最近の報道によると、中国は南シナ海の環礁に20基の洋上原子力発電所を建造する計画である。南シナ海の実効支配を強化し、ユーラシア大陸と北極間の北方海上航路の開通に全力を挙げる。中国が仲裁裁判所の判決を受けて南シナ海問題をめぐる政策的立場を厳正に表明している時に当たり、この報道は人心を奮い立たせるが、詳細や内容の真偽は不明である。
中国の原子力発電業界と船舶業界は提携して洋上核動力プラットフォームの建造を進めているところである。中国船舶重工も確かに20基近くの洋上核動力プラットフォームの建造計画を有しているが、中船重工第719研究所の朱涵超副総工程師が表明していたところでは、これら20基近くの洋上核動力プラットフォームは「渤海油田のエネルギー需要を賄う」ことが目的であり、メディアのセンセーショナルな見出しにあるような「中国が南シナ海の環礁に20基の洋上原子力発電所を建造する」というものではない。
洋上浮体式原子力発電所の技術原理は決して神秘的なものではなく、もともと陸上に建造する原子力発電所を船舶基盤に設置するに過ぎない。但し、陸地と洋上は条件の差異が極めて大きく、洋上原子力発電所の設計、建造や運転にはいずれも特殊な技術上の難題が付きまとう。小型で移動可能な洋上原子力発電所は陸上原子力発電所の縮小版を船舶に設置するものであり、僻遠の島嶼のエネルギー供給を可能にするだけでなく、遠洋で作業する海上石油・天然ガスリグに電力、熱力や淡水を提供することが出来る。電力の必要はある時には発電所を曳航して来、不要になれば再び曳航して行くことが出来る。洋上核動力プラットフォームは中国の独創技術ではなく、実際には1950年代から米国、ソ連、日本、ドイツ等が成熟した原子力艦船技術を応用して民用原子力船舶の研究を展開し、多数の核動力商船や砕氷船を建造した。世界初の洋上浮体式原子力発電所になるロシアのAkademik Lomonosov号が先日進水試験段階に進み、2017年10月に正式稼動する予定である。中国も核動力プラットフォームの研究開発に着手して50年近くになり、すでに原子力艦船を保有しているが、民用原子力船舶を建造した例は未だない。
中船重工は《国家発展改革委員会弁公庁の洋上核動力プラットフォーム国家エネルギー科技重大実証事業の設置に関する回答》に従い、洋上核動力実証プラットフォームを渤船重工で建造することにした。2015年12月、中船重工と中船重工第719研究所による「国家海洋核動力プラットフォーム実証事業」のプレスタディ展開が国家発展改革委員会から承認された。
市場のニーズについては、中船重工資産経営管理有限公司の呉忠総経理(社長)が「洋上石油リグの需要だけでも、将来の市場規模は1,000億元を超える。我々の試算によると、渤海湾の核動力装備の生産高は毎年500億元になる。南シナ海もこの規模を下回ることはあり得ない」と表明していた。
朱涵超氏の説明によると、中船重工の洋上核動力プラットフォーム実証事業は投資額約30億元に上り、完成すると、40年間の売電収入は約226億元になり、渤海油田のエネルギー需要を賄うことが出来る。中船重工は20基近くの洋上核動力プラットフォームの量産を進めることになり、量産が実現すると、1基当たりの投資額は約20億元になる。核動力装備の年間生産高は100億元以上になり、関連産業の発展にも波及する。
「渤海油田の現在の設備容量は600MWであるが、2020年には1,000MWに増加すると予想される。現在の石油発電設備を洋上原子力発電設備に更新するには、今後数年間で20基の洋上核動力プラットフォームが必要になる」と朱涵超氏は分析していた。「南シナ海の石油・天然ガス資源は豊かだ。南シナ海油田の開発が強化されると、関連するエネルギー需要も極めて大きなものになる。我々は洋上核動力プラットフォーム実証プロジェクトを基礎に、南シナ海の海洋環境を満たす核動力プラットフォームを開発して、南シナ海の石油・天然ガス開発のためのエネルギー供給を保障する」と朱涵超氏は述べた。
中船重工の胡問鳴董事長(会長)は2015年4月に第719研究所を視察した際、海洋核動力プラットフォーム実証事業の2018年の完成を明確に提唱した。そのため、第719研究所が軍需品開発制度に準じて、実証事業の開発サイクルについて4年3ヵ月のタイムスケジュールを策定した。このタイムスケジュールに基づき、2018年末には調整試験を完了し、2019年には洋上での試験運転と検収・引渡し段階に進む。
胡問鳴董事長によると、遠洋リグが生産段階に入ると現在の軽油燃料など1kWhにつき6元のコストになるが、原子力を利用すると2元になる。海洋核動力の需要は極めて大きく、民用分野では海上油ガス田の採掘や島嶼開発の電力・熱力供給、海水淡水化に安定した電力を供給することが出来る。また、砕氷船の推進動力を提供することもでき、軍事面でも用途は極めて多い。中船重工は目下中国の複数の原子力企業と幅広い協力を展開している。
(澎湃新聞 7月15日)
最近の報道によると、中国は南シナ海の環礁に20基の洋上原子力発電所を建造する計画である。南シナ海の実効支配を強化し、ユーラシア大陸と北極間の北方海上航路の開通に全力を挙げる。中国が仲裁裁判所の判決を受けて南シナ海問題をめぐる政策的立場を厳正に表明している時に当たり、この報道は人心を奮い立たせるが、詳細や内容の真偽は不明である。
中国の原子力発電業界と船舶業界は提携して洋上核動力プラットフォームの建造を進めているところである。中国船舶重工も確かに20基近くの洋上核動力プラットフォームの建造計画を有しているが、中船重工第719研究所の朱涵超副総工程師が表明していたところでは、これら20基近くの洋上核動力プラットフォームは「渤海油田のエネルギー需要を賄う」ことが目的であり、メディアのセンセーショナルな見出しにあるような「中国が南シナ海の環礁に20基の洋上原子力発電所を建造する」というものではない。
洋上浮体式原子力発電所の技術原理は決して神秘的なものではなく、もともと陸上に建造する原子力発電所を船舶基盤に設置するに過ぎない。但し、陸地と洋上は条件の差異が極めて大きく、洋上原子力発電所の設計、建造や運転にはいずれも特殊な技術上の難題が付きまとう。小型で移動可能な洋上原子力発電所は陸上原子力発電所の縮小版を船舶に設置するものであり、僻遠の島嶼のエネルギー供給を可能にするだけでなく、遠洋で作業する海上石油・天然ガスリグに電力、熱力や淡水を提供することが出来る。電力の必要はある時には発電所を曳航して来、不要になれば再び曳航して行くことが出来る。洋上核動力プラットフォームは中国の独創技術ではなく、実際には1950年代から米国、ソ連、日本、ドイツ等が成熟した原子力艦船技術を応用して民用原子力船舶の研究を展開し、多数の核動力商船や砕氷船を建造した。世界初の洋上浮体式原子力発電所になるロシアのAkademik Lomonosov号が先日進水試験段階に進み、2017年10月に正式稼動する予定である。中国も核動力プラットフォームの研究開発に着手して50年近くになり、すでに原子力艦船を保有しているが、民用原子力船舶を建造した例は未だない。
中船重工は《国家発展改革委員会弁公庁の洋上核動力プラットフォーム国家エネルギー科技重大実証事業の設置に関する回答》に従い、洋上核動力実証プラットフォームを渤船重工で建造することにした。2015年12月、中船重工と中船重工第719研究所による「国家海洋核動力プラットフォーム実証事業」のプレスタディ展開が国家発展改革委員会から承認された。
市場のニーズについては、中船重工資産経営管理有限公司の呉忠総経理(社長)が「洋上石油リグの需要だけでも、将来の市場規模は1,000億元を超える。我々の試算によると、渤海湾の核動力装備の生産高は毎年500億元になる。南シナ海もこの規模を下回ることはあり得ない」と表明していた。
朱涵超氏の説明によると、中船重工の洋上核動力プラットフォーム実証事業は投資額約30億元に上り、完成すると、40年間の売電収入は約226億元になり、渤海油田のエネルギー需要を賄うことが出来る。中船重工は20基近くの洋上核動力プラットフォームの量産を進めることになり、量産が実現すると、1基当たりの投資額は約20億元になる。核動力装備の年間生産高は100億元以上になり、関連産業の発展にも波及する。
「渤海油田の現在の設備容量は600MWであるが、2020年には1,000MWに増加すると予想される。現在の石油発電設備を洋上原子力発電設備に更新するには、今後数年間で20基の洋上核動力プラットフォームが必要になる」と朱涵超氏は分析していた。「南シナ海の石油・天然ガス資源は豊かだ。南シナ海油田の開発が強化されると、関連するエネルギー需要も極めて大きなものになる。我々は洋上核動力プラットフォーム実証プロジェクトを基礎に、南シナ海の海洋環境を満たす核動力プラットフォームを開発して、南シナ海の石油・天然ガス開発のためのエネルギー供給を保障する」と朱涵超氏は述べた。
中船重工の胡問鳴董事長(会長)は2015年4月に第719研究所を視察した際、海洋核動力プラットフォーム実証事業の2018年の完成を明確に提唱した。そのため、第719研究所が軍需品開発制度に準じて、実証事業の開発サイクルについて4年3ヵ月のタイムスケジュールを策定した。このタイムスケジュールに基づき、2018年末には調整試験を完了し、2019年には洋上での試験運転と検収・引渡し段階に進む。
胡問鳴董事長によると、遠洋リグが生産段階に入ると現在の軽油燃料など1kWhにつき6元のコストになるが、原子力を利用すると2元になる。海洋核動力の需要は極めて大きく、民用分野では海上油ガス田の採掘や島嶼開発の電力・熱力供給、海水淡水化に安定した電力を供給することが出来る。また、砕氷船の推進動力を提供することもでき、軍事面でも用途は極めて多い。中船重工は目下中国の複数の原子力企業と幅広い協力を展開している。
(澎湃新聞 7月15日)