしなければ、新エネルギー車の生産台数は増えず、コストも下がらない。価格が高いと、消費者の購買能力が追いつかない。このような悪循環を避けるには、誘導奨励政策が必要になる。 (新華毎週財経分析 2月4日)
昨年は自家用車購入の比率が増えたため、乗用車市場が急成長した。2008年も中国の自動車市場の急成長は続き、自動車生産・販売台数は1,000万台の大台に迫ると見られる。
高油価は自動車販売に影響するか
2008年の自動車市場は極めて有望であるが、しかし、制約要因もある。まず、油価と石油供給問題がある。国際石油価格の高騰と一部地方で発生した極端な石油製品不足は消費者心理に影響する。また、渋滞が深刻化していることから、自動車市場の成長に制限措置を取る地方も出始めた。株式市場の影響も大きい。株式市場が下落すれば、自動車購入を見送る投資家も増える。さらに、一部の都市ではユーロ3排ガス基準を実施しており、車種によっては販売に影響が及ぶ。
一般に、油価の大幅上昇が自動車市場に与える影響は大きい。そのため、政府はガソリンと軽油の大胆な値上げには踏み切らない。前回の値上げでは、ガソリンが1リッター当たり0.4元、軽油が0.46元上がったに過ぎない。月に1,000〜1,200キロ走行し、100キロ当たりの燃費を10リッターとして計算すれば、ガソリン・軽油代は月々50元高くなるだけである。多くの消費者は高油価のために自動車購入を見合わせることはないとしている。
中国の自動車産業をめぐる一連の問題
中国の自動車産業は急成長を示しているが、しかし、先進国の自動車産業と比較すると大きな格差があり、問題は大きい。
第1に、中国の自動車部品産業のレベルは低く、規模が整っていない。昨年8月の段階で中国の自動車部品メーカーは6,000社に上ったが、その80%以上は売上高1億元以下である。集中度が低いため、産業全体が高コスト体質となり、収益が低く、無秩序な競争が横行している。
第2に、中国独自ブランドの自動車は数量が多いが、規模が限られている。乗用車の独自ブランドは約40になるが、主にローエンドの市場に集中し、利益率が低い。
第3に、盲目的な投資が進められた結果、自動車市場には構造的な生産能力過剰が発生している。完成車メーカーは130社に上るが、上位10社が総販売台数の84%以上を占め、残りの120社の販売台数は合計しても120万台にもならない。多くの完成車メーカーの年間販売台数は1万台足らずである。
第4に、自動車産業の長期的成長にはエネルギー問題が影を落とす。自動車保有台数が急増し石油価格が高騰する中、国のエネルギーセキュリティと自動車産業の持続可能な成長を確保するには、省エネ、排出削減、環境保護、安全に力を入れ、その種の技術の普及を図るとともに、新エネルギー車の開発を推進する必要があるが、この面で中国の自動車産業は遅れを取っている。
そのため、自動車部品産業のハイテク技術開発を政府が先頭に立って進め、政策を整備し、国内部品メーカーの共同を進めることが必要となる。
また、自動車メーカーの自主革新を推進するインセンティブも策定しなければならない。融資、課税、用地買収や設備買入等の面での優遇や、独自ブランドを対象とする差別政策や制限の撤廃などを進め、中国独自ブランドに対する国民の認知度と信頼を高めるのである。
市場面では、合理的な市場参入と撤退の仕組みを確立し、自動車産業の構造を高度化して、構造的な過剰問題の解消を図る。そのためには、技術面の参入基準を厳格化し、技術水準の低い事業や質の低い重複事業を防止しなければならない。
特に新エネルギー車については、課税の減免やインフラ建設等の面から新エネルギー車の生産と販売に対して誘導奨励政策を適用する。新エネルギー車も一定の台数がなければ、燃料供給企業も給油ステーションを建設しようとはせず、一方、一定数の給油ステーションがなければ、消費者は新エネルギー車を買おうとはしない。消費者が買おうとしなければ、新エネルギー車の生産台数は増えず、コストも下がらない。価格が高いと、消費者の購買能力が追いつかない。このような悪循環を避けるには、誘導奨励政策が必要になる。
(新華毎週財経分析 2月4日)