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アジア
【エネルギー全般・政治経済】

中蒙共同のEgiin Gol水力発電所プロジェクトがロシアのため中止に (16/07/13)
2016/7/13
アジア【エネルギー全般・政治経済】

 モンゴルは中国から10億ドルの融資を獲得してスーパー水力発電所を建設する計画であったが、ロシアの水利権と衝突する可能性があり、中国はこのチャンスの放棄を余儀なくされた。

 モンゴル政府の文書によると、クレムリンは6月、モンゴル北部のEg河スーパー水力発電所建設計画がバイカル湖の水源に脅威を及ぼす可能性があると発表した。中国はすでに投資を停止しており、ロシアとの妥協実現に期待している。

 モンゴルは高さ103メートルのダムを建設して国内のエネルギー需要の30%を賄い、ロシアのエネルギーに対する依存を引き下げるとともに、石炭火力発電を減らすよう希望していた。モンゴルの人口は280万人であり、毎年ロシアからの電力購入に2,500万ドル以上費やしている。

 計画されている水力発電所は315MWに上り、エネルギーコストを引き下げることが出来る。水力発電所はEg河の水力を利用する。Eg河はSelenga河の主要支流の一つであり、Selenga河はバイカル湖に注いでいる。

 昨年11月、モンゴルのエルベグドルジ大統領は中国を訪問し、両国は全面的戦略パートナーシップの発展深化で共同声明に調印した。共同声明が掲げた重点プロジェクトにはEgiin Gol水力発電所も盛り込まれていた。

 しかしながら、先月、ロシアのプーチン大統領はエルベグドルジ大統領及び中国の習近平主席と会談した際、同水力発電所計画がイルクーツク地区の水供給に「深刻なリスク」をもたらすと述べていた。

 UNESCOもロシアを支持している。UNESCOは2014年のレポートの中で、同ダムは絶滅に瀕している魚類や鳥類に影響を及ぼすと指摘していた。

 「この計画はバイカル地区にネガティブな影響を及ぼす」とクレムリンのDmitry Peskov報道官は指摘し、「引き続きモンゴル政府に対しこの点を強調していく。二国間交渉を通して互いに受け入れることが出来る解決案を見出せると思う」と述べた。

 一方、水力発電所プロジェクトの責任者であるOdkhuu Durzee氏は、ロシアの環境に対する懸念には根拠がないと述べ、ロシアとUNESCOの立場は政治的な要素によるものであるとした。モンゴル外務省は、モンゴルの内政問題であり、ロシアは干渉できないと表明している。

 Odkhuu Durzee氏によると、中国輸出入銀行からの融資が実現できない状況に直面しており、日本、韓国やノルウェー等からの資金調達を模索している。

 「ロシアはエネルギーの面でモンゴルをコントロールするつもりだ」とOdkhuu Durzee氏は述べ、「これは政治問題だ。操縦桿はロシアの手にある。モンゴルが言うことを聞かなければ、いついかなる時でも、特に冬場においてロシアが電力を断つ恐れに直面せざるを得ない」とした。

 Odkhuu Durzee氏によると、石炭火力発電は安定した電力を供給しているが、やはり水力発電の強力なサポートも必要であり、特にウランバートルは近年家屋が増えており、発電能力はすでにタイトになっている。「多くの人々は火力発電所をさらに建設すれば問題は解決できると考えている。しかしながら、石炭火力発電が水力発電に取って代わることは出来ない。なぜなら、モンゴルには電力需要を調節することが依然必要だからだ」とOdkhuu Durzee氏は言う。

 Odkhuu Durzee氏は、中国とロシアが接近すればするほど、モンゴルは交渉において不利な立場に追いやられる可能性があると考えている。6月の会議では、ロシアと中国は《中露善隣友好協力条約》調印15周年を祝賀していたのである。

 (新浪財経 6月13日)