世界的な石炭供給のタイト化と、中国中南部の大雪災害がもたらした発電用石炭需要急増の中、ベトナムが今年1月、中国向け石炭輸出価格を約40%引き上げたため、中国の発電企業、特に広東と広西の発電企業は大きな衝撃を受けている。 ベトナム炭値上げの衝撃 2007年に広西自治区が輸入した石炭は1,404万トン、うちベトナムからの輸入は1,333万トンに上り、前年比40.7%増となった。また、広東省の2007年の石炭輸入量は合計1,456.1万トン、うちベトナムからの輸入が3分の1強を占めた。中国のベトナムからの石炭輸入のうち、広東と広西で9割余りを占める。 今年1月18日から、粤電集団はベトナムと1〜3月の石炭契約について交渉を開始したが、ベトナム側は価格最低ラインを40%以上引き上げていた。ベトナム国内の現物価格を上回る数字であり、そのため、交渉は暗礁に乗り上げた。 粤電集団はそれ以上の情報を明らかにしなかったが、広州港のデータによると、同港の1月期のベトナムからの石炭輸入は32.5万トンで、昨年12月の49.55万トンを大幅に下回った。これは、ベトナムの石炭価格高騰が原因である。 粤電集団は、石炭供給の逼迫が深刻化する中、他の石炭供給源の模索に奔走している。ベトナムの石炭に依存するリスクを避けるため、ベトナム以外の地にも目を向けており、すでにインドネシアとの間で5年間の石炭売買契約に調印した。 この数年、中国国内の石炭価格が急上昇し、また、炭鉱の閉鎖措置や輸送力の逼迫によって石炭供給が不足を来たしている。そのため、一部発電企業は海外の石炭供給源を開拓し、輸入炭の比率を高めているが、国内のみならず、海外の石炭価格も急騰する中、石炭価格と電力価格の連動が行われない限り、発電企業の収益はますます小さくなる。 ベトナムの戦略的石炭輸出削減措置 ベトナム工業省のエネルギー部局担当者によると、ベトナム石炭鉱産グループ(TKV)は今年、中国向け石炭輸出を19%削減するよう計画している。このため、2008年のベトナムの対中石炭輸出は1,300万トンに減少する。 石炭輸出削減措置の背景にはベトナムの石炭需要増がある。ベトナム工業省が2006年末に首相に報告した「2006〜2015年石炭開発戦略及び2025年の発展方向」と題するレポートは、国内需要、特に間もなく運転を開始する発電所の需要を賄うため、石炭輸出の制限を提唱し、石炭輸出量を2010年には1,200万トンに、2015年には500万トンに徐々に引き下げ、その後輸出を停止するよう提案している。 また、ベトナムが強気の値上げ攻勢に出ているのは、オーストラリアや南アフリカの石炭供給の中断やクリーン・コール技術の発展に起因する世界的な石炭需要の増加が背景にあるが、その他にも、中国向けについて言えば、中国側は多くの企業がベトナムのいくつかの石炭大手に対して各自単独で交渉に当たっていることにも原因がある。価格交渉のイニシアチブはベトナム側が握っているのである。 「ベトナム炭を安定的に確保するためには、金と石炭を交換するのではではなく、他の協力の道を見出すことが必要」と広西省崇左市発展改革委員会主任・労寧軍は言う。建設中の崇左火力発電所は中国側が出資し、ベトナム側は安定的に石炭を提供するという形で資本参加し、発電所完成後はベトナム北部地区に電力を供給する。「ベトナムの石炭火力発電は技術が遅れており、資金も乏しい。このような電力と石炭の交換によって、中越双方のエネルギー交換の構想が広がる」と労寧軍は指摘する。崇左火力発電所からベトナム北部に送電することによってベトナム北部の経済発展が推進される。それゆえ、ベトナム石炭総公社(TVN)は崇左側と石炭長期売買契約に調印したのである。 欽州税関の岑立廷所長は次のように指摘した。ベトナム炭に対する過度の依存は中国のエネルギーセキュリティに衝撃を与えた。今後は海外の供給源を模索する一方で、中国からの石炭輸出を減らして、国内の供給を拡大すべきである。そうずれば、ベトナムとの交渉に当たっても有利な立場に立つことができ、価格もリーズナブルになる。 (21世紀経済報道 2月19日)
世界的な石炭供給のタイト化と、中国中南部の大雪災害がもたらした発電用石炭需要急増の中、ベトナムが今年1月、中国向け石炭輸出価格を約40%引き上げたため、中国の発電企業、特に広東と広西の発電企業は大きな衝撃を受けている。
ベトナム炭値上げの衝撃
2007年に広西自治区が輸入した石炭は1,404万トン、うちベトナムからの輸入は1,333万トンに上り、前年比40.7%増となった。また、広東省の2007年の石炭輸入量は合計1,456.1万トン、うちベトナムからの輸入が3分の1強を占めた。中国のベトナムからの石炭輸入のうち、広東と広西で9割余りを占める。
今年1月18日から、粤電集団はベトナムと1〜3月の石炭契約について交渉を開始したが、ベトナム側は価格最低ラインを40%以上引き上げていた。ベトナム国内の現物価格を上回る数字であり、そのため、交渉は暗礁に乗り上げた。
粤電集団はそれ以上の情報を明らかにしなかったが、広州港のデータによると、同港の1月期のベトナムからの石炭輸入は32.5万トンで、昨年12月の49.55万トンを大幅に下回った。これは、ベトナムの石炭価格高騰が原因である。
粤電集団は、石炭供給の逼迫が深刻化する中、他の石炭供給源の模索に奔走している。ベトナムの石炭に依存するリスクを避けるため、ベトナム以外の地にも目を向けており、すでにインドネシアとの間で5年間の石炭売買契約に調印した。
この数年、中国国内の石炭価格が急上昇し、また、炭鉱の閉鎖措置や輸送力の逼迫によって石炭供給が不足を来たしている。そのため、一部発電企業は海外の石炭供給源を開拓し、輸入炭の比率を高めているが、国内のみならず、海外の石炭価格も急騰する中、石炭価格と電力価格の連動が行われない限り、発電企業の収益はますます小さくなる。
ベトナムの戦略的石炭輸出削減措置
ベトナム工業省のエネルギー部局担当者によると、ベトナム石炭鉱産グループ(TKV)は今年、中国向け石炭輸出を19%削減するよう計画している。このため、2008年のベトナムの対中石炭輸出は1,300万トンに減少する。
石炭輸出削減措置の背景にはベトナムの石炭需要増がある。ベトナム工業省が2006年末に首相に報告した「2006〜2015年石炭開発戦略及び2025年の発展方向」と題するレポートは、国内需要、特に間もなく運転を開始する発電所の需要を賄うため、石炭輸出の制限を提唱し、石炭輸出量を2010年には1,200万トンに、2015年には500万トンに徐々に引き下げ、その後輸出を停止するよう提案している。
また、ベトナムが強気の値上げ攻勢に出ているのは、オーストラリアや南アフリカの石炭供給の中断やクリーン・コール技術の発展に起因する世界的な石炭需要の増加が背景にあるが、その他にも、中国向けについて言えば、中国側は多くの企業がベトナムのいくつかの石炭大手に対して各自単独で交渉に当たっていることにも原因がある。価格交渉のイニシアチブはベトナム側が握っているのである。
「ベトナム炭を安定的に確保するためには、金と石炭を交換するのではではなく、他の協力の道を見出すことが必要」と広西省崇左市発展改革委員会主任・労寧軍は言う。建設中の崇左火力発電所は中国側が出資し、ベトナム側は安定的に石炭を提供するという形で資本参加し、発電所完成後はベトナム北部地区に電力を供給する。「ベトナムの石炭火力発電は技術が遅れており、資金も乏しい。このような電力と石炭の交換によって、中越双方のエネルギー交換の構想が広がる」と労寧軍は指摘する。崇左火力発電所からベトナム北部に送電することによってベトナム北部の経済発展が推進される。それゆえ、ベトナム石炭総公社(TVN)は崇左側と石炭長期売買契約に調印したのである。
欽州税関の岑立廷所長は次のように指摘した。ベトナム炭に対する過度の依存は中国のエネルギーセキュリティに衝撃を与えた。今後は海外の供給源を模索する一方で、中国からの石炭輸出を減らして、国内の供給を拡大すべきである。そうずれば、ベトナムとの交渉に当たっても有利な立場に立つことができ、価格もリーズナブルになる。
(21世紀経済報道 2月19日)