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【石油・天然ガス】

パイプラインの新政策が頻発 石油・天然ガス改革の地ならし進む (16/09/12)
2016/9/12
中国【石油・天然ガス】

 国家能源局は9月7日、ウェブサイトで《石油・天然ガスパイプライン網施設開放関連情報の適正な公開に関する通達》を発表し、「中国石油御三家」を初め関連企業に対し、石油・天然ガスパイプライン網関連情報を公開するよう求めた。関係省庁は8月16日以来、石油・天然ガスパイプライン輸送に関する重要文書を連発しており、今回の通達が4件目になる。

 業界は「石油・天然ガスパイプライン網の独立」は石油・天然ガス体制改革の焦点になるとともに、抵抗と論争も大きいプロセスになると見ている。2年前にはすでに石油・天然ガス体制改革案が着手されていたが、種々の抵抗に遭い、その公布は遅れている。

 中国の石油・天然ガスパイプライン網は一貫して中国石油天然ガス(CNPC)、中国石油化工(SINOPEC)、中国海洋石油(CNOOC)が独占し、価格決定の仕組みは不透明であり、パイプラインタリフの高止まりの原因の一つになっていた。

 天然ガスパイプライン網については、CNPCのパイプライン網の総延長は50,836キロに上り、全国の基幹パイプライン網の約78%を占める。一方、シノペックの建設中及び運営中の天然ガスパイプラインは総延長約8,600キロ、CNOOCは3,145キロである。

 「ガス源とパイプライン業務の関連取引の『体制的な臍の緒』を根本的に断ち切って、真の意味でパイプライン網の第三者への公平な開放を実現するためには、販売業務とパイプライン輸送業務を分離するしかない。そうすれば、パイプラインコストに対する有効な監督管理や上流と下流価格の市場化の条件も整う」と中国国際経済交流センターの景春梅研究員は指摘する。

 景春梅研究員のようにパイプライン網の独立を支持する専門家は少なくないが、業界には異なる意見も多い。「パイプラインの全てを新たに設立する公司に移す必要はない。そんなことをすれば、金もかかり、効率も低くなる。石油・天然ガスパイプラインは電力網とは異なる。電力網は誰もが利用するが、天然ガスはシティゲートまで、石油は製油所までであり、企業は自身のパイプラインを使用し、点対点の輸送になって、社会が使うことはない。中間に独立運営業者が加わると、費用が高くなり、両サイドの連携もうまくいかなくなる。供給も間に合わなくなり、生産量に『在庫懸念』が生じる。パイプラインの独立といった類の改革は、理論的には実行可能でも、実践面で実行可能とは限らない」と元中国石油化工集団董事長(会長)の傅成玉氏は指摘し、パイプライン独立には楽観できないとの見方を示した。

 最近、業界関係者は石油・天然ガス体制改革方案が年末に公布される可能性を明らかにした。推測によると、現段階で石油・天然ガスパイプライン網改革の方向性はすでに確定しており、それをどのように進めるかが今後の課題になる。専門家によると、関係政府部門が最近相次いで公布している政策からもそのことは窺える。

 8月16日、国家発展改革委員会は《天然ガスパイプライン輸送価格管理弁法(試行)》と《天然ガスパイプライン輸送価格決定のコスト監査弁法(試行)》の意見公募版を公示して、公開・公平な新たなパイプライン輸送価格決定方法の確立を提唱するとともに、コスト監査制度を打ち出した。

 8月31日、発展改革委員会はウェブサイトで《地方天然ガス輸配送価格監督管理の強化と企業のガス利用コスト引き下げに関する通達》を発した。これは地方のガス輸配送プロセスの価格形成の仕組みを規範化し、地方政府が高過ぎる価格や恣意的な費用徴収を厳重に規制するよう督促することが趣旨である。

 そして、国家能源局は今回の通達において、「石油御三家」等の関係企業に対し、パイプライン輸送施設の基本情報、石油・天然ガスパイプライン網施設へのアクセスの基準、輸送(貯蔵・ガス化等)サービスを提供する場合の計量と価格フォーミュラ、上流と下流ユーザーの石油・天然ガスパイプライン網施設アクセス申請条件などパイプライン関連情報を全面的に公開するよう明確に要求した。

 上掲の4件の文書は相互に連携して、長距離パイプラインから地方パイプライン、「石油御三家」から地方の都市ガス公司に到るまで、パイプライン網の独占や情報の不透明など石油・天然ガス体制の痼疾を直接の対象として、パイプライン網の公平な開放に向けて障害を除去することが目的になる。こうして見てくると、間もなく公布される石油・天然ガス改革方案において、石油・天然ガスパイプライン網の独立が盛り込まれる可能性は高い。但し、業界関係者の指摘によると、文書の表現を見る限り、パイプライン網の独立は当面は分離しない方向で進められ、先に財務の独立採算を実現することで改革に対する抵抗を減らすことになるだろう。

 (経済参考 9月12日)