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中国
【石油・天然ガス】

中国が「石油と融資の交換」で大儲け 以前の3倍以上の原油を獲得 (16/05/27)
2016/5/27
中国【石油・天然ガス】

 中国との「石油と融資の交換」により、ベネズエラ等の諸国は以前計画していた3倍の原油を償還しなければならない。

 2007年以降、現在に到るまで、中国はベネズエラに500億ドルの融資を行った。

 ベネズエラは国内の経済危機が重なる中にありながらも、海外債務のデフォルトは未だ発生していない。ベネズエラはこれまで金の備蓄を放出することで外債の償還に充ててきた。

 但し、中国はベネズエラから金で返済を受ける必要はない。「石油と融資の交換」があるからである。「石油と融資の交換」の細目は未公表であるが、バークレーの見積もりによると、ベネズエラは油価が100ドルの時は中国へ23万BDの石油を供給するだけで良かったが、今年は80万BDの石油を供給しなければならない。

 石油によって中国へ債務を償還しなければならないもう一つの国にアンゴラがある。アフリカ最大の産油国であるアンゴラは2010年以降、中国との「石油と融資の交換」によって最大250億ドルの融資を手にし、最も新しい融資は昨年12月の50億ドルに上っている。そのため、アンゴラ国営石油公社は今年産出する石油の全てを中国との「石油と融資の交換」契約の償還に充てることになると、ロイターは報じている。

 ブルームバーグの4月の報道によると、中国が今年外国から調達する石油総量は3.7億トンに達し、今年の米国の予想輸入量3.63億トンを超える。

 過去10年余り、国際油価が高い水準にあった時期に、中国の石油企業は海外に大挙進出して油田資産の買収を進めたが、油価低迷の今日、相次いで赤字に陥り、操業停止に陥るケースもある。これに比べると、「石油と融資の交換」によって中国は安定的に海外から原油を獲得している。

 もっとも、「石油と融資の交換」は中国の専売特許ではない。

 ロイターの報道によると、ナイジェリア、イラク、クルド自治政府も西側の石油企業、例えば、エクソンモービル、シェル、ロシアのルクオイルや、石油貿易企業のVitol、Trafigura等から融資を受けて、石油によって償還することを約定している。

 例えば、イラクは今年、上掲の石油企業に230億ドルの債務を償還しなければならないが、自国の生産量では90億ドルがやっとであり、そのため、石油企業との間で融資計画の見直しを進めているところである。

 このように貧しい産油国は債務に飲み込まれる危険に直面しており、そのため、ベネズエラ等はOPEC会議において減産を強く求めている。一方、サウジアラビア等の豊かな産油国は債務に縛られず、引き続き生産量を維持するか場合によっては増産をしようとしている。その結果、産油国の間で貧富の差が急速に拡大している。

 もっとも、債権国にとっては、数百ドルは膨大な海外資産の一部に過ぎず、一時的に赤字を負担することは可能である。

 中国には最早債務国からより多くの石油を獲得する必要はないが、引き続き融資を利用してこれらの国の石油産業をしっかりと掌握することもできる。原油投資に詳しいKent Moors氏が先日発表した評論によると、OPEC加盟国で最も小国であるエクアドルは2013年以降、国営石油会社のキャッシュフローの維持を完全に中国に依存しており、石油を世界のどこに売るのも可能であるが、利益は中国への債務償還に充てなければならない。

 当然ながら、中国政府は民間投資家とは異なり、政治的な考慮から、こうした貧しい国をもっと優遇して、これら諸国の最も信頼できる友邦になることも出来る。

 Kent Moors氏によると、イランやイラクのような産油大国も中国からの融資を模索しており、中国にとってはグローバル市場を掌握する重要なチャンスになるかもしれない。

 (観察者網 5月27日)